連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。

KZ

文字の大きさ
55 / 67
始まりのバレンタイン

ルイちゃんのチョコレート講座! 最終回だよ?

しおりを挟む
 フードプロセッサーで、カカオ豆を少しだけゴリゴリした。その後は人力。ひたすら、すり鉢でゴリゴリしている。

 この工程が一番大事らしいので、かけられるだけ時間をかける。なので、また1時間が経過した。
 最初は交代制をとっていたが、力仕事である以上は俺がやる。むしろ、進んでやらないといけない。

零斗れいと、お前少し休めよ。ぶっ通しじゃないか。代わってやるから休めよ」

「いや、俺がやるからいい。ここからは1人でやらせてくれ」

「……どうしたんだよ」

「次の工程になったら、指示だけくれ」

 とは言え、腕も辛くなってきた。1人でゴリゴリやり続けるのは、ここら辺が限界らしい。
 だが、弱音は吐かないし、交代を頼みもしない! やると言ったからにはやる!

「……なるほどね。それが最高のチョコレートなわけね?」

「「えっ……」」

 どうして、おばちゃんの口からそれが出てくるんだろう。ていうか……──言っちゃったよ! この人!
 何を思ってそんな発言をするのか!?

「……最高のチョコレート?」

「それがルイの無茶振りに対する答えなのね。2人で作ったイチャイチャチョコが、最高のチョコレートだというわけね。ふっ、負けたわ……」

「……2人で作った」

 この人、なんてことを言うんだろう。ニュアンスとしては間違いではないが、言葉のチョイス!
 最高のチョコレートと初めに言い出したルイちゃんが固まってる!

「──おばちゃん、余計なことを口走りやがって! 間違えてはないが悪意があるぞ!」

「なにもまちがえてません。すべて、ほんとのことだとおもいます」

「──なんだその棒読み! 言わなくていいこと言いまくってるからな!」

 本人を目の前に、『ふっ、お前のためのチョコレートを作ってるんだぜ☆』なんて言えるわけがない。
 なんのプレイなの? って思うよな!

 そういうのは言われた方も恥ずかしいが、言う方はもっと恥ずかしいのだ。
 そんなセリフの言えるメンタルはない。むしろ欲しい!

「それが私へのチョコレートだと?」

「そうよ。だから、れいちゃんの邪魔しちゃダメよ。ルイに贈る、ルイのためのチョコレートを作ってるんだから♡」

 まさに今起きていることを自覚したのだろう。固まっていたルイの顔は赤く染まっていく。

「──私、部屋にいるから」

 ルイはそう言い残して、勢いよく台所を飛び出して行ってしまう。
 バタバタと音がして、音は遠ざかっていく。自分の部屋がある2階にいったのだろう。。

「……おい」

 先ほどから茶の間で座って、ずっとテレビを見たままの体勢で、顔だけこちらに向けて喋っていたおばちゃんを睨みつける。
 もうね、ゴリゴリする作業になったら手伝う気ないよねー。

「あの子がいたらやりにくいでしょ? 気を利かせたのよ?」

 違うよね。2人の間に気まずい空気を作り、ハードルを上げただけだよね。
 グダグタを通り越して、もうなんだから分からないよ!

「──どうしてくれんだ! すでにサプライズじゃなくなってんのに、その上……今チョコレート作ってますってバレてるんだけど。しかも、イチャイチャチョコって何? 俺はどうしたらいいの?」

「もう告っちゃえよ!」

 あー、もう! そんなん違うから! と言いたくても、返しがロクでもないと思うので返事しません。そして告ったりもしません。

「おい。出前が届いたんだが、今日はどうかしたのか? ……なんだ、零斗。まだ居たのか」

 今まで何をしていたのかは知らないが、おっちゃんが現れた。ずいぶん久しぶりに見た気がする。あと失礼なやつだ。

「今日はれいちゃんの奢りよ。ルイー、ご飯よ」

 おばちゃんは、この状況でルイを呼ぶ。
 やっぱり気を利かせてなんてない。
 ただの悪ふざけだ。ふざけやがって!

「……お前、何かやったのか?」

「チョコレート作りを……なんでもない。カカオ豆への心からの感謝の印です。お寿司食べてください」

 おっと、余計なことを言うところだった。おばちゃんのようになってしまう。
 余計なことは言わず、お礼とだけ言えばいいんだ。

「ルイー、ご飯だってばー。照れてないで下りてきなさーーい」

 そして返事のないルイを、おばちゃんは呼び続けている。が、返事がないのは当たり前だと思う。
 この人には、人の気持ちが分からないのかもしれない。あるいは、分かった上でやってるんだとしたら最悪だと思う。

「これが寿司? 岡持ちには入ってこないだろ?」

 おばちゃんは寿司だと言っていたのだが、おっちゃんの手には確かにアルミの岡持ちがある。
 そしてこれは近所の中華屋のやつだ。寿司屋のものではない。

「中は?」

「見てねーよ。出してみるか」

 開けて出てきた中身は、ラーメンに餃子にチャーハン。見間違えではない。
 4人分はある気がするが、寿司ではないしな。

「間違いじゃないのか? 寿司だって、おばちゃん言ってたぞ」

「間違いじゃないわよ。寒いから、ラーメンにしました」

「そう言われれば……やけに寒いな」

 ずっと暖房のある茶の間の横の台所にいたし、チョコレート作りに集中していて気づかなかったが、廊下からの空気が寒い。
 冷たいを通り越して寒い。かなり外の温度が低いらしい。

