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奴隷オークション③
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部屋に入ると早速ハクレイが物申してくる。
「お嬢様、ハクレイは奴隷です。好きなようにあつかっていただい構いません」
「それはダメです。ハクレイは私の仲間になって、一緒に冒険してほしいから奴隷はもう終わり」
「しかし、奴隷印の契約を簡単に消すことなどできません。それに冒険といいましてもハクレイは冒険者の経験は全然なくてですね」
「私もちゃんとした冒険なんてまだしたことないかな。だから初心者同士頑張ろうよ」
「あと、まだお話できてないことがありまして実は――」
「ヴァンパイアじゃないってこでしょ」
「お気づきでしたか……」
ちょっと驚いた顔をしている。それもそのはず、人族の女の子は高くても金貨100枚程、それなのに300枚の金貨を払ったのだ。
「うん知ってた。でも落札しちゃった」
「知っていたのに、どうしてですか?」
「どうしてだろ。なんか入札しちゃったんだよね。神秘的な白さにやられちゃったかな」
理由が分からなかったので、はにかんでしまった。
「この肌は色は生まれつきだったみたいで、物心ついた時には教会にいました。親に捨てられたのだと思います。教会も早く手放したかったのか見世物小屋に売り払い、そこも潰れてしまい借金の肩代わりに売られ奴隷となって今に至ると言う感じです」
「じゃ、これからは冒険者になろうよ」
「……本当にハクレイでよろしいのですか?」
「冒険者は危険だけど。私は一緒いてほしいな」
「分かりました。拾われたこの命、お嬢様の盾ぐらいにはなってみせます」
「いいよ、いいよ。そんなに重く考えなくても。でもね、ちょっと困ったことがあったり、ちょっと寂しかったりしたときは助けてほしいかな」
「かしこまりました。お望みのままに」
ハクレイは仲間になってくれた。
冒険者になることに不安もあるだろうけど、まぁそこは鍛えて何とかするしかない。
救いとしてはスキル探究Bを既に取得していることだ。
探究があれば他のスキルや魔法を覚えるまでの時間を短縮することができる。簡単な物からどんどん覚えて言って貰おう。レベル上げならゼンちゃん師匠にお願いして鍛えてもらえそうだしね。
前衛は無理でも、背中を任せられるような存在になってほしいなと思っていた。
絶対必要かといわれればそうではないのだけど、心の支えってやつかもしれない。
「ハクレイの手、ちょっと見せて」
左手の甲には奴隷印が焼鏝によって刻まれている。一種の魔法陣だ。
そこに私の手を挟むように重ねる。
「今から見ることは絶対に誰かに喋っちゃダメだよ」
白い光が手を包む。
【回復魔法:フルケア】
「手がとてもあたたかいです」
「もうちょっとだからね。 ……はい、おしまい」
ハクレイの手の甲は綺麗な白い手になっていた。
「え? あれ? 消えてる。いったいどうやって?」
「これで、奴隷じゃはなくなったよ。冒険者ハクレイの誕生だね」
「ど、どうしてこんなことをしたのですか!? 奴隷印がなくなったら逃げるかもしれませんよ」
「ハクレイは逃げちゃうの?」
「……いいえ、ハクレイは一生お嬢様のお傍にいます」
「ありがと。それと、もう奴隷じゃないし、仲間なんだからお嬢様禁止。冒険者は仲間同士呼び捨てで呼ぶのが普通だよ」
「そんな、いきなり無理ですよ」
「えーじゃあ、一旦奴隷印を元に戻して、呼び捨てで呼ぶよう命令して、ってやる?」
「そこまでお手を煩わせる訳にはいきません。わかりました、頑張って呼び捨てにします」
「頑張ってね、ハクレイ」
「頑張ります……ケーナ……」
気恥ずかしいのか、耳がピンク色になる。
肌が白いせいで余計に分かりやすい。
