たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

文字の大きさ
192 / 221

ウソのほころび②

しおりを挟む
 髪の毛をスクロールの中央に乗せ魔石を使い少しだけ魔力を与えると、魔法陣が光だしスクロールに染み込むように消えてゆく。

 しばらくすると、文字が浮かび上がってきた。

《対象物 髪》
《色 赤》
《種族 大精霊族》
《推定職業 王》
《推定レベル 6000》
《推定年齢 鑑定不能》
《魔力の質 鑑定不能》
《推定各ステータス 鑑定不能》
《推定所持スキル 鑑定不能》
《物質劣化 無し》
《特記事項 危険又は禁忌の可能性あり》

《鑑定スクロール作成者: パルクス・ハットル》

 スクロールが鑑定書になった。
 
 髪の毛は鑑定書にピッタリと張り付き簡単には取れないようになっている。

「大精霊族じゃったか……」

 驚きを通り越し、石化したように固まっている。

「大精霊? 見たことも聞いたこともないな。精霊族の親玉みたいなものなのか? おい! おい!!」

「……精霊族と大精霊族は別ものじゃぞ。大精霊は実体を持つから魔族に似たの存在なんだが……生きているものがおったとなると……」

「おい! どういうことだ!?」
 
「人族が崇めるのが神じゃろ、精霊族が崇めるのが大精霊じゃ」

「なら人族の敵と言われていた憤怒の魔王は実は大精霊族の王ってことなのか」

「この鑑定書を見る限りそうと言うしかなかろう。推定レベル6000など魔王以外にいてもらっちゃ困る。そこらの鑑定書なら偽造を疑うレベルじゃ」

「でもその鑑定書は正しいんだろ」

「あたりまえじゃ!!」

「なら、憤怒の魔王の復活の話信じてくれよな」

「心持ちは複雑じゃが、認めるしかないのぉ」

「よし、なら早速契約書作ってくれ」

 引き出しから白紙の紙を取り出し、慣れた手つきで契約書を書きながらぼやき始める。

「もし教会側が憤怒の魔王が大精霊族だと知って討伐に躍起になっていたとなると厄介じゃな」

「教会は大精霊族を敵視してたのか。神のような存在がいるのは邪魔だったってわけか」

「まぁ、そうじゃな。唯一神アヤフローラ様じゃ。他の同格がいていいわけなかろう」

「それで、討伐ってことか。単純すぎないか?」

「つまるところ教会上層部の威厳を保つためと言っていいのかもしれんな」

「最悪だな」

「争い事を好まぬ精霊族が人間嫌いなのもわかるじゃろ? 今も人族だけ交流がないのは名残みたいなものじゃ」

「当然の結果だな……」

「ほれ! できたぞ、確認してサインせえ」

「ん? これ悪魔の仲介が抜けてるぞ」

「お前さんの覚悟は見せてもらった。命は大切せにゃならん」

「……そうか、ありがとよ。この借りは後で必ず返す」

「借りはええから、4割にならんかの?」

「4.5だ! しれっと値引きしようとするな」

 サインを書いて店を後にするグランジ。
 
 命懸けの契約にならず少々ホッとしたのと、どれだけ大きく売れるか期待せずにはいられず鼻歌まじりで帰路についた。

 情報屋の爺さんの本領発揮はここからになる。

 各領土にいる同業者や一部の権力者に人族全体に関わる緊急性のある一級情報を入手したとして、紙を転送する魔道具を使い宣伝をかけた。

 情報料も3段階に分けてある。

 500万メルク『憤怒の魔王は討伐されたのかの真実』10人まで

 1000万メルク『憤怒の魔王  追加情報』5人まで

 3000万メルク『憤怒の魔王 更に追加情報』3人まで

 1段階目の500万メルクなら買い手がつきやすい。一級情報としても妥当な額だが、後の2つはただの一級情報と見ても高額な部類。

 内容は500万メルクが『憤怒の魔王が生きてる』
 1000万メルクが『憤怒の魔王の傷は癒えている』
 3000万メルクが『元の支配領域に帰る可能性がある』

