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天使のホワイトデー 後編
天使のホワイトデー ⑧
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「さあ、始まりました。ゲームにして闘いの極地。力ではなく頭脳を比べる闘いが! 先行はじゃんけんで、あいこ10回の激闘を制して勝ったミカエラ選手です。おっとミカエラ選手、1ターン目から動くようです。これはいいスタートです!」
『ミカエラ選手の引きがムダに強い。あのカードはデッキの中に3枚。初手に入る可能性は40分の3で、初期手札が5枚ですから……そこそこ低い可能性です』
「おい、計算しろよ。そのくらいの演算は一瞬でできるだろうが! お前は人工知能のくせに、本当にやる気がないな!」
『ご主人様。昼間から何を言ってるの。やる……だなんて。昼間から変なことばかり考えてちゃダメだよ?』
「──お前が何を言ってんだ!」
※
回想に入る前に突然だがARってのがあるだろう?
これはウィキで調べたら、オーグメンテッド・リアリティというらしいな。日本語だと拡張現実とか言う。
VRは聞いたことあるだろう。バーチャルリアリティ、仮想現実と言うやつだな。後、MRなんてのもある。ミクスト・リアリティ。これは複合現実感と言うらしい。
何でこんな話をするのかと言うと、こんな感じのことを異世界でも出来るからだ。
そして、それを使用してゲームが行われているからだ。
──で、話は脱線するんだけど! 俺がこれらの技術を使っているもので最も気になり、是非ともやってみたいと思うのはゲーム関連だ。あれスゴくない!?
絶対その内ゲームの中に入れるようになるよ! もしくはゲームの中が飛び出してくる! どっちもスゲえよな! スゴく未来的で魅力的だ。
満足したから脱線した話を戻すね。
アナログゲームであるカードゲームも、アニメとかだと何Rだかは知らないがモンスターとか飛び出してくるじゃん? あれってカッコいいじゃん? というわけだ。では、回想です。
「こちらの二クスさんは悪魔スキルで幻を見せられる。もう本物だと思うほどのやつをな。バレンタインの時なんて、二クスさんの幻で会場を飾り付けたくらいだからな!」
お姫様の部屋にてホワイトデーにやりたいことをプレゼンした。
どうしても協力してほしい相手だったから、資料を念入りにチェックし、お菓子とジュースも用意した。抜かりはない!
「ほう、それを使ってモンスターを実際に出そうというわけだ。そして、まるでアニメのようなデュエルが可能になるというわけだ」
ジュースを飲むのと同じくらい、話の内容を飲み込みが早い我が妹。
やっぱり俺の中でカードゲームというと一愛ちゃんなんで、協力を依頼した。
「そうそう。すでに一愛には、お姫様たちへのカードの手ほどきを頼んでいるわけで悪いんだけど、何とかこっちも協力してくれない? 素人だけだと不安なんだ」
毎週楽しみにアニメを観ている、いわばプロに協力を依頼するのは自然なこと。
俺と二クスで相談し、絵をそのまま実体化させたところであまり面白くもない。
なら、プロにそれっぽい動きを付けてもらう方が完成度が上がる。だが、二重にお願いを受けてくれるかという問題が……。
「高い物を買ってもらってるわけだし、いいよ」
先日のあの出費にも意味があったらしい。良かった。こんな簡単に請け負ってくれたのも良かった。
これならプレゼンの準備は必要なかったのかもしれないな。俺は妹にビビりすぎだったな!
「──ただし! やるからには一愛が満足するレベルでやってもらわないといけない。ハンパなものは認めない! 妥協とか泣き言とかいいやがったらシメるからな!」
「えっ……」
「──何を気の抜けた顔してんだ! とりあえずやってみせろや。あと、ジュースがなくなったぞ。買ってこいや!」
「えっ……」
簡単に通った話は簡単にはいかなかった! そんなに世の中甘くなかったんだ!
予定とかを考えも、なんとしても協力してもらわないとだったから、言われた通りにパシリました。
もう、本当に、マジで、大変でした。一愛にだけは二度とものを頼まないと誓いました。
「なんというか……白夜さんとすごく血の繋がりを感じました。微塵も妥協しない辺りが特に……」
次の日。一愛に1日指導を受けたイケメンは、そう言い残して倒れた。その様すらイケメンだった。
俺はそれを見て……イケメンは死ねばいいと思いました。
「イケメンの人すっげーーっ! こんなのアニメの中の話じゃん! 本番はもっと大きく出してやろうね。これはスゴい!」
イケメンを犠牲に妹は大喜びし、それを見た俺は心底妹に恐怖を感じました。あの、二クスさんが倒れるくらいに大変なんだろう長時間の幻の維持を、平気な顔でもっとやろうという一愛は怖い。
更に、なんだか背筋に冷たいものも感じました。
思わず振り返ると……そこにはひどく怒っている顔のお姫様が立っていました。
「どこにいるのかと思ったら、こんなところで遊んでたのね。今日の授業はどうしたの? あたしに手間をかけさせんなって言ったわよね」
屋内ではスペースが足りなかったので、城の裏の訓練場で今日の指導は行われていた。
日よけのパラソルをさして、椅子とテーブルを置いて、お菓子とジュースを完備して行われていた。
「ルシアちゃん。れーとは、おかし食べてジュース飲んでしてたよ。『二クスが頑張ってるから、暇だーー』って言ってジュース飲んでたよ。それは全部、一愛のためにじゃなく自分のために用意してたみたいだねー」
一愛は指導に夢中で、二クスは夢中で指導されていて、俺は1人暇だった。それは確かだ。
自分で買ってきたんだから飲み食いもした。しかし……──逃げるしかない!
