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天使のホワイトデー 後編
ホワイトデーまで。あと少し。
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♢10♢
俺と二クスのカードバトルから数日後。
いよいよとなったホワイトデーを前に、先月と同じ場所でアレがついに開催される。そう──
「はい、お待ちかねの第2回。ルイちゃんのお菓子講座です。今回はクッキーを作ります。みなさん拍手!」
前回のように記録係としての参加である俺。
撮っておいて損はないので、クッキーが出来るまでの様子をビデオカメラで撮影していく。
では、調理が始まる前に他の参加者を紹介しよう。
「零斗。別に撮るのはいいけど、お前も一応手を洗ってこい」
まずは、お菓子作りといえばこの人。
幼馴染大明神様ことルイちゃん。
バレンタインに続き、今回もお世話になります。
「お姉ちゃん。違うよ。そこは、『私を撮影したいなら綺麗な身体にしてきなさい。でないと指一本触れさせないわよ』って言わないと」
……次によく分からない発言をしている、我が妹の一愛ちゃん。
ここ数日、彼女は大変ご機嫌なので、それに伴い頭がゆるくなっているのだろう。大目に見てあげてほしい。
「ねぇ、こう? これであってる?」
最後にエプロンをつけようと四苦八苦している、天使ことミカエラちゃん。
何故、彼女は見本が近くにあるのに、自己流でエプロンをつけようとしているんだろう。どうしたらああなるんだろう。
「ミカちゃん。違うよ。まずは服を脱ぐんだよ。それで、裸にエプロンをつけるんだよ」
「そうなのね。んしょ──」
何を考えているのか一愛は嘘を教え、ミカはそれを素直に聞き入れる。
おかしいと考えもせず、普通に服を脱ぎ始め……。
「「──ちょっと待て!!」」
調理道具を用意しているルイとハモった。
だってスルーはできないよ? 止めないと本当に脱いでいたかもしれないよ? そうなったらなったで困るよ。
「ルイ、彼女にエプロンの正しい着用方法を教えてあげて。そして一愛! お前は何を考えているんだ。どういうつもりでそんな嘘を言う」
「れーとへのサービスだよ。ミカちゃんは素直だからやってくれるよ?」
「そ、それで俺が喜ぶとでも」
はっきりと否定はできないのが苦しいところです。
若干、『もったいなかったか』と思わなくもないです。
「流石にお姉ちゃんは無理だよ。せめて2人きりにならないとね。2人の時に言ってみな。なんやかんや、やってくれるかもしれないから」
こいつはどうした……。
いや、本来こういうヤツなんだ。
俺は厳しく接しているつもりだが、ルイが案外甘いし。天敵がいない現在、一愛を止めるのは大変かも。
こんなことなら天敵を用意しておくんだったな。
「とにかく! 以後はいらんことをせずにクッキーを作りなさい」
「はーい」
分かったのか。分かってないのか。
どうにも判別しにくい返事をして、妹もミカにエプロンのつけ方を伝授しにいく。
「まったく。もし、この場にお姫様がいたらと考えたら……。まあ、俺が被害を受けていただろう」
本日、お姫様は不在である。
理由はホワイトデーされる側のお姫様が、ホワイトデーのお返し作りに参加するわけにはいかないからです。
そういう意味ではルイもお姫様と同じなんだけど、俺たちだけでクッキーなんて作れないしな。
一応言っておくが、一愛に期待しているなら無駄だよ。アレは食うのが専門だから。
できないとまでは思わないけど、やろうとはしないからね。そういうのを見たこともないからね。
「よし、完成ね」
「ミカちゃん。似合ってるー」
「そ、そう?」
「嘘だよ」
「──嘘なの!?」
「嘘だよ。似合ってるよ」
おっ、ようやく全員の身支度が整ったようだ。カメラのスタンバイも、これで良し!
