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第一章「青の髪紐」
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街に出てみてリビアは驚かされた。エルネストはまるで街の商人や住民たちと友人かのように打ち解けていたのだ。
たくさんの人々が通りすがりにエルネストに挨拶をしていく。エルネストもそれにフランクに返事をするものだから、リビアはなんだか自分が場違いな気すらしてきた。
「エ、エルネスト様。お友達がたくさんいらっしゃるのですね・・・」
「うん。ジャンが街に詳しいから、たまに二人で遊びに来るんだ。顔見知りは多いよ。」
何の気なしに答えるエルネストに、リビアはまた「ジャン」か、と強すぎるライバルの存在に少しだけ頭が痛くなった。
「あの、これからどちらに・・・」
リビアが尋ねるとエルネストはフフンと得意げに答える。
「おすすめのカフェがあるんだ。おいしいまかろんが乗ったケーキが食べれるんだよ!」
人差し指を立てて習いたての単語を披露する子どものような姿が可愛くて、リビアはさらに頭を抱えた。
その様子にエルネストは耳を赤くしておろおろしだす。
「ち、違った?あれ、まかろんじゃなかったっけ・・・」
「いえ、合ってます。合ってるんですが・・・エルネスト様が可愛くてっ・・・」
「リビアの方が可愛いよ!!!」
ついにリビアはこみ上げる笑いが止まらなくなった。心底楽しそうに笑うリビアに、エルネストは困惑しながらも一緒に笑ってみるのだった。
「おいしいまかろんが乗ったケーキ」を出すカフェに着くと、店主のダンディーなおじさまがエルネストに声をかけた。
「おや、今日はジャンじゃないのかい」
「ふふ、俺だってジャンにくっついてばっかじゃないよ」
それもそうかと店主は小話を早々に切り上げ、二人の仲を紹介しろと言わんばかりにエルネストの次の言葉をにこにこと待っている。
その空気にエルネストはやれやれとわざとらしく反応してみせた。
「紹介するよおじさん。俺の婚約者のリビア。」
「えーーー!!!」
店主が言葉を発する前に店の奥から聞こえた叫び声。リビアがエルネストの紹介に照れる暇もなく、ドタドタと騒がしい足音がしてその正体が姿を現す。
フリルの付いた可愛らしいエプロンに少し濃い目の化粧。リビアたちと同い年くらいの少女が、色んな感情の混ざったしわくちゃな顔でこちらを見ている。ジロジロとリビアを上から下まで品定めして一言。
「なんでそんな地味な子と」
(じ、地味!?)
とんでもなく失礼な少女にリビアは頭がカッと熱くなったが、言葉を発する前にエルネストが静かに少女を諭した。
「エマ。リビアは俺の大切な人だ。傷つけることは言わないでくれ」
「た・・・大切・・・・・・」
「それに、リビアは控えめだけど芯のある美しい人だ」
ヒュウと店主が茶化すように綺麗な口笛を吹いた。
リビアはストレートな言葉に顔が熱くなる。さっきから感情が激しく揺さぶられて落ち着けない。
エマと呼ばれた少女はうっすらと目に涙の膜を張ってプルプル震えており、リビアは先ほどの怒りを忘れてもはや罪悪感すら感じていた。
茶化していた店主だったが、エマの様子を見て気まずそうに口を開いた。
「ごめんねお嬢さん。この子は娘のエマ。エルネストくんを気に入っていたもんで・・・。私からもしっかり言っておくからね」
「いえ、私は――」
大丈夫ですと言おうとした言葉を遮り、エマが語気強くエルネストに話しかける。自分とエルネストしかここにいないかのような振る舞いに、やっぱりリビアは腹が立った。
