たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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ウソのほころび①

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 グランジが向かったのは、いつも世話になっている情報屋。

 中に入ると年老いた大男がこちらには背を向けた状態で声をかけてくる。

「誰じゃぁ?」

 店に入っても顔を合わせようとしない。機嫌が悪そうだ。
 
「よう爺さん、グランジだ。情報を売りに来た」

「つまらん事には1メルクも出さんからのぉ!」

「わかってる」

「それとインテルシアのいざこざ話しは今日呆れるほど聞いてるから、やめてくれ」

「俺の話はそんなクソみたいな話じゃない」

 既に出回っている情報を、貴重な情報だと勘違いしている者が立て続けに来ていたのだろう。同じような話を何度も聞かされては気分が上がらないのは当然だ。

「違う話だな、よし聞こう。手短にたのむぞぉ」

 クルリと椅子が半回転し、やっと顔が現れる。
 聞く体勢になったということ。

「簡潔に言うと、憤怒の魔王が生きていたって事だ」

 言い切る前にクルリとまた椅子が半回転する。

「もういい、こっちは疲れてるんだ帰ってくれるかのぉ」

「あんたの耳も落ちたな、俺の言葉が本当か嘘なわからないのか?」

「馬鹿を言う暇があるなら、もっとマシな情報拾ってこい!!」

 顔は見えないが、眉間のシワが深くなっていることだろう。
 子供でも騙せない話をグランジは売ろうとしている状況に見えるので、聞いている方が怒るのは当然の結果かもしれない。

