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ウソのほころび②
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髪の毛をスクロールの中央に乗せ魔石を使い少しだけ魔力を与えると、魔法陣が光だしスクロールに染み込むように消えてゆく。
しばらくすると、文字が浮かび上がってきた。
《対象物 髪》
《色 赤》
《種族 大精霊族》
《推定職業 王》
《推定レベル 6000》
《推定年齢 鑑定不能》
《魔力の質 鑑定不能》
《推定各ステータス 鑑定不能》
《推定所持スキル 鑑定不能》
《物質劣化 無し》
《特記事項 危険又は禁忌の可能性あり》
《鑑定スクロール作成者: パルクス・ハットル》
スクロールが鑑定書になった。
髪の毛は鑑定書にピッタリと張り付き簡単には取れないようになっている。
「大精霊族じゃったか……」
驚きを通り越し、石化したように固まっている。
「大精霊? 見たことも聞いたこともないな。精霊族の親玉みたいなものなのか? おい! おい!!」
「……精霊族と大精霊族は別ものじゃぞ。大精霊は実体を持つから魔族に似たの存在なんだが……生きているものがおったとなると……」
「おい! どういうことだ!?」
「人族が崇めるのが神じゃろ、精霊族が崇めるのが大精霊じゃ」
「なら人族の敵と言われていた憤怒の魔王は実は大精霊族の王ってことなのか」
「この鑑定書を見る限りそうと言うしかなかろう。推定レベル6000など魔王以外にいてもらっちゃ困る。そこらの鑑定書なら偽造を疑うレベルじゃ」
「でもその鑑定書は正しいんだろ」
「あたりまえじゃ!!」
「なら、憤怒の魔王の復活の話信じてくれよな」
「心持ちは複雑じゃが、認めるしかないのぉ」
「よし、なら早速契約書作ってくれ」
引き出しから白紙の紙を取り出し、慣れた手つきで契約書を書きながらぼやき始める。
「もし教会側が憤怒の魔王が大精霊族だと知って討伐に躍起になっていたとなると厄介じゃな」
「教会は大精霊族を敵視してたのか。神のような存在がいるのは邪魔だったってわけか」
「まぁ、そうじゃな。唯一神アヤフローラ様じゃ。他の同格がいていいわけなかろう」
「それで、討伐ってことか。単純すぎないか?」
「つまるところ教会上層部の威厳を保つためと言っていいのかもしれんな」
「最悪だな」
「争い事を好まぬ精霊族が人間嫌いなのもわかるじゃろ? 今も人族だけ交流がないのは名残みたいなものじゃ」
「当然の結果だな……」
「ほれ! できたぞ、確認してサインせえ」
「ん? これ悪魔の仲介が抜けてるぞ」
「お前さんの覚悟は見せてもらった。命は大切せにゃならん」
「……そうか、ありがとよ。この借りは後で必ず返す」
「借りはええから、4割にならんかの?」
「4.5だ! しれっと値引きしようとするな」
サインを書いて店を後にするグランジ。
命懸けの契約にならず少々ホッとしたのと、どれだけ大きく売れるか期待せずにはいられず鼻歌まじりで帰路についた。
情報屋の爺さんの本領発揮はここからになる。
各領土にいる同業者や一部の権力者に人族全体に関わる緊急性のある一級情報を入手したとして、紙を転送する魔道具を使い宣伝をかけた。
情報料も3段階に分けてある。
500万メルク『憤怒の魔王は討伐されたのかの真実』10人まで
1000万メルク『憤怒の魔王 追加情報』5人まで
3000万メルク『憤怒の魔王 更に追加情報』3人まで
1段階目の500万メルクなら買い手がつきやすい。一級情報としても妥当な額だが、後の2つはただの一級情報と見ても高額な部類。
内容は500万メルクが『憤怒の魔王が生きてる』
1000万メルクが『憤怒の魔王の傷は癒えている』
3000万メルクが『元の支配領域に帰る可能性がある』
ただ情報屋からの発信で鑑定書があることも付け加えたとしても何かの間違いだとして信じない、信じたくない者がほとんどだ。