「私にあんなに優しくしてくれたのに!」
「エマは店員で俺は客。普通に話をしていただけだと思うけど」
「っ仕方なく婚約してるんでしょ!貴族って恋愛結婚できないって聞いたわ!!」
「エマ・・・」
エルネストはあきれた様子で自分の頭を押さえ、エマとの会話を中断した。
(エルネスト様、罪な男ね・・・)
エマは自分の言葉がエルネストに効いていると思ったのか、追い打ちをかけるように続けた。
「そうだ、じゃあ私はジャンと結婚することにするわ!ジャンの方が紳士だし!ジャンと結婚していっぱいデートしていっぱい子どもも生んで、あなたたちより幸せになってやるわ!!」
あまりにも子どもじみていて、もはや小さい子を見ているような気分になったリビアだが、さすがにこんな雰囲気でケーキは食べられないとエルネストをちらりと見やった。
が、初めて見るエルネストの顔に思わず視線をそらした。
頭を手で押さえたままのエルネストの表情は、横に立っていたリビアだけが見ることができた。
少しうなだれた頭。目だけが鋭くエマの方向を向いていた。
エルネストが顔を上げた時にはいつもの穏やかさを取り戻しており、リビアは自分の見間違いだったのではないかと思った。
「エマ、ジャンだって俺の大切な友人だ。俺たちへの対抗心で近づこうとするなら許さないぞ」
「なによ・・・もういいわよ!!」
どうあがいても優しい言葉をかけてくれないエルネストに痺れを切らしたのか、エマはドスドスと音を立てて裏へ引っ込んでいった。
リビアは店主の謝る声に気まずそうに相槌を打った。エマの悪態などもう気になってはいなかった。ただ心の隅で小さな火種が煙を上げ始めたのを感じた。
やっぱりケーキを食べる気分にはならなかった。
―――――――――――――――――――
ジャンは濡れた手を強く振って水を切った。ふー、と息を吐いて立ち上がる。
この湖に来ればやることは決まっていた。
ここで人など見たことは無いが、用心深いジャンは念のためキョロキョロとあたりを見回しておく。
汚れた訓練服のボタンを外し、ガバリと上衣をはだけさせた。
もうここの空気ぜーんぶ吸ってやる、という意気込みで鼻からも口からも息を吸う。澄んだ空気が何にも邪魔されず肺に入ってくるこの感覚がジャンは好きだった。
「はぁ・・・きもち。」
ジャンは自分の人生を思い返す。
ジャンは平民として生まれた。母リア・ブラックはジャンが5歳の時、女王付きメイドになれると言って嬉しそうに出ていったきり帰ってきていない。
父オスカー・ブラックは何度も王宮に赴き、母に会わせるよう門番にすがっていた。でも返って来たのは母がいつも持っていた巾着だけだった。
父は母が消えて少ししてから精神がおかしくなった。
毎日うわごとのように謝罪を繰り返し、むせび泣いていた。母似だったせいか、ジャンに化粧をさせたり寝床を共にしようとしたり、リアと勘違いして体を触ろうとしたこともあった。
父に何があったのか聞くことはできなかった。聞いたら最後、父が本当に壊れてしまう気がした。
10歳を迎える頃にジャンは父にジュスト騎士訓練学校に入りたいと懇願した。とにかく父のそばにいるのが怖かった。異常と正常を行き来する父も、このままではいけないと思ったのだろう。小さく「そうか」とだけつぶやいて入校を許可してくれた。
優しかった母の行方は確かに知りたい。父が変わってしまった理由も。その答えは王宮にある。王宮は何かを隠している。それこそがジャンが王宮騎士を目指す理由なのだ。
でもその後は?
