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ハクレイの受難④
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MPを消費して発動する魔法は光を発するが、HPを消費して発動する死中に活は光を吸収することに気がつくハクレイ。
そのせいで使用者に影がかかったように暗くなる。魔法と違うのは効果がある間も光を吸収し続けることだった。
そして効果が切れると影も消えるようだった。
「このHPを消費する技はシチューにカツしかないのでしょうか?」
「ありますけど、あなたには教えませんわ」
「なぜでしょうか?」
「まだ自己犠牲への思いが強いからよ。とりあえず死中に活だけになさい」
「……承知いたしました」
あからさまに声のトーンが下がるハクレイ。
「仕方ないわね。MPを消費するものを魔法、HPを消費するものを影技(カゲワザ)と呼んでますの。理由は何となく分かりますわね」
「はい、発動時に光を吸収する特性があるからですね」
「半分正確。あと半分は法則による力というより技で成り立つものだからですから。加えて演技も必要になりますわよ」
「はい!」
「技である以上、ここから先は自分で編み出しなさい。あなたにはそれができますわ」
「かしこまりました」
「そろそろ起きますわよ」
「はい!」
長い長いエーナの特訓。
ハクレイが起き上がって外の景色を確認するが寝る前とあまり変わっていない。
「どれくらい寝てたのでしょうか?」
「紅茶を一口飲むぐらいですわね」
「たったそれだけですか?」
「だって夢ですもの、時間も空間も曖昧ですのよ」
「夢なのですね」
「そんな曖昧な世界でもあなたの心はしっかりあったと思いますわ。自分のステータスをご覧なさい」
ハクレイが見た自分のレベルは、10も上がっていた。
「あぁ!」
驚きの声に喜びが混ざる。
「上がったでしょ?」
「はい! でもどうしてこんなに……」
「あなたが頑張って心を鍛えたからよ」
「ありがとうございます!」
ハクレイの心を鍛えたからこともあるだろうが、実際にはエーナとのレベル差で負けても大量の経験が積めていたことによるレベルアップだった。
「それはそうと、影技は教えちゃダメですからね」
「使用も控えた方がよろしいでしょうか」
「見様見真似はできませんのでそこは安心なさい」
「HPを消費させることに気づくかどうかなのですね」
「仮に気付いたとしても、死への恐怖が使用を拒むので無理でしょうね」
「……どうしてエーナお嬢様は使えるのでしょうか?」
「あ、私? 一度死んでるからかしらね」
「そ、そうなのですか!?」
ハクレイが目を丸くして素で驚いている。
「ふふふ半分冗談よ。あなた意外と表情豊かで可愛いわね。ケーナが手放さないわけね」
「ハクレイが可愛いなんて、やめてください」
照れるハクレイは白い頬をピンク染めている。
それを見てエーナはこのままケーナの元に帰すの惜しくなっていた。
「今日は泊まっていくでしょ?」
「陽が沈んでもまだ明るいのでここで失礼いたいと思っております」
「今日は、泊まって、いくでしょ??」
「帰ってお夕飯の支度を——」
「泊まって」
「はぃぃ」
エーナの圧に勝てるはずもなく、お泊りが決定する。
短い夢の後長い夜が始まったようだった。
「そうと決まれば準備をしませんとですわね。ラルンテはいるかしら……」
エーナが小さく小さく呟くと コンコンコン と扉がノックされる。
「入りなさい」
「何か御用はありませんでしょうか?」
たとえ扉に耳をつけていても聞こえるはずのない声を聞きいていたかのようにラルンテが部屋に入ってくる。
「相変わらず気がきくわね」
「そろそろエーナお嬢様から頼まれごとがあるような気がしておりました」
「こちらはハクレイよ。知ってるわよね?」
「魔王陛下のお付きの方かとお見受けいたします」
「先ほど友人になったわ。お風呂と食事の用意をしてあげて。一緒に寝るから部屋のよういはしなくていいわ」
「かしこまりました」
一切の疑問も疑念も持たず。準備のため部屋を出ていく。
「ハクレイは大丈夫なのでしょか?」
「一緒に寝るの嫌だった?」
「嫌ということではないです」
「なら気にすることはないわ」
なかば強引に話が進み、ハクレイはカスケード家にもてなされた。
領主である父親とケーナの兄はこの日は外に出ていて、会えた家族は母親のみ。
エーナに同じ年頃の友人がいないことを気にかけていた母親にとっては、貴族でなくても友人というだけで大いに喜び歓迎された。
そしてお風呂も食事も問題なく終わり、あとは寝るだけとなった。
「ネグリジェも似合うわね」
「あ、ありがとうございます。ヒラヒラしていて少し落ち着きません」
「大丈夫、すぐ慣れるわよ」
一緒にベットに入り、たわいない話をしてお互いにおやすみを交わした。
目を閉じたハクレイだったが、緊張が解けることはなかった。
(このネグリジェ、万が一でも汚したら弁償なんてできない。寝ずに朝まで待って日が昇ったら朝一番で帰ろう)