「寒いって、外は雪降ってるぞ? しかもかなりの量だ。積もるだろうから、雪かきの用意をしてきた」

「あら、天気予報当たったのね」

 それは寒いはずだ。というか、雪が降るなんて知らなかった……。
 俺、天気予報なんていちいち見ないし。朝起きて、その日の天気を知る人だし。途中から天気が変わったらビニール傘買うし。

「ルイー、雪降ってるってー。あと、ご飯よー」

 まだ諦めずに、おばちゃんはルイを呼んでいる。
 俺はその横を抜け、廊下からでも外が見える縁側まで移動して、暗闇を覗く。
 街灯に照らされているところに白いものが落ちてきていて、地面はもう白く染まっている。

「──雪だ! 積もるのなんて久しぶりに見た!」

 年に1回積もればいい方。ここ何年かは積もらなかった。
 こんなに雪が降るのを見たのは何年かぶりだ。あれはいつだったっけ。

「本当だ。雪降ってる……」

 おばちゃんに何度も呼ばれて観念したのか、階段を下りてきたルイも、俺と同じように降る雪に見入っている。
 顔は合わせづらいからちょうどいい。

「そういえば、あの年のバレンタインの前にも雪が積もったな。覚えてるか?」

 ああ、あれは5年生の時だったか。
 雪がかなり積もった年があった。そんで、学校が休みになったんだ。

「あの年は雪降って休みの日があったなよな。雪だるま作ったな」

「良かったじゃないか。この調子だと、明日も休みになるぞ?」

「……そうだな」

 やっぱり今日だな。雪まで再現してくれるとはな。
 今の調子だと日をまたぐかもしれないが、それでも今日チョコレートを完成させよう。

「よし! 冷めないうちに食べて続きだ」

◇◇◇

 台所にも、茶の間にもいづらいルイは、晩ごはんを食べたら部屋に戻ってしまった。
 流石におばちゃんも、もう余計なことは言わずにいた。今度余計な発言をしたら、口にガムテープを貼るつもりだったから、実行せずに済んでよかった。

 チョコレートの進捗具合だが、すり潰す作業は2時間で妥協した。
 ローストから皮むきで2時間。すり潰すで2時間。これだけで4時間かかった。

 晩ごはん食べて少し休んでしたら、時計は22時を過ぎた。疲れたがまだ半分しか終わってない。
 だが、ここからなら昨日もやったし大丈夫だ。1人でやれる!

「本当にカカオ豆からチョコレート作ってんのな。そろそろあがりか?」

「おっちゃん。気が散るから話しかけてくんなよ。おばちゃんみたいに、テレビでも見ててくれよ」

 夕飯のあと、片付けの必要がないおばちゃんはテレビを見ている。今は21時からのドラマを食い入るように見ている。
 そして、おっちゃんは缶ビール片手に邪魔してくる……。

「せっかく用意してやったんだ。出来上がりくらい気になるだろ」

「……邪魔すんなよ。邪魔、すんなよ?」

「──してねーだろ! それが固まったら終わりか?」

 そこにいるのがもう邪魔なんだと察しろよ。気が利かないおっさんだ。
 ……とはいえ、ちょうどいいかもしれません。

「おっちゃんも食うか? 材料は余分にあるし」

「チョコレートをか?」

「俺がそのままのチョコレートを、ルイに渡すと思うのか? バレにバレたが、これだけはまだバレていない!」

 やっと、クーラーボックスの出番だ。中身がなんなのか気になっていただろう?
 中身は異世界産の材料。試作に使ったあれらだ。

「えっ、チョコレートだけ渡すんじゃないの?」

 ドラマがCMに入ったのか、食い入るように見ていたおばちゃんも、台所へとやってくる。

「チョコレートはそのまま食べても美味しいが、それではつまらない。何より、最高のチョコレートではない! 俺が作ったこのチョコレート料理こそが、最高のチョコレートだ!」

 姫からお墨付きは貰っているが、プロからは貰っていない。1人分も3人分も変わらないから、おっちゃんとおばちゃんにも食べてもらおう。

「その料理にはこれを使う。見ろ、この分厚さを! 最高級の霜降り具合を! 無論。焼き加減も幾度もの試作により、最高にいい感じにする術を俺は身につけた! タレを愛す俺だが、これはこれでアリだと思う!」

「「…………」」

 おっちゃんも、おばちゃんも、クーラーボックスの中身を見て停止した。
 しかし、まあそんな反応だろう。

 俺だって驚いた。最初はただの思いつき。 ……本当はイライラしてたからかもしれない。
 だが、みんなの評価は高かった! あのワガママ姫も唸るくらいだ。

 チョコレートの状態でも食べさせるつもりではあるが、メインはこっちだ。
 絶対にこちらでは食べられないチョコレートを使った料理が、俺の最高のチョコレートだ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...