「いや、続けさせてもらう」

「早く出ていけ!!!」

 更に口調は強くなり、声だけで並の人族なら逃げ出している。

「コレを見せたら帰るよ」

 小さな包みをゆっくり取り出す。

「あんたも情報屋の端くれだろ? 見ないと大損するぞ。耳はダメでも目は使えるだろ?」

「舐めてもらっちゃこまるの。くだらねぇ物だったら出禁だからなのぉ。ええか?」

 情報屋の性なのだろうか。
 どんなに嘘っぽくても、嘘を確かめたくなってしまうのだろう。

「それでいい。俺としてはあんたの目が節穴じゃないことを祈る」

「おー、生意気いいやがって!」

 またクルリと半回転して早速包みに手をかけようとする。

「ちょっと待て。包みを開ける前に値段交渉だ」

「何でだ? 後でいいだろうに」

「いや、先に交渉だ。この情報は一級情報だからな。『憤怒の魔王が生きている』その確証もある。これにいくらの値をつける?」

 一級情報。
 知っている者が極々少数しかおらず。緊急性がある場合や、国家の極秘に近い価値の高い情報のことである。

「もし、その話が嘘じゃねぇっていうなら1000万メルク。一括は無理だから、分割で払うぞぉ」

「安すぎるだろ。大国相手にできる情報だぞ!」

「なーにをいっとるかぁ! あまり背伸びするもんじゃねえ。1000万メルクあればしばらくは遊んで暮らせる。十分じゃねぇか、欲をだすと命までもってかれるぞぉ」

「こっちは命かけてこの情報もってきたんだ、安い相手に売る気はないし、この包みの中も見せない」

 先に交渉することで交渉決裂になったとしても、包みの中の決定的な証拠を確かめない限り確かな情報として売ることができない。

「わかった。わかった。いくら欲しいんだ? 2000万メルクでどうだ? 倍なら文句もないだろうに」

 町で暮らす人族なら、少しの仕事をしながらゆとりある生活ができるレベルだ。

「あんただったらこの情報で、国も、教会も、ギルドからだって金を引き出せるはずだろ。なのにたった2000万メルクで我慢しろって? 強欲がすぎやしないか?」

「しつこいのぉ。んー……2500万メルク。これ以上は無理じゃよ」

「違う、今いくらって話じゃない。この情報の価値わかってるだろ? 利用して得た利益の半分だ」

「馬鹿いうな!」

「契約に悪魔を立会人にして契約するつもりだ」

「……おまえさん、正気かぁ?」

「操作も洗脳もされてない大真面目だ!」

 悪魔の立ち会いには特殊な条件が付いており、契約を破った者の魂を買う権利を悪魔が持っていることだ。
 お互いにリスクのある契約になるが、圧倒的に情報提供者が不利な点がある。
 正しいと思い込んでいた情報が嘘の情報だった場合は騙すつもりがなくても契約を破ったことになるからだ。
 報酬を渡す方は額を正しく払うだけなので、計算ミスさえなければ問題ない。
 何もなければ立会料を払って終わり。
 
 万が一契約を破れば、その者の魂を買いにやってきて魂を奴隷化させる。そして契約を破られた方に金が支払われる。その金が最低限の保証となり、直接罰をくだす必要もない。
 
 悪魔はどちらかが契約を破ることを期待して契約終了まで待っている。
 
 悪魔を倒せば無かったことにできると考えた輩もいたそうだが、勇者であってもその契約を一方的に破棄することは不可能とされ教会では悪魔との契約を最悪の禁忌としている。

「……わかった……3割」

「半分」

「3.5もあれば十分じゃて」

「半分」

「4割だ。勘弁してくれんかのぉ、いろいろ準備金だって必要になってくるからのぉ」

「4.5」

「容赦ないのぉ……」

「安心しろ冗談みたいな話だが、冗談みたいに稼げる話だ」

 割合での報酬は、情報が売れた額が大きければ大きいほど報酬額がでかくなり貰える方は嬉しいが、渡す方はたまったものではない。

「いいんだな? 今なら無かった事にしてやれるぞぉ」

 最終確認。
 ここから先の後戻りは信用や命に関わることになる。

「ここまでしないと売れない情報だからな。それに包みの中気になってきたただろ?」

 覚悟を決めているグランジにこれ以上の確認は不要だ。

「それじゃー遠慮なく拝見させてもらうぞぉ」

 大きな手が小さな包みを慎重に開けていく。
 
 薄暗い中でも細く光るように見える赤い髪の毛。

「どうだ、この赤髪!」

「まぁ待てぇ……」

 大きな目の瞳孔がぐっと開いていく。

「触るぞ、いいな?」

「ご自由に」

 一本の毛を両手の爪で摘むとピンと張った。

 そして

「フンンン!!!!!!」

 髪の毛を引きちぎろうと声を出して踏ん張る。

「おい!! やりすぎだ!!」

しかし、それでも赤い髪の毛は切れない。

たった一本の毛を大男が顔真っ赤にしながら踏ん張っても切れない。

「ヘハァ……ヘハァ……」

「もう、するなよ?」

「おい! コレは何だ!?」

「憤怒の魔王の髪の毛だ」

「金属でもこの細さなら切れるはずじゃぞ!」

「だから——」

「植物なら…… ちょっと待ってろ。あいつを取ってくる」

 興奮しすぎて、グランジの声が耳に届いていない。
 でかい体が店の奥へ消えると、ガチャガッタンと物をかき分けスクロール1つ持ち戻ってきた。

「見ろ見ろあったぞ、まさかこいつを使う日が来るとはな!」

 クルクルと巻かれたスクロールをスルスルと広げると、中央だけ円状に空白でそれ以外はびっしりと描かれた魔法陣がお目見えする。
 
「こいつはいったい?」

「有名な魔導師が作った鑑定用スクロールじゃ。これ一枚で金貨100枚だぞぉ。その髪の毛はこいつを使うに相応しい物ってことになるの」

 100万メルクの超高額スクロール。スクロールは基本使い切りなので再利用はできない。それなのにこの値段、破格なのが分かる。
 鑑定ができるだけのスクロールは高くても1万メルク程度。ここまでの高値が付くのは通常ではありえない物なのだ。
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