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始まりのバレンタイン
雪のバレンタイン ④
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あの男。また、せっかくのスピーチを聞いていない。というか、今度は姿すら見えない。
さっまで、そこら辺にいたはずなのに。さっきは少しだけ話に夢中だったけど。確かにいたはずなのに……。
これは、あたしの見せ場であり……いや、それ以上の意味は特にないんだけど。
前回の嫌な思い出もあるし、あんなやついないならいないで、別にいいんだけど!
ただ、用意したチョコレートは好評で、集まる人たちもみんな楽しそう。それなのに、1番の功労者がいないのだ。
会の進行も特に問題ないし、いたらいたで何かしでかしそうだし。けど、あいつにも一言宣言して欲しかった……。
『こんなイベントはこれからいくらでもある。バレンタインなど、始まりに過ぎない』
そんなようなことを隣で言って欲しかった。
おそらく似たことを言ったと思う。
それなのに……──どこいったのよ!
おかげでだいぶ予定が狂ってしまった。
本当は、スピーチの壇上で渡すつもりだったのに。
そうすれば最初で。そうすれば見本というか、恥ずかしさを誤魔化せたはずだったのに。
「はぁ……」
スピーチが終わってしまった今となっては、もう遅いのだけど。もう残すのは飲み食いだけだし。
これ、どうしよう……。どうやって渡そう。大丈夫だと思ってたから、他の方法なんて何も考えてない。
「姫さま。こっちも美味しいですよ。なくなっちゃう前に食べときましょうよ」
「ミルク。あなたずっと食べてるわね。それが目的の会なんだから構わないんだけど……太るわよ」
「!!」
まあ、その『太る』は一部分の話である気がしなくもない。
しかし、本当にどういう仕組みになっているのだろう。何か特別なことをしているわけでもないようだし。
栄養がそこにしかいかないのだろうか? まさかね。そんなことないわよね?
「あたしは少し出てくるから、ほどほどにしなさいよ。プロデューサーがいないんだから、自分でコンビニの宣伝もしなくちゃダメよ」
「……そう言われれば、プロデューサーさんはいませんね。姫さまに言われるまで、まったく気づきませんでした」
「……」
「どうかしましたか?」
「いえ、なんでもありません。あと頼むわよ」
これでは、ミルクからチョコレートを貰うのは無理ね。いなくなってることにすら気づかれてない。
チョコレート以下の興味しか持たれてなくては、バレンタインにチョコレートなど貰えるわけがないわ。
「姫。会場を離れられるのでしたら、誰か人を連れて行っていただきませんと。ミルクさん。申し訳ないですが姫と一緒に──」
「──必要ないわ。それよりあんたよ。それ、どうしたのよ。二クス、あんたそれで前見えてるの?」
何やら抱えに抱えて現れた二クスは、余計なことを言う。何も言わずに離れたらマズイと思ったのが失敗だった。
「いや、念のため見回りにと歩き回るたびに、どんどん増えていってしまいまして……。一度、これを置ける場所に戻ってきたしだいでして」
「わー、何ですかそれ。そんなに沢山。綺麗にラッピングされてますねー。何の贈り物ですか?」
ミルクが言った今ので、二クスが持ちきれないほど大量に抱えているモノの正体に気づいた。
「──ちょっと待って! それ全部チョコレート!? ニクス、あんたそんなに貰ったの!?」
「ええっ──、それ全部チョコレートなんですか!? なんて羨ましい……」
ミルク、そうじゃない。そうじゃないのよ。
問題はどうして二クスが、チョコレートを貰っているのかということなのよ。
チョコレートなんて今日までなかったし、バレンタインにチョコレートを渡すなんてことを知ってるわけが……。
「あっ、あたしだ!」
「「──何がですか?」」
思わず口に出てしまった。しかし、確かに自分だ。
そういえば、ルイから聞いたバレンタインのこと。あいつが作った、バレンタインの書なる物を読んで得た知識を。
バレンタインにチョコレートを贈るということの意味を説明した。誰にどういうふうにするのが、本来のバレンタインなのかを事細かに説明したわ。
今日この会場には、バレンタインの説明のスペースが存在する。今日ここに初めて来た人たちのために。
今日を経て来年は本来の、あいつが望んだバレンタインにするための、チョコレートを食べる会ではなくするためのスペースが存在する。
それを自分でまとめて。
より分かりやすく。
城の女の子たちに話した。
何故かと聞かれたから、これまではそんなことはなかったのに、みんなが話しかけてくれたのが嬉しくて、つい。
あの女の子たちがみんな二クスにチョコレートを渡したんだとしたら、あのくらいの量にはなる。そして……。
「ニクス。まさかそのチョコレートを貰ったりするところを、見られてはいないわよね?」
もう、口にした時点で分かっている。
だって、欲しかったものを自分は貰えず諦めていた男が、もしその現場を見てしまったらどうするのかを。
「それは誰に?」
「いない人よ。ずっと姿が見えないやつがいるでしょう」
「白夜さんでしたら会いましたね。声を掛けたかったのですが、ちょうど囲まれてしまいまして。気付いた時には、もう姿は見えませんでしたが」
「あー、だいたいわかった。もういいわ。きっと冷たくなっているわね。心も身体も」
ニクスも女の子たちにも悪気はない。
それが分かってるから、いなくなったのだろう。
今ごろは、膝を抱えてヘコんでいるのではないか?
