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訳ありメイド②
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「はい! おまちどうさん。今日のオススメ、ディア肉の特製ソース煮込みと焼きたて自家製パンだ。冷めないうちに食べてくれ」
ジーンが作る料理はミーニャが一番自慢していた事だ。空腹に耐えていたのはこのため。美味しそうな匂いに胃袋が早く早くとせがんでいるのが分かる。
「命の恵みに感謝します」
煮込みに使われているソースはデミグラスソースのような味わいでとても美味しく、煮込まれた肉は臭みもなく舌の上で溶けるほど柔らかい。自家製パンもガーリックと胡椒のような味付けがされていて食がどんどん進んだ。
カスケード家でももちろん専属の料理人がいてそれなりの料理を食べていた。しかし父の質素倹約の考えが料理にまで反映されていて健康第一料理みたいな感じだ。それにテーブルマナーを厳しく指導されていたので、ガッツいて食べることなんて絶対にできなかった。
「嬢ちゃん良い食べっぷりだね。それでこそ作った甲斐があるってもんよ」
「んごん! おんんいでふ」
「美味しいってか、わかったわかった。食いながら喋らんでもいい。おかわりあるからたくさん食べてくれ」
「ん!」
宿代3500メルクが少々高いと思っていたが、このクオリティの料理を出されては安いところには泊まれなくなる。ああなんと罪深き美味さ。
「ディア肉の煮込みは1杯無料ニャ! おかわり欲しい方いないかニャ?」
「「おかわり」」
後ろで食事をしていた客と声が重なり、聞き覚えがあったので振り向くとどうやらあちらさんも同じことを思ったようでこちらを見ていた。
「おい、なんでここにいるんだ。家に帰ったんじゃないのか?」
おかわりしたのは、ナタの森で出会ったグランジだった。
「家に帰った? いったい何のことをいっているの?」
「……そう、なの、か?じゃあプリンは――」
「いい? 次その名で呼んだら二度と口きかないからね」
持っていたフォークを眼前につき出し警告をする。魔法を使える事も知ってるし。エーナについても何か知っていそうだった。こいつは要注意人物だ。
「何かいろいろあるんだな。悪かったよ。もう言わない」
「賢い人で助かるわ」
「あれれ、お二人さん知り合いかニャ?」
「全然知らなーい」
「はは、えらく嫌われたもんだ」
「まぁどっちでもいいニャ。2杯目のおかわりから300メルクになるニャ。2人とも腹ぶち破れるまでいっぱいおかわりするニャ!」
「ありがと、ミーニャ」
「お前、猫目亭に泊まってるのか」
「”お前”じゃない。私はケーナ。で、ここに泊まっちゃ悪いわけ」
「そんなツンケンするなよ。一夜を共にした仲じゃないか」
「それはグランジが腹を空かせた子犬のように餌をねだって来たから仕方なく施しをしてあげただけよ。その支払いが見張りだったってわけでしょ?」
「で、いつの間にか消えたんだなケーナは」
「初対面の相手に、質問攻めしてくるような男とずっと一緒にいるのは嫌だっただけ」
「なんか変わったな。あの時はもっと優しかった」
「今日冒険者になったの。冒険者同士で敬語や遠慮は無用でしょ? 子供だからって馬鹿にしないで」
「そうか、……そうだな」
結局おかわりは追加で2杯食べ、満腹ご満悦で部屋に戻る。グランジはジーンの料理が気に入って猫目亭の常連らしい。ミーニャともよく喋っていた。
ベットに横になり明日の算段を立てようと思ったけど満腹のせいなのか、瞼が重くなっていった。
「ケーニャ! ケーニャ! お湯持ってきたニャー」
扉の向こうでミーニャの呼ぶ声にハッと目を覚ます。だいぶ時間が経っていたのかもしれない。扉をあけお湯の入った桶を受け取る。
「ごめん、ちょっと寝てたよ」
「起こしちゃったかニャ? 申し訳ないニャ。お湯持ってきたから体拭くと良いニャ。使ったお湯は廊下に出しといてくれれば後で片づけるニャ」
「ありがと、あとこれチップ。貰ってちょうだい」
昨日の分も合わせて銀貨1枚が妥当かなと思いミーニャに差し出す。きっと喜んでくれるだろうと思ったのだが。
「これは受け取れないニャ」
「え、なんで???」
「ケーニャはもう友達ニャ。ミーニャは猫人族だから耳が良いニャ。だからアテシアとの話を聞いてたニャ。もう仲良しって言ってくれて嬉しかったニャ。チップよりもずっとずっと嬉しかったニャ。友達からチップなんてもらわニャいだろ?だから受け取れないニャ!!」
(友達か、自分にとっても初めての友達かもしれない)
「私も実は今まで友達いなかったんだ。だからミーニャが初めての友達になるね。ありがと」
「そんニャ~へへへ~」
喜ぶミーニャの尻尾がピンと伸び、痙攣してるかのように小刻みに振るえている。照れるミーニャも可愛い。
「じゃ、おやすみニャー」
「おやすみー」