教会が40年以上前に勇者による討伐を発表しているのでそれを覆すのがそもそも難しい。
万が一真実でない情報だった場合、教会からも目をつけられてしまう恐れもある。
それでも真実なら強気で情報をだすのが情報屋。叩かれようと闇に葬られそうになろうと、情報を流すのが情報屋。
せっせと信頼できる仲間やお得意さんに宣伝していく。
「おっ流石、姐さん嗅覚がすごいのぉ」
情報を流して数分もせずに返信がくる。
爺さんが『姐さん』と呼ぶ同業者。
情報屋のイロハを爺さんに叩き込んだ師匠のような存在だ。
《1億出す。他に流すな。持ってる情報全部よこしな》
一流ともなれば命を賭けた情報なのか、しっかり伝わるようだ。
返信の速さは情報の鮮度が高いうちに捌きたいのだろう。
《1億で3つの情報と4つ目の情報も渡す。他に流すなの条件はのめない》
4つ目の情報として用意していたのは、鑑定書の写しになる。
憤怒の魔王が大精霊族であることを広めることになるが、どれくらい広めるかは買った者に委ねることにしていた。
多くの者に広まれば大精霊族の王を討伐し、一族の生き残りまでほとんど滅ぼした教会やそこに賛同した国の立場が疑問視されることになる。
それらと対立する覚悟がないと広めることができない情報にはなるが、1つだけ安全な策があるとするなら憤怒の魔王を後ろ盾にできるかどうかだ。
《今からそっちに行く。40分ぐらい待ってな。情報を他に売ったらただじゃおかないよ》
情報屋の中でも絶対的な権力を持つ爺さんの師匠的な存在。逆らうことなど無理なので従うしかない。
「交渉が終わってしもうたわ……足掻けばもう少しは高くできるかのう……残念じゃグランジ……」
仕方なくな最終的な取り分を考えながら、専用の高速極楽鳥でやってくるであろう姐さんを待つのであった。
翌日
情報屋の爺さんが奮闘したおかげで姐さん相手に搾り取った額は2億メルク。
鑑定書の写しではなく、オリジナルを渡すことでこの金額で決着となった。
髪の毛一本付きの鑑定書が1億メルクの価値があるのか。
その価値を最大限活かせる者の手に渡ったと思えば安いのかもしれない。
しばらくすると、文字が浮かび上がってきた。
《対象物 髪》
《色 赤》
《種族 大精霊族》
《推定職業 王》
《推定レベル 6000》
《推定年齢 鑑定不能》
《魔力の質 鑑定不能》
《推定各ステータス 鑑定不能》
《推定所持スキル 鑑定不能》
《物質劣化 無し》
《特記事項 危険又は禁忌の可能性あり》
《鑑定スクロール作成者: パルクス・ハットル》
スクロールが鑑定書になった。
髪の毛は鑑定書にピッタリと張り付き簡単には取れないようになっている。
「大精霊族じゃったか……」
驚きを通り越し、石化したように固まっている。
「大精霊? 見たことも聞いたこともないな。精霊族の親玉みたいなものなのか? おい! おい!!」
「……精霊族と大精霊族は別ものじゃぞ。大精霊は実体を持つから魔族に似たの存在なんだが……生きているものがおったとなると……」
「おい! どういうことだ!?」
「人族が崇めるのが神じゃろ、精霊族が崇めるのが大精霊じゃ」
「なら人族の敵と言われていた憤怒の魔王は実は大精霊族の王ってことなのか」
「この鑑定書を見る限りそうと言うしかなかろう。推定レベル6000など魔王以外にいてもらっちゃ困る。そこらの鑑定書なら偽造を疑うレベルじゃ」
「でもその鑑定書は正しいんだろ」
「あたりまえじゃ!!」
「なら、憤怒の魔王の復活の話信じてくれよな」
「心持ちは複雑じゃが、認めるしかないのぉ」
「よし、なら早速契約書作ってくれ」
引き出しから白紙の紙を取り出し、慣れた手つきで契約書を書きながらぼやき始める。
「もし教会側が憤怒の魔王が大精霊族だと知って討伐に躍起になっていたとなると厄介じゃな」
「教会は大精霊族を敵視してたのか。神のような存在がいるのは邪魔だったってわけか」
「まぁ、そうじゃな。唯一神アヤフローラ様じゃ。他の同格がいていいわけなかろう」