これから信頼を深めていくのだが、奴隷からの解放したアドバンテージがあるので時間はかからないと思う。
「ハクレイは、何か得意な武器とか魔法とかある?」
「いいえ、これといった特技は持っていません」
知ってはいたが一応訊いてみた。
「最初はレベル上げからかな」
「はい。頑張ります」
その日の夜は、私のことを教えた。
転生しましたとは言えないので、ちょいちょいフェイクを挟みながら違和感のないぐらいに。
最終的には、どこかの貴族の妾の子供で捨てられた子。と言うことになった。
「いっじょに、頑張りましょうねえええ」
捨てられた同士共感してくれたのか、ハクレイの目は涙が溢れていた。
風呂に入りたかったが、王宮とは違いここの安い宿にはあるわけがない。生活魔法のクリーンで身を綺麗にし服などもついでに仕上げておいた。
「カスケードについたらまずは冒険者登録して、装備とか服とか買って、ミーニャに会いに行って、ハクレイ紹介して、あれもして――」
「忙しくなりそうですね」
「そうだよ。あ、あとでゼンちゃんも紹介するね」
「ゼンちゃんさん?」
「スライムだよ」
「テイマーだったのですか?」
「残念ながら完全にテイムできなかったんだ。だからビジネスパートナー的な。あはは」
「びじ、ねす?」
「助け合う友人みたいなものだよ」
「複雑な関係なのですね」
「覚悟しておきなよ」
「まずはスライムと特訓ですね。楽しみにしておきます」
弱いモンスターだと思っているのかもしれないが、どれくらい強いかはあえて伝えなかった。
翌朝、カスケード方面に向かう馬車を探そうとしたのだが、昨日の夜は邪魔なぐらいあった馬車が一台もなかった。
宿にもどって、亭主に話をすると、ここにくる奴隷商人のほどんどが、犯罪を犯している事を知っててここに来ている。違法奴隷を取り締まりる役人が、いつ来るか分からないから日の出とともに帰っていくそうだ。
「安心しな、どうせ夜になれば、またごちゃごちゃやってくるから」
「夜ですかぁ」
時間が勿体ない。
ここで足踏みはしたくないので、あまり使いたくはなかったが空間転移をすることにしたのだった。
「お嬢様、ハクレイは奴隷です。好きなようにあつかっていただい構いません」
「それはダメです。ハクレイは私の仲間になって、一緒に冒険してほしいから奴隷はもう終わり」
「しかし、奴隷印の契約を簡単に消すことなどできません。それに冒険といいましてもハクレイは冒険者の経験は全然なくてですね」
「私もちゃんとした冒険なんてまだしたことないかな。だから初心者同士頑張ろうよ」
「あと、まだお話できてないことがありまして実は――」
「ヴァンパイアじゃないってこでしょ」
「お気づきでしたか……」
ちょっと驚いた顔をしている。それもそのはず、人族の女の子は高くても金貨100枚程、それなのに300枚の金貨を払ったのだ。
「うん知ってた。でも落札しちゃった」
「知っていたのに、どうしてですか?」
「どうしてだろ。なんか入札しちゃったんだよね。神秘的な白さにやられちゃったかな」
理由が分からなかったので、はにかんでしまった。
「この肌は色は生まれつきだったみたいで、物心ついた時には教会にいました。親に捨てられたのだと思います。教会も早く手放したかったのか見世物小屋に売り払い、そこも潰れてしまい借金の肩代わりに売られ奴隷となって今に至ると言う感じです」
「じゃ、これからは冒険者になろうよ」
「……本当にハクレイでよろしいのですか?」
「冒険者は危険だけど。私は一緒いてほしいな」
「分かりました。拾われたこの命、お嬢様の盾ぐらいにはなってみせます」
「いいよ、いいよ。そんなに重く考えなくても。でもね、ちょっと困ったことがあったり、ちょっと寂しかったりしたときは助けてほしいかな」
「かしこまりました。お望みのままに」
ハクレイは仲間になってくれた。
冒険者になることに不安もあるだろうけど、まぁそこは鍛えて何とかするしかない。
