連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

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天使のホワイトデー

そしてホワイトデーへ ②

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 ドラゴンがいてそれを倒す。
 そしてその素材が手元にある。
 そしたら普通、ドラゴン装備を作るよな。
 逆に作らない理由がないよな。この気持ち分かるよな?

『いくわよ』

『──アタシ、やるって言ってない!』

 ドラゴンの食べられない部位すら、無駄にしないという精神からくるエコな考え。環境にも優し……くはないか。とにかく。ドラゴン装備は作るよな。

 それに装備自体に悪いところはない。
 悪いのは使うヤツ、作ったヤツ、作らせたヤツだ。
 この中で俺の思う一番悪い人は、最後の人かなー。つまり俺かなー。

『てりぁぁぁぁあ──』

『くっ──、集束・天使の光!』

 ああー、バトルが始まってしまった。
 ドラゴン装備を着込んだお姫様対、前回から特に変化のない天使ちゃんとのバトルが……。

『何その装備!? そんなのどっから持ってきたのよ!』

『プロデューサーの部屋からよ。作らせたはいいが使えない。それで調度品にするのは勿体ないでしょう!』

『レ、レートのバカーーーー!!』

 お姫様が剣を構えて天使との距離を詰める。
 飛んでくる沢山の天使ビームは、盾と鎧が防いでくれる。兜もあるから防御力は高い。
 ドラゴン装備は超重くて俺は装備出来ないんだけど、物理な姫には関係ないらしい。

『ミカ、本気でやりなさい。いつまでそうしているつもり!』

『ルシアもバカ! なんで、今闘わなきゃなんないのよ!』

『結局、あたしたちにはこれなのよ。分かったら本気を出せ! ミカエラ!』

 まず鎧と盾。これはドラゴンの素材から作られたため、耐熱性に優れており火とかを防げる。
 日常の中に火を吹く生き物がいるのかというといないけど、ここは異世界。俺の行動範囲は主に安全な城だけだけど、ここは異世界。
 何かあるかもしれないし、カッコいいじゃんドラゴン装備。

「……またか。また、貴様か……」

「すいません」

「あれか、余計なことをしないと気がすまないのか。いらないことをしないと死んだりするのか? ──どうなんだ!」

 お姫様が使用しているドラゴン装備が、俺の主導で作られたことが妹にバレた。
 そんなわけで現在、俺は正座させられお叱りを受けている。あと、前回縛られたのは解かれてはいない。

「すいませんでした。わたしが作らせました。調子に乗っていました」

 ここは全力での謝罪しかない。
 すげーー、近くで行われている、あの本気バトルに巻き込まれようものなら死ぬ。ラッキースケベでも死ぬ。

「今からでも遅くないから2人に割り込んで死ね」

「本当に死ぬんで勘弁してください。お願いします」

 前回、お姫様は天使ビームに苦戦していた。あの時は、お姫様は生身だったし仕方ない。ミカの天使ビームは反則だし仕方ない。
 お姫様は生身でビーム防いでいた気もするけど……──まあ、いいよね! 気にしないでいこう!

『天使の光ではダメか……』

『ダメよ、真面目にやれ! さもないと叩き斬る!』

 しかし、今回はドラゴンの鎧と盾がある。これが天使ビームを防いでいる。
 ビームを防げれば楽にミカに近寄れ、ドラゴン素材の剣の届く距離になる。

「あれはどこのバトルものなんだ? これは誰のせいだ? 言ってみなさい」

 一愛いちかちゃんはめっちゃ機嫌が悪い。
 顔はずっと笑っているが、目は一瞬たりとも笑っていない。これはガチでヤバい。

「加工屋のせいです。あんなもん作ったヤツが悪いと思います」

 これは認めたらバトルに突入させられる。そしたら死ぬ。だから絶対に認めない。
 加工したヤツに罪をなすりつけてでも、この場を乗りきるしかない。

「……もう一つ前の段階があるよね?」

「おっしゃる意味が分かりません。あと、今回は城も壊れないんで、バトルしようといいんじゃないかとも思います」

「はぁ……」

 一愛に呆れられたところで、今起きていることを説明する。まず、今回の姫たちのバトルでは城は壊れない。修復中の城門に庭もだ。
 何故かと言うと、彼女たちの現在の状況が関係している。

