連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

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天使のホワイトデー

もう1人のお姫様

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♢6♢

 あ、頭が痛い……。ガンガンする感じだ。
 どこかにぶつけたんだっけ?
 というか、俺は何をしていたんだっけ?

 そういえば……なにかフニフニしたものを触っていた気がする。プニプニだったかもしれない。
 とても良い触り心地のものを、触っていたような気がするな。そして今も、何か柔らかい枕で横になっているようだ。

 んっ? 枕があるということは、俺はいつのまにか寝ていたんだろうか。横になっていたんだから、寝てのは間違いなのだろうが。
 はて? いつ寝たのか。何故、頭が痛いのか……。

「おや、お目覚めですか」

「誰だ、お前は……」

「いけませんね。やはり頭を打っていたんでしょうか」

「──というか、俺はなんで膝枕されてんだ!? 男に膝枕されて目覚めるとか最悪だと思う!」

 自分のおかれている状況を理解した瞬間、思わず飛び起きてしまった。
 しかし、目を開けたら目の前に知らない野郎の顔があって、それに膝枕されているという状況だったら、誰だって同じ反応をすると思う!

 ……いや、こいつは知らない野郎ではなく、ニューイケメン。さっき名前も聞いた。
 だんだん、いろいろと思い出してきたぞ。

「キミはナナシくん。だったよね?」

「覚えているということは大丈夫そうですね。よかった、よかった」

「アレからどうなった。今何時?」

 アレというのは悪魔と天使のバトル。
 女子対女子による、ルール無用のガチバトルのことだ。
 確か必殺技が発動する前に止めたはずなんだが、その最後を覚えてない。どうなったんだ。

「あれから大して時間も経っていません。プロデューサー殿は、20分くらい意識を失っておられましたけどね」

 そんなにという程ではないか……──そうだ、そうだよ!
 女子たちにダブルパンチをもらって、俺は意識を奪われたんだった。頭が痛いのは物理的な衝撃によるものだ。

「で、そのお姫様たちは。バトルは終わったよな。ちゃんと止めたよな!?」

「はい。2人はそこで叱られてますよ」

 どうやら俺はバトルの行われていた庭の、無事だった部分に運ばれていたようだ。バトルの中心から離れた、庭の四隅は比較的無事だったみたいだな。
 というか無事なのは、庭の四隅と城だけか……。

「どうして顔を合わせるたびにこうなるんですか! 毎度、毎度──」

 ──二、ニクスが怒っている!
 その相手はもちろん、バトルによって庭をめちゃくちゃにした女子たち2人だ。
 あのイケメンが怒るなんて珍しい。いや、怒ってるとこなんて初めて見た……。

 お姫様たちは地面に正座させられ、怒れる二クスに叱られているようだ。近くには王様もいるが怒ることなく、ショックだったのかただ項垂れている。
 バトルの一番の被害者は王様だな。趣味の庭がこの有様ではね。まあ、俺のせいではないからいいや。

「今さ、毎度と聞こえたんだけど。毎回、彼女たちはこんなバトルをしているのかい?」

 直視できないくらいに怒れる二クスさんが言った、気になる一言。毎度というワード。
 毎度って毎度? まさかね! そんなわけが──

「ええ、顔を合わせるたびに。それも、互いの成長に比例して年々被害は大きくなっていますね」

「……誰か止めろよ」

「昔は微笑ましくあったんですが、今日のは笑えませんね!」

「──笑ってんじゃねーか! 年齢と共に戦闘力も増してるなら止めよう。最終的には死人が出るよ?」

 あのバトルを、顔を合わせるたびにやられてはたまらない。ニクスにはしっかりと説教してもらおう。
 それにしても異世界だねぇ。女子2人がバトったら、だだっ広い庭がメチャクチャになってしまうんだからね。

「あの2人は、なんで仲悪いんだ?」

「ことあるごとに衝突してきたからですかね? 最初はどちらの身長が高いとか、そんな些細な争いだった気がします。それからは何かと競い合い、いきついたのが喧嘩ですね」

「……あれは喧嘩ではないだろう。バトルマンガみたいになってたよ。しかし、なるほどね」

「?」

「俺は、お姫様があんなに本気なのを初めて見た。それだけの相手だということだろう。それに、殴り合いの喧嘩ができるヤツがいるとも知らなかった。アホの子疑惑は拭えないけどな」

 お姫様らしいお姫様をやってきたルシアに、友達と呼べるヤツは少ないはずだ。俺が会ったことあるのは1人だけだし。城の中にはいないしな。
 俺の幼馴染と妹も友達にカウントしても、指の数にはならないと思う。そんなお姫様にも幼馴染がいたようだ。

「ナナシくん。ところで、この惨状の請求書はどこに出せばいいんだ?」

「あー、こちらで何とかなりませんか?」

「なるわけねーーだろ! お姫様が壊した分は仕方ないが、主な破壊の原因は天使ビームだからな。煽ったのも向こうだし。7割くらいは天使が悪い!」

「わかりました。姫のせっかく上がった株を落とすのは可哀想ですが、自分が悪いんだからしょうがないですよね。後で連絡しておきますので」

 そう言って取り出されたのは悪魔の携帯電話。
 アレ、どういう原理で繋がってるんだろうね。俺も自分ので試してみたけど普通に圏外だったぜ? こわいわー。

 つーかさ、悪魔と天使が一緒にいるってのも何? そんなことある? あと姫って言わなかった?