「2人はつつがなく会を終わらせなさい。あたしの挨拶はミルクにあげるから、コンビニの宣伝に使いなさい。ニクスはそんなミルクのサポートしてね!」
「いや、急にそんなの無理ですよ。姫さまの代わりなんてできないで、──ちょっと本当に!? 私じゃ走っても追いつかない!」
「あのドレスで、この滑る足場を疾走ですか……」
さっまで、そこら辺にいたはずなのに。さっきは少しだけ話に夢中だったけど。確かにいたはずなのに……。
これは、あたしの見せ場であり……いや、それ以上の意味は特にないんだけど。
前回の嫌な思い出もあるし、あんなやついないならいないで、別にいいんだけど!
ただ、用意したチョコレートは好評で、集まる人たちもみんな楽しそう。それなのに、1番の功労者がいないのだ。
会の進行も特に問題ないし、いたらいたで何かしでかしそうだし。けど、あいつにも一言宣言して欲しかった……。
『こんなイベントはこれからいくらでもある。バレンタインなど、始まりに過ぎない』
そんなようなことを隣で言って欲しかった。
おそらく似たことを言ったと思う。
それなのに……──どこいったのよ!
おかげでだいぶ予定が狂ってしまった。
本当は、スピーチの壇上で渡すつもりだったのに。
そうすれば最初で。そうすれば見本というか、恥ずかしさを誤魔化せたはずだったのに。
「はぁ……」
スピーチが終わってしまった今となっては、もう遅いのだけど。もう残すのは飲み食いだけだし。
これ、どうしよう……。どうやって渡そう。大丈夫だと思ってたから、他の方法なんて何も考えてない。
「姫さま。こっちも美味しいですよ。なくなっちゃう前に食べときましょうよ」
「ミルク。あなたずっと食べてるわね。それが目的の会なんだから構わないんだけど……太るわよ」
「!!」
まあ、その『太る』は一部分の話である気がしなくもない。
しかし、本当にどういう仕組みになっているのだろう。何か特別なことをしているわけでもないようだし。
栄養がそこにしかいかないのだろうか? まさかね。そんなことないわよね?
「あたしは少し出てくるから、ほどほどにしなさいよ。プロデューサーがいないんだから、自分でコンビニの宣伝もしなくちゃダメよ」
「……そう言われれば、プロデューサーさんはいませんね。姫さまに言われるまで、まったく気づきませんでした」
「……」
「どうかしましたか?」
「いえ、なんでもありません。あと頼むわよ」
これでは、ミルクからチョコレートを貰うのは無理ね。いなくなってることにすら気づかれてない。
チョコレート以下の興味しか持たれてなくては、バレンタインにチョコレートなど貰えるわけがないわ。
「姫。会場を離れられるのでしたら、誰か人を連れて行っていただきませんと。ミルクさん。申し訳ないですが姫と一緒に──」
「──必要ないわ。それよりあんたよ。それ、どうしたのよ。二クス、あんたそれで前見えてるの?」
何やら抱えに抱えて現れた二クスは、余計なことを言う。何も言わずに離れたらマズイと思ったのが失敗だった。
「いや、念のため見回りにと歩き回るたびに、どんどん増えていってしまいまして……。一度、これを置ける場所に戻ってきたしだいでして」
「わー、何ですかそれ。そんなに沢山。綺麗にラッピングされてますねー。何の贈り物ですか?」
ミルクが言った今ので、二クスが持ちきれないほど大量に抱えているモノの正体に気づいた。
「──ちょっと待って! それ全部チョコレート!? ニクス、あんたそんなに貰ったの!?」
「ええっ──、それ全部チョコレートなんですか!? なんて羨ましい……」
ミルク、そうじゃない。そうじゃないのよ。
問題はどうして二クスが、チョコレートを貰っているのかということなのよ。
チョコレートなんて今日までなかったし、バレンタインにチョコレートを渡すなんてことを知ってるわけが……。
「あっ、あたしだ!」
「「──何がですか?」」
思わず口に出てしまった。しかし、確かに自分だ。
そういえば、ルイから聞いたバレンタインのこと。あいつが作った、バレンタインの書なる物を読んで得た知識を。
バレンタインにチョコレートを贈るということの意味を説明した。誰にどういうふうにするのが、本来のバレンタインなのかを事細かに説明したわ。
今日この会場には、バレンタインの説明のスペースが存在する。今日ここに初めて来た人たちのために。
今日を経て来年は本来の、あいつが望んだバレンタインにするための、チョコレートを食べる会ではなくするためのスペースが存在する。
それを自分でまとめて。
より分かりやすく。
城の女の子たちに話した。
何故かと聞かれたから、これまではそんなことはなかったのに、みんなが話しかけてくれたのが嬉しくて、つい。
あの女の子たちがみんな二クスにチョコレートを渡したんだとしたら、あのくらいの量にはなる。そして……。
「ニクス。まさかそのチョコレートを貰ったりするところを、見られてはいないわよね?」
もう、口にした時点で分かっている。
だって、欲しかったものを自分は貰えず諦めていた男が、もしその現場を見てしまったらどうするのかを。
「それは誰に?」
「いない人よ。ずっと姿が見えないやつがいるでしょう」
「白夜さんでしたら会いましたね。声を掛けたかったのですが、ちょうど囲まれてしまいまして。気付いた時には、もう姿は見えませんでしたが」
「あー、だいたいわかった。もういいわ。きっと冷たくなっているわね。心も身体も」
ニクスも女の子たちにも悪気はない。
それが分かってるから、いなくなったのだろう。
今ごろは、膝を抱えてヘコんでいるのではないか?
「2人はつつがなく会を終わらせなさい。あたしの挨拶はミルクにあげるから、コンビニの宣伝に使いなさい。ニクスはそんなミルクのサポートしてね!」
「いや、急にそんなの無理ですよ。姫さまの代わりなんてできないで、──ちょっと本当に!? 私じゃ走っても追いつかない!」
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