そんな決意をするハクレイに、なかなか寝つけないのかなと思い気を利かせたエーナは睡眠魔法をこっそりかけてあげたのだった。
そのせいで使用者に影がかかったように暗くなる。魔法と違うのは効果がある間も光を吸収し続けることだった。
そして効果が切れると影も消えるようだった。
「このHPを消費する技はシチューにカツしかないのでしょうか?」
「ありますけど、あなたには教えませんわ」
「なぜでしょうか?」
「まだ自己犠牲への思いが強いからよ。とりあえず死中に活だけになさい」
「……承知いたしました」
あからさまに声のトーンが下がるハクレイ。
「仕方ないわね。MPを消費するものを魔法、HPを消費するものを影技(カゲワザ)と呼んでますの。理由は何となく分かりますわね」
「はい、発動時に光を吸収する特性があるからですね」
「半分正確。あと半分は法則による力というより技で成り立つものだからですから。加えて演技も必要になりますわよ」
「はい!」
「技である以上、ここから先は自分で編み出しなさい。あなたにはそれができますわ」
「かしこまりました」
「そろそろ起きますわよ」
「はい!」
長い長いエーナの特訓。
ハクレイが起き上がって外の景色を確認するが寝る前とあまり変わっていない。
「どれくらい寝てたのでしょうか?」
「紅茶を一口飲むぐらいですわね」
「たったそれだけですか?」
「だって夢ですもの、時間も空間も曖昧ですのよ」
「夢なのですね」
「そんな曖昧な世界でもあなたの心はしっかりあったと思いますわ。自分のステータスをご覧なさい」
ハクレイが見た自分のレベルは、10も上がっていた。
「あぁ!」
驚きの声に喜びが混ざる。
「上がったでしょ?」
「はい! でもどうしてこんなに……」
「あなたが頑張って心を鍛えたからよ」
「ありがとうございます!」
ハクレイの心を鍛えたからこともあるだろうが、実際にはエーナとのレベル差で負けても大量の経験が積めていたことによるレベルアップだった。
「それはそうと、影技は教えちゃダメですからね」
「使用も控えた方がよろしいでしょうか」
「見様見真似はできませんのでそこは安心なさい」
「HPを消費させることに気づくかどうかなのですね」
「仮に気付いたとしても、死への恐怖が使用を拒むので無理でしょうね」
「……どうしてエーナお嬢様は使えるのでしょうか?」
「あ、私? 一度死んでるからかしらね」
「そ、そうなのですか!?」
ハクレイが目を丸くして素で驚いている。
「ふふふ半分冗談よ。あなた意外と表情豊かで可愛いわね。ケーナが手放さないわけね」
「ハクレイが可愛いなんて、やめてください」
照れるハクレイは白い頬をピンク染めている。
それを見てエーナはこのままケーナの元に帰すの惜しくなっていた。
「今日は泊まっていくでしょ?」
「陽が沈んでもまだ明るいのでここで失礼いたいと思っております」
「今日は、泊まって、いくでしょ??」
「帰ってお夕飯の支度を——」
「泊まって」
「はぃぃ」
エーナの圧に勝てるはずもなく、お泊りが決定する。
短い夢の後長い夜が始まったようだった。
「そうと決まれば準備をしませんとですわね。ラルンテはいるかしら……」
エーナが小さく小さく呟くと コンコンコン と扉がノックされる。
「入りなさい」
「何か御用はありませんでしょうか?」
たとえ扉に耳をつけていても聞こえるはずのない声を聞きいていたかのようにラルンテが部屋に入ってくる。
「相変わらず気がきくわね」
「そろそろエーナお嬢様から頼まれごとがあるような気がしておりました」
「こちらはハクレイよ。知ってるわよね?」
「魔王陛下のお付きの方かとお見受けいたします」
「先ほど友人になったわ。お風呂と食事の用意をしてあげて。一緒に寝るから部屋のよういはしなくていいわ」
「かしこまりました」
一切の疑問も疑念も持たず。準備のため部屋を出ていく。
「ハクレイは大丈夫なのでしょか?」
「一緒に寝るの嫌だった?」
「嫌ということではないです」
「なら気にすることはないわ」
なかば強引に話が進み、ハクレイはカスケード家にもてなされた。
領主である父親とケーナの兄はこの日は外に出ていて、会えた家族は母親のみ。
エーナに同じ年頃の友人がいないことを気にかけていた母親にとっては、貴族でなくても友人というだけで大いに喜び歓迎された。
そしてお風呂も食事も問題なく終わり、あとは寝るだけとなった。
「ネグリジェも似合うわね」
「あ、ありがとうございます。ヒラヒラしていて少し落ち着きません」
「大丈夫、すぐ慣れるわよ」
一緒にベットに入り、たわいない話をしてお互いにおやすみを交わした。
目を閉じたハクレイだったが、緊張が解けることはなかった。
(このネグリジェ、万が一でも汚したら弁償なんてできない。寝ずに朝まで待って日が昇ったら朝一番で帰ろう)
そんな決意をするハクレイに、なかなか寝つけないのかなと思い気を利かせたエーナは睡眠魔法をこっそりかけてあげたのだった。
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