たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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我儘だっていいじゃない②

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「シリル様は11年ほど前から行方不明でございます」

「え、それってテッテを産んでいなくなったってこと?」

「そうです。テッテ様を出産し1週間後に姿を消されております。国内はもちろん、国外にまで捜索要請をだして各地を隅々まで探しました。しかしそれでも手がかり1つ掴めておりません」

 テッテが私に懐く理由がここにあったかもしれない。気負いなどせずに喋れる相手なんて魔王の娘にいるわけない。

 特異なスキル、特別な環境にいる者程普通は難しい。

「お母様は、きっとわたしのことがお嫌いなのですわ」

「そんなわけないよ」

「じゃ、なんで……」

 母親への思いはまだ諦めていない。冷静を装い感情を隠している。

「なら確かめようよ」

「どうやってですの?」

「この世界は探したのでしょ。だったらこの世界以外だよ」

 と空間収納に入ってた食パンを1枚取り出す。

「ただのパンですわね。それと何が関係ありますの」

「どこから取り出したかはわかる?」

「アイテムボックスですわ」

「正解、だけど私のはスキルレベルの高いの空間収納です」

「入る容量が大きいのですのよね」

「ではさらに問題、この食パンはいつ収納したかわかる?」

「まだ柔らかそうで、カビも全く見えませんし、1日前といったところだと思いますわ」

「残念、この食パンはテッテとカジノで初めて会うより前か空間収納に入ってます」

 テッテと、ヨシエの目が丸くなるのがよくわかる。

「そんな、そんなことはあり得ませんわ。アイテムボックス内でも時間が経過するはずですのよ」

「だから、私はスキルレベルが高いんだよ」

「だとしても、時間経過は変わらないはずですわ」

「そっか。スキルについて知識を持ってるテッテでも知らないのであれば、絶対見つからないよ。空間収納はスキルレベルによってできることが大きく変わるからね」

「そんな話知りませんわ。そもそも空間収納のスキルそのものがレアで簡単に取得ができないものですし、細かく検証した記録などありませんもの」

「きっとそうだと思うよ。空間収納のスキルレベルでの違いは、容量の違いだと思い込んでるから誰も気づかないんだよ。スキルレベルが高ければ、中で魔法が使えたり、生きている人が出入りできたりするってこと」

「じゃあ、お母様は誰かの空間収納に閉じ込められたってことですの」

「この世界にいないのであれば可能性は十分あるね。でも心配なことが1つ」

「お母様の命ですわね」

「11年間、時間の停止とか何もされずに閉じ込めらたままだと……」

「分かっていますわ。それでもわたしはお母様に会いたいですわ」

 最悪死んでいるかもしれないが、空間収納内であれば魂と遺体が共に残っている可能性が高い。そうであることを今は祈る。

「あとね、この空間収納の話なんだけど」

「もちろん誰にも言いませんわ。ケーナ姉様も秘密にしておきたかった事ですよね。わたしのためにお話していただいて感謝しますわ」

「可愛い妹のためだからね」

「そ、それに、わたしと同じ思いの者がこれ以上増えてもらっては困りますものね!」

 照れを隠して、明るい顔のテッテに戻った。

「ですが空間収納スキルを取得している者をどのように判別したらいいのでしょうか?」

 勘のいいヨシエが質問をしてきたので

「テッテの魅了を使って吐かせるのもいいけど、私の眼なら嘘も魔法もスキルもアビリティも一切通用しないから大丈夫だよ、ヨー・シエヴィスさん」

 ヨシエとテッテの顔がハッなる。
 知られてほしくなかった名前なのだろう。SL.Aの探索では名前表示が正しくできなかったが、SL.SSS+になった鑑定眼なら駆け出しの頃のようにレジストされることもない。
 たとえエピック級の隠蔽系アイテムを持っていてたとしてもスキルの方が上になる。

「ヨシエ、いつ教えたのですの?」

「いいえ、私は名前の話など一切しておりません」

「ヨシエさんから名前の話なんて聞いてないよ。これは私の眼は隠蔽系を突破できるスキルだから。でも、ごめんねあまり知ってほしくなかったかな」

「まさか、鑑定眼ですの? それもかなりの高レベルの……。ケーナ姉様だから信用しますし、内密にお願いしますわ」

 2人がヨシエの本名を言っただけ驚くのははよほどの事だと思った。

「秘密にしておくよ。でもこのスキルがあれば空間収納持ちはすぐわかるってこと」

「でしたら、バグラまで来ていただけますのよね!!」

(あ。そうか、そうなるよなぁ)

 結局行く事になる。
 城に入り片っ端から鑑定していくしかない。運よく空間収納スキルを持った者を見つけられたらその時考えようと思った。

 ハクレイとバジェットは同行させない予定。バグラに行くのは冒険じゃなくて、テッテの母親探しと使い物にならなくなった浮島の説明だけだから。

「直ぐは行けないかも、仲間に色々話して、それから――」

「仲間!? わたしというものがいながら浮気なさったのですか!!」

 今日は一段と喜怒哀楽が激しいテッテだ。

「浮気って、何と勘違いしてるの? 仲間だよ。冒険仲間」

「冒険仲間といったら、おはよう から おやすみ までずっと一緒にいるものですわ。それはもう夫婦とかわりありませんわ!」

「それは冒険中や依頼遂行中の話でしょ。お互いがお互いに命を守るため助け合うんだからそうなるでしょ」

「でしたら、わたしもケーナ姉様をお守りしますわ」

「テッテはしなくていいの。それでも姫様でしょ。守られなさい、そういう立場なんだから」

 本来なら、冒険者が大国の姫様と話を交わすことなんてできない。今それができるだけでも特別な事だとわかってほしい。

「明日は仲間に話をしてここにくるから、ついでに仲間をテッテに紹介するし大人しく待っててね」

「こちらで待たせていただきますので、準備が出来たらおいでになってくださいませ」

 段取りがついたところで今日は解散したのだった。
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