 ただ情報屋からの発信で鑑定書があることも付け加えたとしても何かの間違いだとして信じない、信じたくない者がほとんどだ。

 教会が40年以上前に勇者による討伐を発表しているのでそれを覆すのがそもそも難しい。
 万が一真実でない情報だった場合、教会からも目をつけられてしまう恐れもある。

 それでも真実なら強気で情報をだすのが情報屋。叩かれようと闇に葬られそうになろうと、情報を流すのが情報屋。
 
 せっせと信頼できる仲間やお得意さんに宣伝していく。

「おっ流石、姐さん嗅覚がすごいのぉ」

 情報を流して数分もせずに返信がくる。
 爺さんが『姐さん』と呼ぶ同業者。
 情報屋のイロハを爺さんに叩き込んだ師匠のような存在だ。

《1億出す。他に流すな。持ってる情報全部よこしな》

 一流ともなれば命を賭けた情報なのか、しっかり伝わるようだ。

 返信の速さは情報の鮮度が高いうちに捌きたいのだろう。

《1億で3つの情報と4つ目の情報も渡す。他に流すなの条件はのめない》

 4つ目の情報として用意していたのは、鑑定書の写しになる。
 憤怒の魔王が大精霊族であることを広めることになるが、どれくらい広めるかは買った者に委ねることにしていた。

 多くの者に広まれば大精霊族の王を討伐し、一族の生き残りまでほとんど滅ぼした教会やそこに賛同した国の立場が疑問視されることになる。

 それらと対立する覚悟がないと広めることができない情報にはなるが、1つだけ安全な策があるとするなら憤怒の魔王を後ろ盾にできるかどうかだ。

《今からそっちに行く。40分ぐらい待ってな。情報を他に売ったらただじゃおかないよ》

 情報屋の中でも絶対的な権力を持つ爺さんの師匠的な存在。逆らうことなど無理なので従うしかない。

「交渉が終わってしもうたわ……足掻けばもう少しは高くできるかのう……残念じゃグランジ……」

 仕方なくな最終的な取り分を考えながら、専用の高速極楽鳥でやってくるであろう姐さんを待つのであった。
 

 翌日
 
 情報屋の爺さんが奮闘したおかげで姐さん相手に搾り取った額は2億メルク。
 鑑定書の写しではなく、オリジナルを渡すことでこの金額で決着となった。

 髪の毛一本付きの鑑定書が1億メルクの価値があるのか。
 その価値を最大限活かせる者の手に渡ったと思えば安いのかもしれない。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

キモおじさんの正体は…

クラッベ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生し、ヒロインとなったナディア。 彼女はゲーム通りにいかない悪役令嬢のビビアンに濡れ衣を着せ、断罪イベントの発生を成功させる。 その後の悪役令嬢の末路は、ゲーム通りでは気持ち悪いおっさんに売られていくのを知っているナディアは、ざまぁみろと心の中で嘲笑っていた。 だけどこの時、この幸せが終わりを迎えることになるとは、ナディアは思っても見なかったのだ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

イジメられっ子世に憚る。

satomi
ファンタジー
主人公須藤正巳はぼんやりと教室で授業を受けていた。その時、突然教室中に物凄い量の光が…。 正巳が属する2-C全員が異世界転移することとなってしまった。 その世界では今まで正巳が陰キャとして読み漁ったラノベともゲームとも異なり、レベルがカウントダウン制。つまりレベル999よりレベル1の方が強い。という世界だった。 そんな中、クラスのリーダー的陽キャである神谷により全員で教室の外に出ることに。 いきなりドラゴンに出会い、クラスの全員がとった行動が『正巳を囮にして逃げること』だった。 なんとか生き延びた正巳は、まず逃げた連中へ復讐を誓う。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

処理中です...