「ねぇ、天使は姫なの。アホの子じゃなくて?」

「ええ、ルシア様と同じように姫ですね。国交が正常化する以前からの幼馴染にしてライバル。そんなところですかね」

 えっ……ちょっと待って。
 この執事。今すごいこと言わなかったか?

『この世界はごく最近まで、種族間の争いが絶えなかったらしい。だが、その争いも王様始め、おっさんたちの活躍で集結し今日がある。もう戦う必要はなくなった。ウンタラカンタラ──』

 今のはかつての俺の台詞だ。で、この台詞の種族間という部分が問題だ。
 まさか天使と悪魔なの。争ってたのは?

「ねぇ、ナナシくん。ボクね。いろいろとあんまり詳しくないんだ。でね、1つ質問なんだけど。国交が正常化する以前ってさ。戦争してたじゃん? それってさ、天使と悪魔だったりする?」

「おっしゃる通りですね。やはりというか、プロデューサー殿は何も知らないのですね」

 考えうる最悪の展開! そんないつのことだか分かんないような戦争が起きていた。だと!? ゲームかよ。
 しかし、それはもう終わったらしいし。なら、俺には関係ないよね? ただのプロデューサーだし。

「よく分かった。もう、この話は終わりにしよう。天使も姫。それだけ分かればいい気がする。じゃあ俺も説教しに行ってくる!」

 戦争とかバトルとかには、俺は極力関わりたくない。普通の人間にそんな展開は嬉しくない。
 それに何より俺のやりたいこととは真逆だしね。


 ※


「パパも怒ってないのに、どうしてあんたが一番怒ってるのよ!」

「ごめんなさい。足痛いからもう許してください」

「──謝るな! 認めたことになるわよ」

「足痛いのよ。アタシはもうムリ……」

 いい加減、大人しく説教されるのが嫌になったらしいお姫様が二クスに反発する。悪い事した自覚なしと。
 天使は反発しない。というのも、正座で足が痺れたのかピクピクしている。

「誰も叱る人がいないから、私が叱っているんです!」

 普段は見せないニクスの激おこに、流石のお姫様もたじろぐ。ちなみに俺も口を挟めないでいる。
 こえー、今日はイケメンがこえー。

「特に城門。あれが一番問題です。復興を成すべきところの、一番目につくところが壊れているとか……」

 まあ、そうだよね。入り口から派手にぶっ壊れてるもんねー。労働力が足りないって話をさっきしてたばかりだからねー。
 まして大工は……いや、いるな。大工。

「ニクスくん。城門の修理の件は俺に任せてほしい。だから、そこの女子2人はもう許してやってくれ」

「しかし、白夜はくやさん。言うべきことを言わないと、この2人はまたやりますよ」

「それは困る。しかし、今の2人の格好とかも正直困るんだ。ほら、いろいろ破れて、見えてはいけないところとかチラチラ見えてるし。姫2人がこれはマズくないかな?」

 助け船を出したつもりなのに、『キッ』とダブルお姫様は俺を睨みつける。
 彼女たちの足が痺れてなかったら、また殴られていたような気がするんだけど……何で?

「くっ、人間風情に助けられるなんて。でも、もう限界……」

「あの何も覚えないような顔がムカつくけど。流石にもう限界……」

「「ごめんなさい。もうやらないから許して」」

 痩せ我慢をしていたお姫様も慣れない正座には耐えられなかったらしく、もう諦めていた天使に続き、ルシアも謝った。
 本当に反省しているのかは分からないけど。

「分かりました。これで終わりにしますが、次にこのようなことがあった場合は、分かりますね?」

「「……はい」」

 どうやら二クスのお説教は終わりらしい。俺も何か言おうかと思ってたが、やめよう。
 何か視線が怖いからさ。助け船を出したのに……。

「ナナシくん、出番だよ。その小汚い天使を運んで着替えさせて。ニクスは同様にお姫様をお願いね。 ──そしてテメェら! お姫様たちにいやらしい視線を向けてないで、さっさと片付けろや! 後でしばきまわされるぞ。嫌ならやれ、直ぐに取りかかれ!」

「あんたも覚えてなさいよ……」

「アンタを一番最初にシバく……」

 何故、俺はこんなに憎まれているのだろう。それも2人ともにだ。
 今日は何もした覚えがないんだが。むしろ巻き込まれたのに文句も言わず、助けてやったのに。なんでなの?

「ところでプロデューサー殿はどちらに?」

「この惨状の修理を頼みに行くんだよ。法外な金額を取られそうな、悪魔な業者を使わずに済むようにな」

 俺はボラれる悪魔たちではなく、真っ当な大工さんに修理を頼みに行きます。
 というわけで城下に行きます!
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