「準備はできたようだな。では、始めてください」
「手を洗ってこい。何度も同じことを言わせるな」
「そうでした」
よし、じゃなかったね。
将来の夢はお菓子屋さんのルイちゃんは、お菓子のことになるとマジなので指示に従います。
さもないと追い出されると思うので。それも暴力的に。
※
で、今日のクッキーについてだが、これは異世界に広めるためにではなく、あくまでミカからお姫様へのお返しのために作るということだ。
よって、クッキーの材料は市販のものが大半を占める。よって、材料調達クエスト等は発生しない! やったぜ!
どうしてお返しがクッキーなのかというと、作りやすいからに他ならない。
ホワイトデーまでで今日しかルイは予定が合わないし、1回習ってミカ1人でやれというのも無理があるだろう。
ならお菓子は、『手伝ってもらって』と最初に付いたとしても、作る気なら作ってしまうべきだとなったわけだ。
それに今日で、クッキー作りは終わらせないといけないという都合もあるんだ。
実はルイだけでなく、俺たちも忙しいからね……。
ミカは覚えることがたくさんあるし、まだ完成してないし。何より覚悟が必要だし。俺も打ち合わせとか、交渉とかあるんだ。
だいたい分かってきたと思うけど、時間が足りないや。企画から実行までの期間が短すぎる。
だから、『全部をプロデュースするのは不可能だ!』という結論に俺は至った。
なので、当日読む原稿はお姫様に頼んだ。
主役自らにやらせるのはどうかと思うけど、人手というか全体的に出来るヤツが足りない。脳筋しかいないし。
二クスではないが人材の確保は重要らしい。
ホワイトデーの後は、そこら辺を重要視しようと思っている。
しかし、今は目の前のことだ。重要なところから、1つずつ確実に達成していかなければ。それが一番の近道であると信じて。
「お姉ちゃん。クッキーってどうやって作るの?」
「えっ、一愛ちゃん。そんなレベルからなの」
思わず参加者のレベルの低さに驚いてしまった。
ミカが分からないのは当然だとして、いつも食べてるヤツが分からないとは。
なんだと思ってクッキーを食べているんだよ。
えっ、クッキーはクッキー?
そういうことではなく、こう……。
「なんだよ。じゃあ、れーとはわかんのかよ?」
「バカにするなよ。チョコレートを作れる俺に、そのくらいのことが分からないわけがなかろう」
と、口では言ってはいるが実際は分からない。なんか粉を使っているとしか分からん。妹の前で知ったかぶっただけだ!
「ふーん。なら材料を言ってみろよー」
「いいだろう」
だけど、どうせなんとか粉だろ? それに砂糖と卵。それらを混ぜて焼くだけだろ。
こな、粉。小麦粉……かな?
「小麦粉だ!」
これだ! 間違いない!
ホットケーキミックスかとも思ったけど、あれはいろいろ混ざってるやつだとバレンタインの時に聞いた。となれば、混ざっていないもの。つまり小麦粉に違いない。
「──違う、薄力粉だ。知ったかぶんな」
「「あははは──、かっこ悪い──」」
一瞬で違うと言われ、これでもかというくらいに笑われた。
粉はあっていたのに……。お前たちも知らないくせに。
「2つはどう違うの? 今後のために教えてください」
「薄力粉も小麦粉は小麦粉だが──」
「小麦粉なんじゃねーか! なんで違うって言ったんだよ! オマケで正解にしてよ」
「そんなわけにいくか。小麦粉と薄力粉は違うんだから、違うんだよ」
お菓子のことになると融通が利かない子ねーー。
この子は昔からそういうところがあるけど、お菓子になると本当に融通が利かない。
「ルイ。レートはいいから始めましょう」
「そうだよ。時間がもったいないよ」
今ので俺の威厳は失墜したらしい。
確かに、俺も何も知らないヤツのことなど適当にすると思う。それでもね、悲しいね……。