「イケメンの人。本当に2人は大丈夫なの?」

「ええ、セバス殿直々の術ですので問題ありません。喧嘩も日常茶飯事なのでそちらも大丈夫です。見守りましょう。姫には何か考えがあるようでしたから」

 姫たちは現在、1.5センチのミニチュアとなって闘っているからだ。これはセバスの仕業。
 バトっているテーブルには防御柵が設置されている。これは二クスの仕業。

 まとめると悪魔たちの悪魔スキルにより、大変不可思議な現象がいくつも起きている。以上だ。
 悪魔の悪魔スキル。これにより、お姫様たちには暴れてもいい場所が用意されたとだけ理解してくれればいい。

「おじいちゃん。確認するけど、ちっちゃくなっているのは10分だけなんだよね?」

「そうだ。それ以上は術がもたん。それまでには決着がつくだろうがな」

 ああ、時間制限も付いている。10分しか小人にはなっていられないらしい。
 その間に決着をつけるところまでいくようだ。だから、お姫様は最初から全力なのだ。

「おじさんたちは心配しないの?」

「……」

「我はせん。アレは強い。ルシアには悪いがミカエラが負けることはあり得ん。それがルシアを怒らせているのだろうが、それもこれまでであろう」

 王様は何も言わないがその顔には心配が見て取れる。ミカエルのおっさんは聞いた通りだ。
 以上の6人が、テーブルを囲んでお姫様たちのバトルを見守っている。
 他はに後片付けを進めてもらっている。

「ルシアちゃん……」

「仕方なきこと。ルシアは未だ己が力を使えんのだから。万全に使えるミカエラに勝てる道理はない」

 そう……らしい。お姫様が悪魔らしくないのはそのせいだ。
 逆にミカは羽根にビームと天使らしい力を使う。あのビームが天使らしいのかは知らないがな。

「ルシアのことだ。前回から気付いていたはずだ」

 でも、ミカは対等な条件で闘った。羽根も使わず。
 まあ、ビームはバンバン使ってたけどね! つまり、前回も本当ならミカが勝っていたということだろう。

「ミカエラはミカエラで、ルシアに気を使ってらしくないことをしていた」

 ミカは手を抜いていた。これはライバルからしたら屈辱でしかない。ブチ切れられても仕方ない。
 あと1回変身できるのを隠していたわけだからね。

「ところで誰かこの縄を解いてよ。俺はいつまでこのままなのよ。もうバトルは始まってしまったんだから、俺の出番はないよ?」

「役立たず……」

「えー、俺はどうしたらよかったのよ」

「身をはって止めたらよかったんだよ!」

「──いや、死ぬし。それにな、これは結果の見えた闘いなんだろう? それを分かっていてルシアはやってんだろ。らしくなく装備まで着込んでだ。一愛、あいつは勝ちたいからやってんじゃないんだ。見たいんだよ、ミカの本気ってやつを」

 おそらく決めていたんだろう。
 ミカエルのおっさんの見立てが確かなら、前回のバトルから。何も言わなかったけど、機会をうかがっていたんだろう。

 しかし、いざこざは予想外だった。ミカの怪我もか。でも、そのどちらともが解決した。
 あとはイーブンな状態に戻してからのバトル。これが、お姫様の筋書きなんだろう。

「──何を分からんことを! これはバトルものじゃないんだ。そんなバトル理論が通じるか!」

「バトル理論じゃないよ。これは幼馴染の理論だ」

 知らぬ間についた差を理解したいんだろう。
 俺も幼馴染大明神様のお菓子作りの腕前には度肝を抜かれたから分かる。
 俺も『知らないうちにこんなことになってたのか!』と思ったからな。それを本人に言いはしないけどね!

「やはり身体をはって2人を止めてもらうか……」

「まだ続きがあんだから聞けよ! 今、いい感じだったじゃない。早計だよ。早まりすぎだって!」

「れーとをバトルに投入するから手伝って。 ──早く!」

「おい、何を一愛に唆されてんのよ。やめて! 特にセバス! 呪文を唱えんな!」

 いかん、セバスが謎の呪文を唱え始めた。すぐに悪魔スキルが発動する!
 小さくなったらどうにもならなくなる。
 最後まで黙っていようと思っていたんだが、背に腹はかえられぬ……すまないお姫様。

「待て一愛! このバトルにはちゃんとオチがあんだよ」

「……オチ?」
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