もし、母が見つかればジャンは王宮騎士でいる必要なんかない。そもそも王宮騎士に憧れがあったわけでもないのに、何を動機に頑張ればいい。
エルにも大切な家族ができてずっとふざけ合ってはいられなくなる。最近リビアと仲睦まじいエルの姿を見るたびにどうしようもない寂しさがこみ上げて困る。
(巣立つひな鳥の親になった気分だ・・・)
自分には好いた相手もいなければ、やりたい仕事もない。ひきこもりまっしぐらになる前に、誰かと結婚して無理やり自分を責任ある立場に置くべきなのかもな。
「エルー・・・けっこんするなよー・・・・・・」
ハッと理性が戻って、口をとがらせて小さく漏らした不満に恥ずかしくなる。何を考えてるんだかと鼻で笑って、上衣を脱いで湖に飛び込んだ。顔に集まった熱が急速に冷やされて、恥ずかしくて情けない自分など無かったことになる。
湖の美しさを肌で感じれば全てどうでもよくなった。
僕はこの湖の一部になってやがて森に帰るのさ。
たくさんの人々が通りすがりにエルネストに挨拶をしていく。エルネストもそれにフランクに返事をするものだから、リビアはなんだか自分が場違いな気すらしてきた。
「エ、エルネスト様。お友達がたくさんいらっしゃるのですね・・・」
「うん。ジャンが街に詳しいから、たまに二人で遊びに来るんだ。顔見知りは多いよ。」
何の気なしに答えるエルネストに、リビアはまた「ジャン」か、と強すぎるライバルの存在に少しだけ頭が痛くなった。
「あの、これからどちらに・・・」
リビアが尋ねるとエルネストはフフンと得意げに答える。
「おすすめのカフェがあるんだ。おいしいまかろんが乗ったケーキが食べれるんだよ!」
人差し指を立てて習いたての単語を披露する子どものような姿が可愛くて、リビアはさらに頭を抱えた。
その様子にエルネストは耳を赤くしておろおろしだす。
「ち、違った?あれ、まかろんじゃなかったっけ・・・」
「いえ、合ってます。合ってるんですが・・・エルネスト様が可愛くてっ・・・」
「リビアの方が可愛いよ!!!」
ついにリビアはこみ上げる笑いが止まらなくなった。心底楽しそうに笑うリビアに、エルネストは困惑しながらも一緒に笑ってみるのだった。
「おいしいまかろんが乗ったケーキ」を出すカフェに着くと、店主のダンディーなおじさまがエルネストに声をかけた。
「おや、今日はジャンじゃないのかい」
「ふふ、俺だってジャンにくっついてばっかじゃないよ」
それもそうかと店主は小話を早々に切り上げ、二人の仲を紹介しろと言わんばかりにエルネストの次の言葉をにこにこと待っている。
その空気にエルネストはやれやれとわざとらしく反応してみせた。
「紹介するよおじさん。俺の婚約者のリビア。」
「えーーー!!!」
店主が言葉を発する前に店の奥から聞こえた叫び声。リビアがエルネストの紹介に照れる暇もなく、ドタドタと騒がしい足音がしてその正体が姿を現す。
フリルの付いた可愛らしいエプロンに少し濃い目の化粧。リビアたちと同い年くらいの少女が、色んな感情の混ざったしわくちゃな顔でこちらを見ている。ジロジロとリビアを上から下まで品定めして一言。
「なんでそんな地味な子と」
(じ、地味!?)
とんでもなく失礼な少女にリビアは頭がカッと熱くなったが、言葉を発する前にエルネストが静かに少女を諭した。
「エマ。リビアは俺の大切な人だ。傷つけることは言わないでくれ」
「た・・・大切・・・・・・」
「それに、リビアは控えめだけど芯のある美しい人だ」
ヒュウと店主が茶化すように綺麗な口笛を吹いた。
リビアはストレートな言葉に顔が熱くなる。さっきから感情が激しく揺さぶられて落ち着けない。
エマと呼ばれた少女はうっすらと目に涙の膜を張ってプルプル震えており、リビアは先ほどの怒りを忘れてもはや罪悪感すら感じていた。
茶化していた店主だったが、エマの様子を見て気まずそうに口を開いた。
「ごめんねお嬢さん。この子は娘のエマ。エルネストくんを気に入っていたもんで・・・。私からもしっかり言っておくからね」
「いえ、私は――」
大丈夫ですと言おうとした言葉を遮り、エマが語気強くエルネストに話しかける。自分とエルネストしかここにいないかのような振る舞いに、やっぱりリビアは腹が立った。
「私にあんなに優しくしてくれたのに!」
「エマは店員で俺は客。普通に話をしていただけだと思うけど」
