たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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水平線の向こうに⑦

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「失礼いたします、帝王様。是非お耳に入れておきたいお話があります」

「なんだ、じい」

 就寝前の帝王に、魔王ケーナがドボックスに入国した知らせが世話係から届く。

「んっ! なんと! まことか?」

「まことでございます」

「まことにまことか?」

「まことにまことでございます」

「まことかぁ」

「明日、こちらにお見えになる手筈となっております」

「明日か! 少々胸が高鳴ってきたぞ。このままでは眠れん」

「気が早うございます帝王様。このような時は深呼吸でございます」

 全身に響く鼓動を抑えるために深い呼吸が部屋に響く。

「少しは落ち着いたぞ」

「左様でございますか」

「なぁ、じいよ」

「はい」

「魔王はかなり若いのであろう」

「見た目は10代前半、貴族のような美少女だと聞いております。しかし、年相応とは思えない魔力がある方だとも聞いております」

「もしかしたら、まろと同じかもしれぬ」

「可能性はございますね。しかし、女性に実年齢をお聞きするのは――」

「わかっておるわ」

「明日も早いですからお早めにご就寝ください」


 10年前、当時13歳でドボックスの帝王へと担ぎ上げられたマローニア・テイ・ドボックス。
 ドボックスの王家にのみ流行った、呪いのような病のせいで親も兄弟達も次々に倒れ、王位継承権が末の息子であるマローニアにまで降りてきてしまい、訳も分からず帝王となったが、優秀な世話係たちが何とか体裁を整え支えていたのだ。
 
 両親を含め、病にかかった王族達は正確にはまだ死んではいない。ただ自我を無くし、人としての形を保てていない状況から病に倒れたということにしてある。
 しかもずっと看病しているわけでもない、ほっといても死なず、いっそのこと殺そうとしたが驚異的な再生力で人でないものに戻ってしまうのだ。

 王族でただ1人、マローニアだけは病にならなかったと思われていたが、13歳から体の成長が止まってしまい、見た目も声もそのままで10年が過ぎていた。


 静かに部屋から出ていく世話係。
 扉を閉めて
 
「いよいよ明日でございますね」 
 
 と呟き、部屋から離れていった。


◇◇◇

 翌日、日が空の真上に来る頃、真っ黒な竜車が帝都に入る。その前後を賊が真っ青になって逃げ出すほどの異様な数の騎馬隊が護衛をしていた。
 竜車自体は豪華絢爛でなくても、要人が乗っていることは誰が見ても明らかだった。

 通常であれば城の門前で止まり竜車から降りてくる者を見ることができるが、真っ黒な竜車は門を潜り抜け城内にまで入っていったのだった。
 
 もちろん竜車の中には魔王ケーナ御一行が乗っているのだが、それがドボックスの一般人に知らされることはなかった。

「ご移動でお疲れでしたら、すぐお部屋にご案内いたしますがどうなさいますか?」

 メイド長とメイド十数人が出迎えてケーナに声をかける。

「いや、疲れてないよ。すぐに帝王様との挨拶でもいいし。あ、服このままでいいかな」

「御召し物でしたら、こちらにもご用意がございますのでお使いください」

「それじゃ、遠慮なく使わせてもらうよ。旅行の服しか持ってきてないからね。部屋に案内してくれるかな」

「かしこまりました」

 部屋では既に9人のメイドが待機している。
 まるで、待ってましたと言わんばかりに取り囲み、脱がし、磨き、計り、着せ替え、その他あれやこれやをテキパキとこなしていく。
 
「ドレスの色はどうなさいますか?」

「任せるよ」

 メイドたちに選んでもらうことにしたのだが、メイドたちにとってはそれが嬉しかったようで、アレでもないコレでもないと会議が始まり、最終的にはシンプルなモノトーンのドレスへと決まった。

 部屋からメイド達か撤収し、お呼びがかかるまでここで待機となる。

「3人とも似たドレスになったね。似合ってるよ」

「まるで3姉妹じゃの」

「ハクレイはお姉ちゃんがいいです」

「年齢的には余がお姉ちゃんじゃろ」

「では、ハクレイは真ん中で」

「私が三女ってこと? まぁ三女ではあるけど」

「ハクレイはケーナが妹だったら思いっきり甘えさせます。いっぱいお菓子を作って、料理を作って喜んでもらいたいです」

「今とあまり変わらないような……」

「そうゆうことなら余が真ん中でよいのじゃ。ハクレイが一番上のお姉ちゃんになっても構わないのじゃ」

「いやいや私が一番上でしょ。お姉ちゃんが妹を守ってあげるのは当然なんだから」

「ハクレイだって、ケーナを守れます」

「そもそもケーナやハクレイの敵になるのは誰じゃ。余の勘じゃが、ここに来るときにいた護衛全員とハクレイでもハクレイじゃろ。そもそも敵を探す方が難しいのじゃ。勇者でも敵に回すのか? まったく人族の娘っ子に何をさせたらこうなるのかのぉ……」

「私は何もしてないよ」

「ハクレイは未だに師匠に勝てません」

「一応言っておくがケーナは論外じゃぞ」

「何よ論外って。人外みたいに言わないでよ」

「じゃ、なんじゃ、ケーナに対抗できる者などおるのか? 余が知らぬだけか?」

「……」

「ほら、おらぬではないか」

「いるよ。1人だけいる」

「どこの誰じゃ?」

「教えてあげない。言ったらズルだとかそれは違うとか言いそうだから言わない」

「ふぅ~ん。予想はつくが言わぬ理由が分からんのじゃ」

「ハクレイには後で教えてあげるね」

「はい!」

「なんじゃ、なんで余はダメなんじゃ」

「意地悪するからだよ」

「そんなことはしておらんのじゃ。ハクレイだけ贔屓するのは良くないのじゃ。ケーナとは友であると思っていたが違ったのか? なぁ? 違ったのかの!?」

「わかった。わかったから、そんなに騒がないで」

 フランの部屋の外まで響く声のせいなのか、メイドがドアをノックしてきた。
 
「驚かせてごめんなさい。こちらは大丈夫なので」

「あ、いえ、何も聞いてませんので……。それよりお部屋のご移動になりますのでご案内いたします」

 このあとすぐに帝王との面会とのことで移動となった。

「ちゃんと教えるのじゃぞ」

「わかったよ、もう……」
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