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水平線の向こうに⑤
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「やっと落ち着けるの」
「追手は……いるわけないか」
小さいながらもギリギリ島と呼べるぐらいの無人島。空間収納から大きいパラソルとビーチチェアを取り出し、ハクレイにはポーションを飲んでもらって、ついでに休んでもらう。
「しかし、あんなに必死になって追ってくるとは思わんかったの」
「もしかしたら私のことがバレたのかも。軍人の数も異様に多かったし、待ち伏せまでしてたし」
「そうかもしれぬな。じゃがここはいいの、待ち伏せもないようじゃし、砂だけで出来た島のようじゃが」
「安全ではないかもよ。今はよくても海面が上がってきたら消えちゃうかも」
「それは困るのじゃ。余の家を建てようかと思ったが、浸水してしまっては意味が無いのじゃ」
「ここに家か。周りが海だけだとちょっと寂しいかもね」
本気で考えてみたが、そもそもこの島がどの国の領土なのかもよくわからない。視界では海しか見えないので千里眼で水平線の向こうを見てみると、アヤフローラとは逆の方角に陸が見えた。
「どうしたのじゃケーナ」
「陸があるよ」
「新大陸かの!?」
「たぶんドボックス帝国だよ」
「なんじゃ……つまらんの」
ダクリュオンから北に逃げたので、海を渡ればドボックス帝国にたどり着くのはガイドブックで知っていた。
「たぶんここはもうドボックス帝国だ。追手が来ないんじゃなくて、来れないのかも。これって私たちも不法入国になるのかな」
「しつこく追い回されて逃げてきたから仕方ないのじゃ。どうせならドボックス観光でもしていくかの」
ドボックス帝国は大国の中でも最大の国土を誇る国なだけあって、農業も畜産も他の国より発展している。その国の料理となれば美味しいに決まっている。上陸して観光したい気持ちもあるが、またバレた場合のことを考えると今度こそ帰らないとなと思ってもいた。
「とりあえずさ、ここもいい場所なんだし、もうちょっと休憩しようよ」
そういってテーブルも設置する。
「なんじゃ食事にするのかの?」
「まだ食べてなかったでしょ、お誕生日のケーキ」
ゆっくりと取り出したのはお手製のケーキだ。ハクレイと一緒にこっそり作っておいたもの。
「なんじゃ、お誕生日のケーキとは」
「誕生日にケーキを食べる習慣があるの」
「なんじゃ!! その贅沢な習慣は!! なら余は毎日が誕生日でもいっこうにかまわんのじゃ」
本当に600歳なのか……6歳児並みの発想に呆れつつも
「年に1度だから意味があるの。自分自身を祝う事でもあるけど、産んでくれた母親に感謝する意味もあるんだから」
「母親に感謝するのか、まぁ自然発生した余にはわからぬ話じゃ」
「親がいないんだ」
「そうじゃ、気がついた時には余は余じゃった」
魔族の誕生には魔力が大きく関わってくるのは知っているが、まだまだ謎めいた部分も多い。
「ハクレイ、もう大丈夫そう? ケーキ食べる?」
「はい、いただきます」
「本当はね歳の数だけローソクを立てて、ローソクの火を吹いて消すってことをするんだけど今日は省略するね」
「なんでじゃ、せっかくなのだからやろうなのじゃ」
「ローソク600本も立てたら――」
「1本でもいいのじゃ。雰囲気が重要なのじゃ」
「わかった、わかったよ」
細いロウソクをアイテム作成を使い作り出しケーキに立てる。
(なんか最近、凄いスキルを無駄遣いしている気がする)
「じゃ、火をつけるね」
「いつでも消す準備はできておるぞ」
ちょっと悪戯してやろうと思って、火をつける瞬間に古代魔法を小声で詠唱する。
古代魔法はエーナの記憶から拝借してみた。古の魔人語を使う魔法と似ているのでそこまで難しくはない。
「s0i g51 aexg -k49」
ロウソクに火がともる。
「ぬぬぬ? 今、何をしたのじゃケーナ?」
「えっ? ローソクに火を着けただけだよ。ほらほら、ロウソクの火を消さないとケーキ食べられないよ」
「わかっておるのじゃ!」
ふぅーーー
っとフランが息を吹きかけるも火は揺れるだけで消えることはない。ムキになったフランがさらに強く息を吹きかけるも、思い切りなびくだけになっている。
唱えた魔法は古代魔法の ”永劫の火種”
強い風が吹いても、水をかけても、火種となった火だけは術者以外に消すことができない。古代魔法の中では基礎的な呪文だそうだ。
「い、息が、苦しいのじゃ」
何度も繰り返すうちに吹く息も強くなってきている。
そろそろケーキが吹き飛びそうなので、フランの溜息に合わせて火を消したのだった。
ケーキの評価は最高だったようで、フランはまた毎日誕生日宣言をしている。
ハクレイとのケーキ作りは楽しいが毎日では大変になる。毎日誕生日でも構わないがケーキは出ない事を伝えると月1回でいいのでとの作って欲しいとのことになり、次は3人で作ることになった。
その後は私とハクレイは海に潜って遊び、フランは砂浜でゴロゴロして過ごしていた。
