彼氏彼女の事情『ビッチと噂の黒川さんとお付き合いします!』

KZ

文字の大きさ
34 / 38

鬱陶しさと後悔と

しおりを挟む
 誤解しないでほしいのだけど「鬱陶しかった」と表現したのは、別にあれ、、だけ特別そうだというわけではないわ。
 私は大抵のことは鬱陶しいし気に入らない。
 それを表に出さないだけで裏ではそう思ってる。

 そんな私は何でも鬱陶しいから一人がいいし、概ね全部が気に入らないから一人がいい。
 でも、それでは人間関係もままならないから決して表には出さない。
 人付き合いは必要以上にちゃんとしてるつもり。

 その結果としての私の周囲からの評価はとても高い。私はちゃんと自分を押し殺せてる。
 周りは私をクールだとか言って、勝手に私を解釈してくれる。私はその解釈を肯定も否定もしない。
 どうでもいい人たちにどう思われようと構わないから。

 ……私がこんな話をするのは貴方が二人目。
 一人目に同じような話をしたのは誤解されては困るからで、貴方に話すのは誤解されたくないから。
 二つは同じようでまったく違う。

 そしてどちらも必要だからしたはずなのに、私はきっと話したことを同じように後悔すると思う。
 だけど、聞いてほしい。
 また余計なことをしたと後悔している女の話を……。

 後悔とは生きている誰しもが経験すること。
 もれなく全員が多種多様に抱えるものだと私は思う。
 人間がそんな後悔をする時というのは目の前に二つの選択肢があって、選んだ方の選択肢が間違いだったと気づいた時だ。

 そして物事には必ず二つの選択肢がつきまとう。
 右か左。はいかいいえ。するかしないかなどなど。
 つまり人間は二分の一の確率で、どうやっても後悔しなくてはいけない生き物なのだ。

 まぁ、小さな後悔ならきれいに忘れることができるし、次の瞬間には気持ちを切り替えることが可能でしょう。
 そうやって人間は日常にある後悔に折り合いをつける。そうして生きている。

 しかし、中には後悔を消すことができない事柄が存在する。そしてそれはどうしようもないくらいに取り返しがつかない場合が多い。

 例えば、意中の人からのラブレターに気づかなかったり。
 例えば、必要もないのに余計なことをして怪我をしたり。
 例えば、そんな気もないのに安請け合いをしたり。

 私の抱える取り返しのつかない後悔は、すでに精算したものを除くとこの三つ。
 一つだって間違えたくない事なのに、私はその全てを間違えた。
 余計なことをしたと後悔している……。

 正しい方を選んでいれば私はきっと幸せだっただろう。
 正しい方を選べていれば後悔なんて感じていないだろう。
 正しい方がわかっていればそっちを選んだだろう。

 ──なんて、この「だろう」たちに意味がないことはわかる。
 私は間違えたから正解だった、、、はずの選択肢がよく見えるだけだ。本当に意味がない。
 考えるべきは間違えた先。後悔の先なんだとわかってはいるのよ……。

◇◇◇

「──向かいに越してきた黒川くろかわです。美咲みさきちゃん。ウチの子と仲良くしてあげてね」

 これは小学校の低学年の頃の話。
 斜め向かいの家に引っ越してきた黒川さんという家には私と同じ年齢の女の子がいて、向かいの家で同い年だからか仲良くしてと頼まれた。

 それに私はどんな子なのかもわからないまま。
 大人の人に頼まれたから。
 母親にも同様に言われたから。
 本当はそんな気などないくせに「うん」と返事をした。してしまった。

 今の私なら「仲良くする気なんてないから無理です」と言えただろうが、この当時の私にはできなかったのだ。
 はっきり嫌だと言えなかった。これが後悔の一つ目。

 この引っ越しの挨拶に本人はいなかったが小学校が違うと聞いていたし、学校が違うということは遭遇しないようにすればいいのだと私は高を括っていた。

「──みさきちゃん?」
「……だれ?」

 そう話しかけられたのは何日かあとのこと。
 帰りのバスを降り、バス停からそう遠くない家に向かい歩き出した時だ。
 前からきた知らない女の子に話しかけられた。
 金髪で瞳の色も私とは少し違う女の子だった。

