連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。

KZ

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始まりのバレンタイン

る、ルイちゃんのチョコレート講座。その8。

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 ここから、やっと今日のチョコレート作りがスタートします! まあ、俺は今日は調理に参加しないし、特に文句も言われないでしょう。

 その俺の代わりに、お姫様ことヒメちゃんがアシスタントとして、ルイと一緒にチョコレート作りを行います。

 包丁を握ったことすらない、お嬢様というかお姫様は、そこら辺から現在レクチャーを受けている。
 包丁を使うということは、やっぱりあれは絶対にある工程らしいな。

 俺はカメラマンと、お湯を沸かす係です。
 お湯を使うということは、つまりアレもあるということでしょう。
 えっ、カメラはもうとっくに回ってるよ?

◇◇◇

 第3回。ルイちゃんのチョコレート講座。
 カカオマスからチョコレートを作る!
 工程1。やっぱり刻む。チョコレートは刻んだもので出来ている。

 最初の工程はカカオマスを例のごとく刻む。あーあ、せっかくのオ○オ型が刻まれていく……。
 もったいないとは思わないが、クリーム挟んで『オ◯オだよ。食べてみて?』ってして遊びたかったな。

「少し多めに刻んでおく。失敗してもいいようにね」

「カカオマス。この黒いのがチョコレートになるのね」

 カカオマスを刻む理由は、そのままでは使えないからだ。刻んで熱が入りやすくしないと溶けないんだ。
 俺だってこれくらいは流石に分かるようになったよ? バカにすんな!

「カカオ何パーセントって表示されてるチョコは、このカカオマスの量がパーセントなんだ。カカオマスが多いほど、甘くないチョコになる」

 だが、これは知らなかったな。
 チョコレートはあまり甘くないほうがいいし、覚えとこう。
 作るときにはカカオは多めにしよう。

「なるほど、甘さじゃなくて苦さがカカオマスなのね。これに砂糖を入れる量で、甘くしたりビターにしたり調整できると」

「ヒメちゃんは誰かより理解が早い。包丁も1回で覚えるし。本当に誰かより優秀だと思う」

「困るわ、そんな誰かさんと比べられても。お調子者で、肝心なところでやらかすヘタレと一緒にされても……。あっ、誰かだったわね」

 ルイもお姫様も俺の方をまったく見ていないが、なんだろう。調理しているはずなのになんだろう。
 き、気にしないでいこう……。

「カカオマスはこのくらいでいい。次は砂糖をミキサーですり潰す」

「ミキサーっていうのがない場合は?」

「すり鉢でもいいと思う。すり鉢だと手間になるから、今日はミキサー使うけどね」

 砂糖をミキサーにかける? 何で?
 もう砂糖は粉々だというのに。
 そんなに砂糖が憎いというのか……。

「このままの砂糖じゃ、ジャリジャリだものね」

「そうなんだよ。けど、誰かさんだったら『砂糖をミキサーにかける? 何で?』って間違いなく言ってたと思う」

「ちょっと考えれば分かるのにねー」

 どうしてお姫様はわかんのよ。名探偵すごすぎるだろ! あと、ルイはエスパーなのかよ! 俺の心は読まれ過ぎじゃない!?

「突然来て、チョコレートを作りたいとか言ってきたのに、一向に上達しないし。おまけに、その場のノリと勢いでどうにかしようとするし」

「後先考えてないし。口だけだし。すぐ調子に乗るしね」

「本当にそう。まったく……」

「困ったものよね」

 さっきからなんなんだろう……。
 俺は調理に参加してないのに、参加してる時と同じくらい悪口を言われている気がする。
 あとさ、ふたりはいきぴったりだね!

「お前ら! 全部録画されてるからな! 音入りまくりだからね!? そして、俺が黙ってるからって悪口を言いすぎだから!」

「「自分が一番声が大きい」」

「なんなの、このシンクロ率! キミたち実は、思考回路が一緒なのかい!?」

「おい、お湯沸いてるぞ」

 まだまだツッコミたいところだが、俺がお湯の係りだし仕方ない。
 ビデオカメラを録画のままテーブルに置き、コンロの火を止める。
 ルイはミキサーしているし、初めてのお姫様にはやらせられないし。

「……これは、この丸いのが目の役割なのね。どれどれ」

「──って、何をやってるんだ! 借りてきただけなんだからイジんな!」

 ほんの一瞬目を離しただけなのに、お姫様がビデオカメラを持っている。
 このお姫様は好奇心が強すぎる!

「なによ。ちょっとくらい、いいじゃない」

「こないだもリモコン壊してただろ! やめて、本当にやめて!」

 ちょっとくらいと言うお姫様により、実はセバスのリモコンは壊されたので、しばらく時間旅行はできません。
 別にする予定もないけどね。
 なんにせよ、──触らないでほしい!