「あまりいじめてやるな。2人も分からなかったろ?」
「それは……」「……そうだけど」
やはり頼れるのは貴女だけです。
なんやかんや優しいです。融通が利かないとか思ってごめんなさい。
「分かればいい。じゃあ、始めるか」
俺と二クスのカードバトルから数日後。
いよいよとなったホワイトデーを前に、先月と同じ場所でアレがついに開催される。そう──
「はい、お待ちかねの第2回。ルイちゃんのお菓子講座です。今回はクッキーを作ります。みなさん拍手!」
前回のように記録係としての参加である俺。
撮っておいて損はないので、クッキーが出来るまでの様子をビデオカメラで撮影していく。
では、調理が始まる前に他の参加者を紹介しよう。
「零斗。別に撮るのはいいけど、お前も一応手を洗ってこい」
まずは、お菓子作りといえばこの人。
幼馴染大明神様ことルイちゃん。
バレンタインに続き、今回もお世話になります。
「お姉ちゃん。違うよ。そこは、『私を撮影したいなら綺麗な身体にしてきなさい。でないと指一本触れさせないわよ』って言わないと」
……次によく分からない発言をしている、我が妹の一愛ちゃん。
ここ数日、彼女は大変ご機嫌なので、それに伴い頭がゆるくなっているのだろう。大目に見てあげてほしい。
「ねぇ、こう? これであってる?」
最後にエプロンをつけようと四苦八苦している、天使ことミカエラちゃん。
何故、彼女は見本が近くにあるのに、自己流でエプロンをつけようとしているんだろう。どうしたらああなるんだろう。
「ミカちゃん。違うよ。まずは服を脱ぐんだよ。それで、裸にエプロンをつけるんだよ」
「そうなのね。んしょ──」
何を考えているのか一愛は嘘を教え、ミカはそれを素直に聞き入れる。
おかしいと考えもせず、普通に服を脱ぎ始め……。
「「──ちょっと待て!!」」
調理道具を用意しているルイとハモった。
だってスルーはできないよ? 止めないと本当に脱いでいたかもしれないよ? そうなったらなったで困るよ。
「ルイ、彼女にエプロンの正しい着用方法を教えてあげて。そして一愛! お前は何を考えているんだ。どういうつもりでそんな嘘を言う」
「れーとへのサービスだよ。ミカちゃんは素直だからやってくれるよ?」
「そ、それで俺が喜ぶとでも」
はっきりと否定はできないのが苦しいところです。
若干、『もったいなかったか』と思わなくもないです。
「流石にお姉ちゃんは無理だよ。せめて2人きりにならないとね。2人の時に言ってみな。なんやかんや、やってくれるかもしれないから」
こいつはどうした……。
いや、本来こういうヤツなんだ。
俺は厳しく接しているつもりだが、ルイが案外甘いし。天敵がいない現在、一愛を止めるのは大変かも。
こんなことなら天敵を用意しておくんだったな。
「とにかく! 以後はいらんことをせずにクッキーを作りなさい」
「はーい」
分かったのか。分かってないのか。
どうにも判別しにくい返事をして、妹もミカにエプロンのつけ方を伝授しにいく。
「まったく。もし、この場にお姫様がいたらと考えたら……。まあ、俺が被害を受けていただろう」
本日、お姫様は不在である。
理由はホワイトデーされる側のお姫様が、ホワイトデーのお返し作りに参加するわけにはいかないからです。
そういう意味ではルイもお姫様と同じなんだけど、俺たちだけでクッキーなんて作れないしな。
一応言っておくが、一愛に期待しているなら無駄だよ。アレは食うのが専門だから。
できないとまでは思わないけど、やろうとはしないからね。そういうのを見たこともないからね。
「よし、完成ね」
「ミカちゃん。似合ってるー」
「そ、そう?」
「嘘だよ」
「──嘘なの!?」
「嘘だよ。似合ってるよ」
おっ、ようやく全員の身支度が整ったようだ。カメラのスタンバイも、これで良し!