救いとしてはスキル探究Bを既に取得していることだ。
探究があれば他のスキルや魔法を覚えるまでの時間を短縮することができる。簡単な物からどんどん覚えて言って貰おう。レベル上げならゼンちゃん師匠にお願いして鍛えてもらえそうだしね。
前衛は無理でも、背中を任せられるような存在になってほしいなと思っていた。
絶対必要かといわれればそうではないのだけど、心の支えってやつかもしれない。
「ハクレイの手、ちょっと見せて」
左手の甲には奴隷印が焼鏝によって刻まれている。一種の魔法陣だ。
そこに私の手を挟むように重ねる。
「今から見ることは絶対に誰かに喋っちゃダメだよ」
白い光が手を包む。
【回復魔法:フルケア】
「手がとてもあたたかいです」
「もうちょっとだからね。 ……はい、おしまい」
ハクレイの手の甲は綺麗な白い手になっていた。
「え? あれ? 消えてる。いったいどうやって?」
「これで、奴隷じゃはなくなったよ。冒険者ハクレイの誕生だね」
「ど、どうしてこんなことをしたのですか!? 奴隷印がなくなったら逃げるかもしれませんよ」
「ハクレイは逃げちゃうの?」
「……いいえ、ハクレイは一生お嬢様のお傍にいます」
「ありがと。それと、もう奴隷じゃないし、仲間なんだからお嬢様禁止。冒険者は仲間同士呼び捨てで呼ぶのが普通だよ」
「そんな、いきなり無理ですよ」
「えーじゃあ、一旦奴隷印を元に戻して、呼び捨てで呼ぶよう命令して、ってやる?」
「そこまでお手を煩わせる訳にはいきません。わかりました、頑張って呼び捨てにします」
「頑張ってね、ハクレイ」
「頑張ります……ケーナ……」
気恥ずかしいのか、耳がピンク色になる。
肌が白いせいで余計に分かりやすい。
これから信頼を深めていくのだが、奴隷からの解放したアドバンテージがあるので時間はかからないと思う。
「ハクレイは、何か得意な武器とか魔法とかある?」
「いいえ、これといった特技は持っていません」
知ってはいたが一応訊いてみた。
「最初はレベル上げからかな」
「はい。頑張ります」
その日の夜は、私のことを教えた。
転生しましたとは言えないので、ちょいちょいフェイクを挟みながら違和感のないぐらいに。
最終的には、どこかの貴族の妾の子供で捨てられた子。と言うことになった。
「いっじょに、頑張りましょうねえええ」
捨てられた同士共感してくれたのか、ハクレイの目は涙が溢れていた。
風呂に入りたかったが、王宮とは違いここの安い宿にはあるわけがない。生活魔法のクリーンで身を綺麗にし服などもついでに仕上げておいた。
「カスケードについたらまずは冒険者登録して、装備とか服とか買って、ミーニャに会いに行って、ハクレイ紹介して、あれもして――」
「忙しくなりそうですね」
「そうだよ。あ、あとでゼンちゃんも紹介するね」
「ゼンちゃんさん?」
「スライムだよ」
「テイマーだったのですか?」
「残念ながら完全にテイムできなかったんだ。だからビジネスパートナー的な。あはは」
「びじ、ねす?」
「助け合う友人みたいなものだよ」
「複雑な関係なのですね」
「覚悟しておきなよ」
「まずはスライムと特訓ですね。楽しみにしておきます」
弱いモンスターだと思っているのかもしれないが、どれくらい強いかはあえて伝えなかった。
翌朝、カスケード方面に向かう馬車を探そうとしたのだが、昨日の夜は邪魔なぐらいあった馬車が一台もなかった。
宿にもどって、亭主に話をすると、ここにくる奴隷商人のほどんどが、犯罪を犯している事を知っててここに来ている。違法奴隷を取り締まりる役人が、いつ来るか分からないから日の出とともに帰っていくそうだ。
「安心しな、どうせ夜になれば、またごちゃごちゃやってくるから」
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