しかし、暫くするとフランが海に潜ってきて何かをジェスチャーで伝えてくる。
残念なことにさっぱり分からなかった。
「追手は……いるわけないか」
小さいながらもギリギリ島と呼べるぐらいの無人島。空間収納から大きいパラソルとビーチチェアを取り出し、ハクレイにはポーションを飲んでもらって、ついでに休んでもらう。
「しかし、あんなに必死になって追ってくるとは思わんかったの」
「もしかしたら私のことがバレたのかも。軍人の数も異様に多かったし、待ち伏せまでしてたし」
「そうかもしれぬな。じゃがここはいいの、待ち伏せもないようじゃし、砂だけで出来た島のようじゃが」
「安全ではないかもよ。今はよくても海面が上がってきたら消えちゃうかも」
「それは困るのじゃ。余の家を建てようかと思ったが、浸水してしまっては意味が無いのじゃ」
「ここに家か。周りが海だけだとちょっと寂しいかもね」
本気で考えてみたが、そもそもこの島がどの国の領土なのかもよくわからない。視界では海しか見えないので千里眼で水平線の向こうを見てみると、アヤフローラとは逆の方角に陸が見えた。
「どうしたのじゃケーナ」
「陸があるよ」
「新大陸かの!?」
「たぶんドボックス帝国だよ」
「なんじゃ……つまらんの」
ダクリュオンから北に逃げたので、海を渡ればドボックス帝国にたどり着くのはガイドブックで知っていた。
「たぶんここはもうドボックス帝国だ。追手が来ないんじゃなくて、来れないのかも。これって私たちも不法入国になるのかな」
「しつこく追い回されて逃げてきたから仕方ないのじゃ。どうせならドボックス観光でもしていくかの」
ドボックス帝国は大国の中でも最大の国土を誇る国なだけあって、農業も畜産も他の国より発展している。その国の料理となれば美味しいに決まっている。上陸して観光したい気持ちもあるが、またバレた場合のことを考えると今度こそ帰らないとなと思ってもいた。
「とりあえずさ、ここもいい場所なんだし、もうちょっと休憩しようよ」
そういってテーブルも設置する。
「なんじゃ食事にするのかの?」
「まだ食べてなかったでしょ、お誕生日のケーキ」
ゆっくりと取り出したのはお手製のケーキだ。ハクレイと一緒にこっそり作っておいたもの。
「なんじゃ、お誕生日のケーキとは」
「誕生日にケーキを食べる習慣があるの」
「なんじゃ!! その贅沢な習慣は!! なら余は毎日が誕生日でもいっこうにかまわんのじゃ」
本当に600歳なのか……6歳児並みの発想に呆れつつも
「年に1度だから意味があるの。自分自身を祝う事でもあるけど、産んでくれた母親に感謝する意味もあるんだから」
「母親に感謝するのか、まぁ自然発生した余にはわからぬ話じゃ」
「親がいないんだ」
「そうじゃ、気がついた時には余は余じゃった」
魔族の誕生には魔力が大きく関わってくるのは知っているが、まだまだ謎めいた部分も多い。
「ハクレイ、もう大丈夫そう? ケーキ食べる?」
「はい、いただきます」
「本当はね歳の数だけローソクを立てて、ローソクの火を吹いて消すってことをするんだけど今日は省略するね」
「なんでじゃ、せっかくなのだからやろうなのじゃ」
「ローソク600本も立てたら――」
「1本でもいいのじゃ。雰囲気が重要なのじゃ」
「わかった、わかったよ」
細いロウソクをアイテム作成を使い作り出しケーキに立てる。
(なんか最近、凄いスキルを無駄遣いしている気がする)
「じゃ、火をつけるね」
「いつでも消す準備はできておるぞ」
ちょっと悪戯してやろうと思って、火をつける瞬間に古代魔法を小声で詠唱する。
古代魔法はエーナの記憶から拝借してみた。古の魔人語を使う魔法と似ているのでそこまで難しくはない。
「s0i g51 aexg -k49」
ロウソクに火がともる。
「ぬぬぬ? 今、何をしたのじゃケーナ?」
「えっ? ローソクに火を着けただけだよ。ほらほら、ロウソクの火を消さないとケーキ食べられないよ」
「わかっておるのじゃ!」
ふぅーーー
っとフランが息を吹きかけるも火は揺れるだけで消えることはない。ムキになったフランがさらに強く息を吹きかけるも、思い切りなびくだけになっている。
唱えた魔法は古代魔法の ”永劫の火種”
強い風が吹いても、水をかけても、火種となった火だけは術者以外に消すことができない。古代魔法の中では基礎的な呪文だそうだ。
「い、息が、苦しいのじゃ」
何度も繰り返すうちに吹く息も強くなってきている。
そろそろケーキが吹き飛びそうなので、フランの溜息に合わせて火を消したのだった。
ケーキの評価は最高だったようで、フランはまた毎日誕生日宣言をしている。
ハクレイとのケーキ作りは楽しいが毎日では大変になる。毎日誕生日でも構わないがケーキは出ない事を伝えると月1回でいいのでとの作って欲しいとのことになり、次は3人で作ることになった。
その後は私とハクレイは海に潜って遊び、フランは砂浜でゴロゴロして過ごしていた。
しかし、暫くするとフランが海に潜ってきて何かをジェスチャーで伝えてくる。
残念なことにさっぱり分からなかった。
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