ミーニャはいい子だ。直感がそういっている。自分なんかで良ければいくらでも友達になる。家族以外で大切な人が初めてできた気がする。
ジーンが作る料理はミーニャが一番自慢していた事だ。空腹に耐えていたのはこのため。美味しそうな匂いに胃袋が早く早くとせがんでいるのが分かる。
「命の恵みに感謝します」
煮込みに使われているソースはデミグラスソースのような味わいでとても美味しく、煮込まれた肉は臭みもなく舌の上で溶けるほど柔らかい。自家製パンもガーリックと胡椒のような味付けがされていて食がどんどん進んだ。
カスケード家でももちろん専属の料理人がいてそれなりの料理を食べていた。しかし父の質素倹約の考えが料理にまで反映されていて健康第一料理みたいな感じだ。それにテーブルマナーを厳しく指導されていたので、ガッツいて食べることなんて絶対にできなかった。
「嬢ちゃん良い食べっぷりだね。それでこそ作った甲斐があるってもんよ」
「んごん! おんんいでふ」
「美味しいってか、わかったわかった。食いながら喋らんでもいい。おかわりあるからたくさん食べてくれ」
「ん!」
宿代3500メルクが少々高いと思っていたが、このクオリティの料理を出されては安いところには泊まれなくなる。ああなんと罪深き美味さ。
「ディア肉の煮込みは1杯無料ニャ! おかわり欲しい方いないかニャ?」
「「おかわり」」
後ろで食事をしていた客と声が重なり、聞き覚えがあったので振り向くとどうやらあちらさんも同じことを思ったようでこちらを見ていた。
「おい、なんでここにいるんだ。家に帰ったんじゃないのか?」
おかわりしたのは、ナタの森で出会ったグランジだった。
「家に帰った? いったい何のことをいっているの?」
「……そう、なの、か?じゃあプリンは――」
「いい? 次その名で呼んだら二度と口きかないからね」
持っていたフォークを眼前につき出し警告をする。魔法を使える事も知ってるし。エーナについても何か知っていそうだった。こいつは要注意人物だ。
「何かいろいろあるんだな。悪かったよ。もう言わない」
「賢い人で助かるわ」
「あれれ、お二人さん知り合いかニャ?」
「全然知らなーい」
「はは、えらく嫌われたもんだ」
「まぁどっちでもいいニャ。2杯目のおかわりから300メルクになるニャ。2人とも腹ぶち破れるまでいっぱいおかわりするニャ!」
「ありがと、ミーニャ」
「お前、猫目亭に泊まってるのか」
「”お前”じゃない。私はケーナ。で、ここに泊まっちゃ悪いわけ」
「そんなツンケンするなよ。一夜を共にした仲じゃないか」
「それはグランジが腹を空かせた子犬のように餌をねだって来たから仕方なく施しをしてあげただけよ。その支払いが見張りだったってわけでしょ?」
「で、いつの間にか消えたんだなケーナは」
「初対面の相手に、質問攻めしてくるような男とずっと一緒にいるのは嫌だっただけ」
「なんか変わったな。あの時はもっと優しかった」
「今日冒険者になったの。冒険者同士で敬語や遠慮は無用でしょ? 子供だからって馬鹿にしないで」
「そうか、……そうだな」
結局おかわりは追加で2杯食べ、満腹ご満悦で部屋に戻る。グランジはジーンの料理が気に入って猫目亭の常連らしい。ミーニャともよく喋っていた。
ベットに横になり明日の算段を立てようと思ったけど満腹のせいなのか、瞼が重くなっていった。
「ケーニャ! ケーニャ! お湯持ってきたニャー」
扉の向こうでミーニャの呼ぶ声にハッと目を覚ます。だいぶ時間が経っていたのかもしれない。扉をあけお湯の入った桶を受け取る。
「ごめん、ちょっと寝てたよ」
「起こしちゃったかニャ? 申し訳ないニャ。お湯持ってきたから体拭くと良いニャ。使ったお湯は廊下に出しといてくれれば後で片づけるニャ」
「ありがと、あとこれチップ。貰ってちょうだい」
昨日の分も合わせて銀貨1枚が妥当かなと思いミーニャに差し出す。きっと喜んでくれるだろうと思ったのだが。
「これは受け取れないニャ」
「え、なんで???」
「ケーニャはもう友達ニャ。ミーニャは猫人族だから耳が良いニャ。だからアテシアとの話を聞いてたニャ。もう仲良しって言ってくれて嬉しかったニャ。チップよりもずっとずっと嬉しかったニャ。友達からチップなんてもらわニャいだろ?だから受け取れないニャ!!」
(友達か、自分にとっても初めての友達かもしれない)
「私も実は今まで友達いなかったんだ。だからミーニャが初めての友達になるね。ありがと」
「そんニャ~へへへ~」
喜ぶミーニャの尻尾がピンと伸び、痙攣してるかのように小刻みに振るえている。照れるミーニャも可愛い。
「じゃ、おやすみニャー」
「おやすみー」
ミーニャはいい子だ。直感がそういっている。自分なんかで良ければいくらでも友達になる。家族以外で大切な人が初めてできた気がする。
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