「こないだのは……ちょっと失敗しただけじゃない」

「そのちょっとが、シャレにならないかもしれないんだよ!」

 ビデオカメラは勝手に借りてきたのだ。
 もし壊したりしたら、俺はパパンに殺されてしまう。勝手に持ち出したのも正直怪しいところだ。

「2人とも、お湯沸いたし次やるよ?」

「じゃあ、はい」

「投げんなーー! やっぱ分かってないじゃねーか! あ、あぶねー。もう少しでリモコンのようになるところだった……」

◇◇◇

 工程2。やっぱり湯煎する。チョコレートは湯煎で出来ている。

 ルイはボウルに入れたお湯を水で割り、温度をさげていく。その手には温度計を持っている。
 材料たちはすり鉢に入れられています。

「50度でカカオマスとカカオバター。それにミキサーした砂糖も加えて、湯煎して溶かして混ぜる」

「んっ、今日は温度も関係あんのか?」

「ある。何度も温めたり冷やしたりする。テンパリングって作業なんだけど……分かるか?」

 はて、テンパリングとな?
 湯煎するのとは違うという時点で分からない。

「知らないよ。食べられるのかい? テンパリングは?」

「作業って言ってるんだから、食べられるわけないじゃない。バカよねー」

「──食べられるかもしれないだろ!」

「そんなわけないだろ……」

 テンパリングは食べられないらしいっす。覚えておこうね。

 ここから俺は、沸かしたお湯をボウルに入れる係に、冷水を作る係、温度を測る係とプラスされました。
 こうなるとカメラから手が離れるのが多くなってしまうので、ビデオカメラはレンズだけこちらを向いています。

「50度くらいの温度で溶けるから、すり鉢のまま湯煎にかけて混ぜる。ひたすら混ぜる」

「これ、どのくらいかかるの?」

「今日はチョコレートを形にすることを優先するから、チョコレートっぽくなればいい。本当はコンチングって作業もあるんだけどね……」

 また、知らない言葉が出てきた。コンチングは食べられるんだろうか?
 ……作業って言ってるから食べられない? そうか、コンチングも食べられない。覚えておこう。

「おぉ、溶けはじめると本当にチョコレートみたい」

 お姫様が言うように、あんな固形物が溶け始めると、チョコレートみたいになってきている気がする。
 これがカカオバターなる物の効果だろうか?

「次は30度になるように冷やすから用意して」

「わかったけど30度?」

「細かくやると28度。温めたの冷やすから、違うボウルに水と氷入れて」

 温めたチョコレートを冷やして固めるのだろうか。
 しかし、ここでそれを口にすると、またバカにされそうなので、黙って言われた作業をやります。

「終わったら、ヒメちゃんの方の温度見てやって。湯煎も50度超えるとダメだからな」

「なんか急に忙しくなった!」

「冷やしたらまた温度上げるから、今のボウルにもまた50度のお湯ね」

 ……冷やしたのにまた温める。なんで? とても気にはなるが忙しいので後回しだ。
 今は温度管理が最優先。お姫様もルイと大差なく湯煎しているから、大差なく?

「──てゆうか、ヒメちゃん器用だね。全然お湯入ってない! 俺、こないだ大変だったのに!」

「あんたが不器用なんじゃなくて?」

「そうなのかな。俺は不器用な男なんだろうか。それはそうと、ヒメちゃんのボウルが50度超えそうなんだけど」

 上手くいっているのかいないのかも分からないので、同じことをやってるルイに聞くしかない。
 お姫様がいかに器用だろうと、素人には変わりないから。

「なら、湯煎から外していいよ。それで温度をキープするように混ぜて。温度が下がったらまた温めて」

「こんなふうにチョコレートを作れるとか、ルイはすごいわね。尊敬するわ」

 そうだよな。お菓子学校に通ってはいるが、チョコレートすら自作できるとはすごいと思う。
 お姫様が尊敬する気持ちも分かる。俺も尊敬することにしよう。

「そろそろ、いい感じだから冷やすぞ! 28度まで温度を下げるから」

 ルイは隠しているつもりなのかもしれないが、明らかに照れている。
 珍しいけど、バレバレだよ。

「照れてる。可愛いわね」
「そうだな。可愛いな」

「──2人ともちゃんとやれよ!」

 怒られたのでからかうのは終わりにして、ボウルの中のチョコレートの温度を28度にまで下げます。
 冷水で湯煎しながら、お姫様が混ぜるたび、みるみる温度が下がっていく。

「ここも温度が下がりすぎないようにキープしてね。次は30度になるように湯煎する。これで冷やせばチョコレートになる」

「マジか! チョコレートは結構簡単なんだな」

 カカオマスとカカオバターを刻んで、砂糖細かくして、混ぜて、湯煎して、混ぜて、冷やして、混ぜて、湯煎して。でチョコレートになるとは……。
 混ぜる作業が苦行だな。俺は参加してないからいいけどさ。

「滑らかになってきた。これでどうするの?」

「型も用意してあるから、流しこんで冷やせば出来上がり」

「おぉ、ついにチョコレートが完成する!」
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