「やっぱりみさきちゃんだ!」
「だからだれなのかって、」

 女の子は黒川くろかわ 美雪みゆきと名乗った。
 黒川と聞いて思い出したのは向かいの家の同い年の子。朝は学校まで親に送ってもらうと聞いていた子のことだ。
 その帰りがどうなのかなんて遭遇するまで気にしてなかった。

 私たちは地域に二つある小学校のどちらからも家が遠く、どちらでも大差がないので好きな方を選んで小学校に通っていた。
 だけど学校から遠くなるにつれ子供の数は減り、近所の子供となるとさらに減り、同学年で帰り道まで同じなんて子供は彼女くらいだった。
 
 加えて家も向かいでは遭遇するなというのも無理があり、毎日のように帰り道にあとをついてくるオマケができてしまった。
 鬱陶しかったし拒絶したかったけど、この当時の私にはできなかった。
 帰り道にあとをついてくるだけだし気にしないでいようと私は決めた。

「みさきちゃん。みさきちゃんってば!」
「……話しかけてこないでって言ったでしょう」
「えーいいじゃん」
「よくない。ついてくるなとは言わないから、少しはなれて歩いて。そして話しかけないで」

 しかしある時。私は余計なことをした。
 目立つ見た目をからかわれていた彼女を柄にもなく助けてしまったのだ。
 別に彼女に好かれようととか、仲良くしようとか考えたわけではない。

 ただその様子が気に入らなくて、見ていて鬱陶しかったからそうしただけなのに、彼女は私に懐いてしまった……。

 その上、それを親に話すものだから「仲良くしてあげてね」は「仲良し」に変換され、私が違うと言ってももう取り返しはつかなかった。

 これは互いに別な中学にいっても変わらず、そんな話をした覚えはないのに部活も同じで、大会やら何やらでも顔を合わせるようにまでなってしまった。

「──美咲ちゃん。高校どこいくの? 噂だけどスカウトされたって本当?」

「黒川さん、もう一人で家まで帰れるでしょう。どうして未だに私についてくるの。こないだ話したわよね、鬱陶しいって」

「えー、いまさらじゃん。それに朝と帰りしか喋ってくれないんだからしょうがないじゃん。それより進路は? やっぱ陸上の強いとこ?」

「……貴女こそどうなのよ。部活を引退してからは遊びに忙しいようだけど進路は大丈夫なの。他人の心配してないで自分の心配したら」

「うっ、痛いところを……」

 私が陸上を始めたのは部活動はどこかには入らなければならず、かと言って鬱陶しいのも嫌だったからだ。
 陸上競技ならつまるところ一人で行うわけだから、余計な関わりを持ちたくない私には合っていた。

 それに、やっただけ結果がついてくるのも面白かった。
 頑張った結果が誰かの目に留まり、彼女が言ったスカウトまでされるとは思わなかったけど、された私は単純に嬉しかった。

 だから、余計なことをした……。

 三年は引退して受験というのが普通だけど、誘いを受けていた私はそのまま部活を続け、柄にもなく必要もないのに頑張ったりして怪我をした。
 これが後悔の二つ目。

「おはよう美咲ちゃん。最近、朝も帰りも会わないなと心配してたんだけど、どうかした?」
「……別に。受験で忙しいだけでしょう」
「美咲ちゃん、受験すんの。スカウトは?」
「そんなのなかった。それだけよ」

 私はその後悔をどうするのかを考えて決めた。
 推薦ではなく一般の入試で同じ学校にいき、怪我を治して陸上部に入ると決めた。

 余計なことをしなければ必要なかった努力をし、しかしこれを成した私は後悔に対する答えを得た気がした。
 取り返しはつかないけど、やり直すことは可能なんだと理解したからだ。

 だけど、後悔の三つ目は取り返しもやり直しも効かないじゃない。
 私はどこをどう間違えて、こんな気持ちにならないためにはどうすればよかったの……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...