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始まりのバレンタイン

雪のバレンタイン ②

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 ここで1つ訂正があります。
 俺たちの世界の方に雪が降ったからと言って、異世界に側には雪が降っていなかったと、わたくし発言いたしましたが、あれは間違いでありました。

 わたくしプロデューサーは、非常に重要なことを失念しておりました。それは、『……あの城、浮いてたわ』ということでございます。
 あそこに雪なんて積もるわけなかったんだ。あの城、移動もできるんだぜ。雲より上にも移動できるんだ。

 普段は雲より下にいるが、昨夜は雪かきめんどくさいから雲より上にいたんだ。というのは嘘だ。いつもそうしているらしい。
 よくよく考えたら、雨降ってるのも見たことなかったわ。

 まとめると、俺は自分から見える範囲に雪がなかったから、雪は降っていなかったと思っていたんだ。
 しかしあれだな。チョコレート作りは順調かなー。

「おい、にいちゃんも雪かき手伝ってくれよ! そのために来たんだろ!」

 いや、チョコレート楽しみだなー。
 かなり疲れてる俺には糖分が必要だからなー。
 アンチが何か言ってるが、よく聞こえないなーーっ。

「お前ら、そっちに集めるんだ! にいちゃんが使い物にならない。このままじゃあ、チョコレートが食べられないぞ!」

「!!」

 そうだった! 呆けてる場合じゃない。
 雪かきサボってきたのに、雪かきしなくちゃいけないショックで、つい現実逃避してた。

 異世界は雪の量も半端なかったんだ。北海道かってくらいに積もってる!
 しかも、何の対策もされてないから大変なんだ!

「──ダメだ、ダメだ! アンチたち、コンビニの店舗の方に寄せんじゃなくて、看板の方に雪を集めんだよ。野郎ども、テキパキと動け! お姫様がチョコレートをくれるぞ!」

「おぉ、にいちゃんが復活した! やるぞ!」

「アンチども。こないだのお詫びも兼ねて働け! でないと、またフクロにされるぞ! お姫様にぶっ飛ばされるぞ!」

 お姫様にやられたアンチたちは、お姫様からのチョコレート欲しさに集まってきた。ゾロゾロと仲間を連れてだ。
 いや、もはやアンチじゃないな。ヤツらは、お姫様にやられた衝撃で目覚めた……。
 何にかは、ちょっといいたくないから、自分たちで想像してくれ。

「またあんなことを? ……ハァハァ……」

「そこっ! おかしな言動は控えろ。邪なやつは信者たちに消されるぞ!」

 その目覚めたアンチたちは、それを自慢したのか、吹いて回ったのは知らないが、同じようにやられたいヤツらを引き連れて集まってきたんだ……変態どもめ。

 今やアンチは全員が信者たちと同じだ。お姫様の支持層はさらに広がっている。
 アンチたちも取り込み、きっと世界を征服できるくらいには崇められていると思う。

「ところで、この建物はなんなんだ?」

「何? コンビニを知らないのか? ここはあらゆるものが集まり、金さえあれば手に入るという、夢のような店の1号店だ。たとえば今日以降、チョコレートはコンビニで買えるようになる!」

「そりゃあスゲェ……」

「コンビニはまだ開店しないが、チョコレート食べる会のついでにここを宣伝するんだ。チョコレートはコンビニに来れば手に入ると、参加者たちに認識させるんだ」

 本日の、『チョコレートをみんなで食べよう会』は、宣伝をしたのと同じ、コンビニ前で行われる。
 これで、ミルクちゃんのコンビニの宣伝にもなるし、チョコレートが手に入る場所という認識を広められる。

 ただ、コンビニ含む城下は雪で真っ白。雪かきしないと会は行えない。
 しかし、雪かきなんて間に合わない!
 兵力は全部、チョコレート作成につぎ込んだからだ……。

「おう、集まってきたな。だが、まだまだ足りねぇ! 暇な奴は全員連れてこい。街中の雪かきには人数が足りねぇぞ!」

 そこで目をつけたのが元アンチのみなさんだ。
 体力だけはありそうな彼らに、お姫様が作ったチョコレートを食べられると嘘を教え、雪かきを手伝わせることにした。

 嘘も方便というか、どうせ分かりゃしないというか、少しでも世の中の役に立ってほしいというか、──まあそんな感じだ!

「働け、働いて己が価値を示せ。その働きによってのみ、お姫様からのチョコレートを頂戴できるのだ」

「「──うぉぉぉぉぉぉぉぉお!」」

「アンチでないみなさんも目的は同じ。お姫様からのチョコレートは、会が開催されなくては手に入らない! 今はアンチたちとも手を取り、雪かきを成し遂げるのだ!」

「「──うぉぉぉぉぉぉぉぉお!」」

 その結果、アンチはアンチを呼び、アンチだけでかなりの人数が集まっている。
 意図せずして兵士諸君に代わる兵力が、大量に手に入ったというわけだね! やったぜ!

 これには、前回の宣伝が上手くいきすぎたというのも関係している。
 お姫様の素が露呈した事件は瞬く間に拡散し、アンチたちのお姫様への評価が変わった。

 信者たちはあまり変化なしだが、アンチたちはお姫様に興味津々。彼らの中で偶像は膨れ上がり、お姫様は姫を通り越して、女神様くらいにはなっているのかもしれない。

「コンビニ前が終わったら、次は街中の雪かきだ。コンビニまでの道を作れ! いいか、労働無くしてチョコレートはあり得ない。実績のない俺たちがチョコレートを獲得するためには、女子に良いところを見せなくてはいけない。1時間で終わらせるぞ。かかれーー!」

 俺も大量に用意された雪かき道具を手に、白い足元に襲いかかる。雪かきを1時間で終わらせるためにーー!

◇◇◇

「あれも才能と呼ぶのか……」

「十分、才能だと思いますよ。誰にでも出来る事ではありません。普段からああ出来ないのが惜しいですが、見込みありだと思っています」

「確かにな。これは始まりか。まだまだ不甲斐ないが、手を貸し、期待をかける価値はあるか……」

「おや、何やら懐かしい感じですね」

「……今のは忘れてくだされ。今は執事にすぎないのですから」

「セバス殿も猫をかぶるのをやめられては? 昔の方が悪魔らしかったですよ」

「からかうな。そんな時代ではなくなったのだ。貴様も手伝いに行け、ニクス」
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