「準備はできたようだな。では、始めてください」
「手を洗ってこい。何度も同じことを言わせるな」
「そうでした」
よし、じゃなかったね。
将来の夢はお菓子屋さんのルイちゃんは、お菓子のことになるとマジなので指示に従います。
さもないと追い出されると思うので。それも暴力的に。
※
で、今日のクッキーについてだが、これは異世界に広めるためにではなく、あくまでミカからお姫様へのお返しのために作るということだ。
よって、クッキーの材料は市販のものが大半を占める。よって、材料調達クエスト等は発生しない! やったぜ!
どうしてお返しがクッキーなのかというと、作りやすいからに他ならない。
ホワイトデーまでで今日しかルイは予定が合わないし、1回習ってミカ1人でやれというのも無理があるだろう。
ならお菓子は、『手伝ってもらって』と最初に付いたとしても、作る気なら作ってしまうべきだとなったわけだ。
それに今日で、クッキー作りは終わらせないといけないという都合もあるんだ。
実はルイだけでなく、俺たちも忙しいからね……。
ミカは覚えることがたくさんあるし、まだ完成してないし。何より覚悟が必要だし。俺も打ち合わせとか、交渉とかあるんだ。
だいたい分かってきたと思うけど、時間が足りないや。企画から実行までの期間が短すぎる。
だから、『全部をプロデュースするのは不可能だ!』という結論に俺は至った。
なので、当日読む原稿はお姫様に頼んだ。
主役自らにやらせるのはどうかと思うけど、人手というか全体的に出来るヤツが足りない。脳筋しかいないし。
二クスではないが人材の確保は重要らしい。
ホワイトデーの後は、そこら辺を重要視しようと思っている。
しかし、今は目の前のことだ。重要なところから、1つずつ確実に達成していかなければ。それが一番の近道であると信じて。
「お姉ちゃん。クッキーってどうやって作るの?」
「えっ、一愛ちゃん。そんなレベルからなの」
思わず参加者のレベルの低さに驚いてしまった。
ミカが分からないのは当然だとして、いつも食べてるヤツが分からないとは。
なんだと思ってクッキーを食べているんだよ。
えっ、クッキーはクッキー?
そういうことではなく、こう……。
「なんだよ。じゃあ、れーとはわかんのかよ?」
「バカにするなよ。チョコレートを作れる俺に、そのくらいのことが分からないわけがなかろう」
と、口では言ってはいるが実際は分からない。なんか粉を使っているとしか分からん。妹の前で知ったかぶっただけだ!
「ふーん。なら材料を言ってみろよー」
「いいだろう」
だけど、どうせなんとか粉だろ? それに砂糖と卵。それらを混ぜて焼くだけだろ。
こな、粉。小麦粉……かな?
「小麦粉だ!」
これだ! 間違いない!
ホットケーキミックスかとも思ったけど、あれはいろいろ混ざってるやつだとバレンタインの時に聞いた。となれば、混ざっていないもの。つまり小麦粉に違いない。
「──違う、薄力粉だ。知ったかぶんな」
「「あははは──、かっこ悪い──」」
一瞬で違うと言われ、これでもかというくらいに笑われた。
粉はあっていたのに……。お前たちも知らないくせに。
「2つはどう違うの? 今後のために教えてください」
「薄力粉も小麦粉は小麦粉だが──」
「小麦粉なんじゃねーか! なんで違うって言ったんだよ! オマケで正解にしてよ」
「そんなわけにいくか。小麦粉と薄力粉は違うんだから、違うんだよ」
お菓子のことになると融通が利かない子ねーー。
この子は昔からそういうところがあるけど、お菓子になると本当に融通が利かない。
「ルイ。レートはいいから始めましょう」
「そうだよ。時間がもったいないよ」
今ので俺の威厳は失墜したらしい。
確かに、俺も何も知らないヤツのことなど適当にすると思う。それでもね、悲しいね……。
「あまりいじめてやるな。2人も分からなかったろ?」
「それは……」「……そうだけど」
やはり頼れるのは貴女だけです。
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