「それで、討伐ってことか。単純すぎないか?」
「つまるところ教会上層部の威厳を保つためと言っていいのかもしれんな」
「最悪だな」
「争い事を好まぬ精霊族が人間嫌いなのもわかるじゃろ? 今も人族だけ交流がないのは名残みたいなものじゃ」
「当然の結果だな……」
「ほれ! できたぞ、確認してサインせえ」
「ん? これ悪魔の仲介が抜けてるぞ」
「お前さんの覚悟は見せてもらった。命は大切せにゃならん」
「……そうか、ありがとよ。この借りは後で必ず返す」
「借りはええから、4割にならんかの?」
「4.5だ! しれっと値引きしようとするな」
サインを書いて店を後にするグランジ。
命懸けの契約にならず少々ホッとしたのと、どれだけ大きく売れるか期待せずにはいられず鼻歌まじりで帰路についた。
情報屋の爺さんの本領発揮はここからになる。
各領土にいる同業者や一部の権力者に人族全体に関わる緊急性のある一級情報を入手したとして、紙を転送する魔道具を使い宣伝をかけた。
情報料も3段階に分けてある。
500万メルク『憤怒の魔王は討伐されたのかの真実』10人まで
1000万メルク『憤怒の魔王 追加情報』5人まで
3000万メルク『憤怒の魔王 更に追加情報』3人まで
1段階目の500万メルクなら買い手がつきやすい。一級情報としても妥当な額だが、後の2つはただの一級情報と見ても高額な部類。
内容は500万メルクが『憤怒の魔王が生きてる』
1000万メルクが『憤怒の魔王の傷は癒えている』
3000万メルクが『元の支配領域に帰る可能性がある』
ただ情報屋からの発信で鑑定書があることも付け加えたとしても何かの間違いだとして信じない、信じたくない者がほとんどだ。
教会が40年以上前に勇者による討伐を発表しているのでそれを覆すのがそもそも難しい。
万が一真実でない情報だった場合、教会からも目をつけられてしまう恐れもある。
それでも真実なら強気で情報をだすのが情報屋。叩かれようと闇に葬られそうになろうと、情報を流すのが情報屋。
せっせと信頼できる仲間やお得意さんに宣伝していく。
「おっ流石、姐さん嗅覚がすごいのぉ」
情報を流して数分もせずに返信がくる。
爺さんが『姐さん』と呼ぶ同業者。
情報屋のイロハを爺さんに叩き込んだ師匠のような存在だ。
《1億出す。他に流すな。持ってる情報全部よこしな》
一流ともなれば命を賭けた情報なのか、しっかり伝わるようだ。
返信の速さは情報の鮮度が高いうちに捌きたいのだろう。
《1億で3つの情報と4つ目の情報も渡す。他に流すなの条件はのめない》
4つ目の情報として用意していたのは、鑑定書の写しになる。
憤怒の魔王が大精霊族であることを広めることになるが、どれくらい広めるかは買った者に委ねることにしていた。
多くの者に広まれば大精霊族の王を討伐し、一族の生き残りまでほとんど滅ぼした教会やそこに賛同した国の立場が疑問視されることになる。
それらと対立する覚悟がないと広めることができない情報にはなるが、1つだけ安全な策があるとするなら憤怒の魔王を後ろ盾にできるかどうかだ。
《今からそっちに行く。40分ぐらい待ってな。情報を他に売ったらただじゃおかないよ》
情報屋の中でも絶対的な権力を持つ爺さんの師匠的な存在。逆らうことなど無理なので従うしかない。
「交渉が終わってしもうたわ……足掻けばもう少しは高くできるかのう……残念じゃグランジ……」
仕方なくな最終的な取り分を考えながら、専用の高速極楽鳥でやってくるであろう姐さんを待つのであった。
翌日
情報屋の爺さんが奮闘したおかげで姐さん相手に搾り取った額は2億メルク。
鑑定書の写しではなく、オリジナルを渡すことでこの金額で決着となった。
髪の毛一本付きの鑑定書が1億メルクの価値があるのか。
その価値を最大限活かせる者の手に渡ったと思えば安いのかもしれない。
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