「っ仕方なく婚約してるんでしょ!貴族って恋愛結婚できないって聞いたわ!!」
「エマ・・・」
エルネストはあきれた様子で自分の頭を押さえ、エマとの会話を中断した。
(エルネスト様、罪な男ね・・・)
エマは自分の言葉がエルネストに効いていると思ったのか、追い打ちをかけるように続けた。
「そうだ、じゃあ私はジャンと結婚することにするわ!ジャンの方が紳士だし!ジャンと結婚していっぱいデートしていっぱい子どもも生んで、あなたたちより幸せになってやるわ!!」
あまりにも子どもじみていて、もはや小さい子を見ているような気分になったリビアだが、さすがにこんな雰囲気でケーキは食べられないとエルネストをちらりと見やった。
が、初めて見るエルネストの顔に思わず視線をそらした。
頭を手で押さえたままのエルネストの表情は、横に立っていたリビアだけが見ることができた。
少しうなだれた頭。目だけが鋭くエマの方向を向いていた。
エルネストが顔を上げた時にはいつもの穏やかさを取り戻しており、リビアは自分の見間違いだったのではないかと思った。
「エマ、ジャンだって俺の大切な友人だ。俺たちへの対抗心で近づこうとするなら許さないぞ」
「なによ・・・もういいわよ!!」
どうあがいても優しい言葉をかけてくれないエルネストに痺れを切らしたのか、エマはドスドスと音を立てて裏へ引っ込んでいった。
リビアは店主の謝る声に気まずそうに相槌を打った。エマの悪態などもう気になってはいなかった。ただ心の隅で小さな火種が煙を上げ始めたのを感じた。
やっぱりケーキを食べる気分にはならなかった。
―――――――――――――――――――
ジャンは濡れた手を強く振って水を切った。ふー、と息を吐いて立ち上がる。
この湖に来ればやることは決まっていた。
ここで人など見たことは無いが、用心深いジャンは念のためキョロキョロとあたりを見回しておく。
汚れた訓練服のボタンを外し、ガバリと上衣をはだけさせた。
もうここの空気ぜーんぶ吸ってやる、という意気込みで鼻からも口からも息を吸う。澄んだ空気が何にも邪魔されず肺に入ってくるこの感覚がジャンは好きだった。
「はぁ・・・きもち。」
ジャンは自分の人生を思い返す。
ジャンは平民として生まれた。母リア・ブラックはジャンが5歳の時、女王付きメイドになれると言って嬉しそうに出ていったきり帰ってきていない。
父オスカー・ブラックは何度も王宮に赴き、母に会わせるよう門番にすがっていた。でも返って来たのは母がいつも持っていた巾着だけだった。
父は母が消えて少ししてから精神がおかしくなった。
毎日うわごとのように謝罪を繰り返し、むせび泣いていた。母似だったせいか、ジャンに化粧をさせたり寝床を共にしようとしたり、リアと勘違いして体を触ろうとしたこともあった。
父に何があったのか聞くことはできなかった。聞いたら最後、父が本当に壊れてしまう気がした。
10歳を迎える頃にジャンは父にジュスト騎士訓練学校に入りたいと懇願した。とにかく父のそばにいるのが怖かった。異常と正常を行き来する父も、このままではいけないと思ったのだろう。小さく「そうか」とだけつぶやいて入校を許可してくれた。
優しかった母の行方は確かに知りたい。父が変わってしまった理由も。その答えは王宮にある。王宮は何かを隠している。それこそがジャンが王宮騎士を目指す理由なのだ。
でもその後は?
もし、母が見つかればジャンは王宮騎士でいる必要なんかない。そもそも王宮騎士に憧れがあったわけでもないのに、何を動機に頑張ればいい。
エルにも大切な家族ができてずっとふざけ合ってはいられなくなる。最近リビアと仲睦まじいエルの姿を見るたびにどうしようもない寂しさがこみ上げて困る。
(巣立つひな鳥の親になった気分だ・・・)
自分には好いた相手もいなければ、やりたい仕事もない。ひきこもりまっしぐらになる前に、誰かと結婚して無理やり自分を責任ある立場に置くべきなのかもな。
「エルー・・・けっこんするなよー・・・・・・」
ハッと理性が戻って、口をとがらせて小さく漏らした不満に恥ずかしくなる。何を考えてるんだかと鼻で笑って、上衣を脱いで湖に飛び込んだ。顔に集まった熱が急速に冷やされて、恥ずかしくて情けない自分など無かったことになる。
湖の美しさを肌で感じれば全てどうでもよくなった。
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