「へぇ……そんなに余裕があるなら、今日はいっそう厳しくしてもらいましょう。そうしてもらえるように、あたしから言ってあげるから。ほら、──行くわよ!」
お姫様より遥かに素早さが足りない俺の『にげる』はあえなく失敗し、首根っこを押さえられ連行されていく。天国という名の地獄に。
「やめてーー! これは必要なことなんだよ。サボっていたわけではないんだよ。だからガブリエルさんには言わないでーーーー」
「グタグタ言うな! あたしたちに何も言わずにいる時点で、全部サボるための口実でしょうが!」
こうして地獄へと連行され、サボりペナルティが加わった授業を受けさせられた。
連帯責任で同じペナルティが課せられたミカにもめっちゃ怒られた。散々だった。
※
ターンが進むごとに歓声が上がる。
二クスの出現させるモンスターは幻ではあるが、本物さながらにアクションしカードゲームを盛り上げる。
こうすることでルールが分からなくても見て楽しめ、どっちが勝っているのかも分かる仕様になっている。アマテラスもまじめに撮影しているので、映像も大したものになっている。
そして、この中継を見ている各地の様子をざっと見た限りではあるが、このカードゲームへの反応はかなりある。『本物ではありません』とテロップを出しているから、『戦争が始まった!』という勘違いとかではない。
ちゃんと理解して盛り上がっていると分かる。だからこそ思うことがある。
「……」
『ご主人様。どうしたの? もう決着つくよ?』
「昨日まで散々だったなー、と思い出してな。こうしてモンスターが飛び出してきて、めっちゃ盛り上がっているのは俺のおかげなのに。散々だったなー。なんか俺だけいいことないなー」
『いや、ご主人様。応援しようよ』
応援も何もチラリと盤面を見ただけで分かる。この勝負は1ターン目から動けたミカの勝ちだ。
一愛いわく、天使デッキと悪魔デッキの性能は五分だが、今回はミカの引きが良かった。
横並びが強い天使デッキが、その特色を生かし鬼回りしていた。
「じゃあ最後だけ……。天使デッキは早いターンで勝負を決めるデッキだったのですが、その戦術が見事に決まりました。ミカエラ選手の勝ちです!」
お姫様のモンスターが倒され、ミカのモンスターがお姫様へと直接ぶつかる。直後の爆発のエフェクトの後、画面には勝者の顔がデカデカと映る。
めっちゃ勝ちを喜ぶ天使ちゃんがデカデカ映っている。
『お姉様ーーっ。嘘よ、お姉様が負けるわけない!』
「お前は誰なんだよ……。そのキャラはなんなの? まぁいいや。では、休憩を挟んで2戦目に突入します」
『……終わりじゃないの?』
「先に二本先取した方が勝ちです。次戦は負けた方、お姫様が先行でゲームが始まります。休憩中はCMをどうぞ! アマテラス。お前はルールブックに目を通せ! やるならちゃんとやれや!」
主に二クスのための休憩時間には、えらーい天使たちのCMを流してあげた。
彼らがいかに良い人であり、もうめちゃくちゃに協力的で、いくらでも出資してくれる優しい人たちなんだというCMを。
あと、若干名のお嫁さん募集も入れてある。
好きなタイプと理想の家庭とかの情報を入れた、公式のプロフィールを作ってやった。
効果のほどはまだなんとも言えないが、約束は果たしたので良しとする。
『ミカエラ選手の引きがムダに強い。あのカードはデッキの中に3枚。初手に入る可能性は40分の3で、初期手札が5枚ですから……そこそこ低い可能性です』
「おい、計算しろよ。そのくらいの演算は一瞬でできるだろうが! お前は人工知能のくせに、本当にやる気がないな!」
『ご主人様。昼間から何を言ってるの。やる……だなんて。昼間から変なことばかり考えてちゃダメだよ?』
「──お前が何を言ってんだ!」
※
回想に入る前に突然だがARってのがあるだろう?
これはウィキで調べたら、オーグメンテッド・リアリティというらしいな。日本語だと拡張現実とか言う。
VRは聞いたことあるだろう。バーチャルリアリティ、仮想現実と言うやつだな。後、MRなんてのもある。ミクスト・リアリティ。これは複合現実感と言うらしい。
何でこんな話をするのかと言うと、こんな感じのことを異世界でも出来るからだ。
そして、それを使用してゲームが行われているからだ。
──で、話は脱線するんだけど! 俺がこれらの技術を使っているもので最も気になり、是非ともやってみたいと思うのはゲーム関連だ。あれスゴくない!?
絶対その内ゲームの中に入れるようになるよ! もしくはゲームの中が飛び出してくる! どっちもスゲえよな! スゴく未来的で魅力的だ。
満足したから脱線した話を戻すね。
アナログゲームであるカードゲームも、アニメとかだと何Rだかは知らないがモンスターとか飛び出してくるじゃん? あれってカッコいいじゃん? というわけだ。では、回想です。
「こちらの二クスさんは悪魔スキルで幻を見せられる。もう本物だと思うほどのやつをな。バレンタインの時なんて、二クスさんの幻で会場を飾り付けたくらいだからな!」
お姫様の部屋にてホワイトデーにやりたいことをプレゼンした。
どうしても協力してほしい相手だったから、資料を念入りにチェックし、お菓子とジュースも用意した。抜かりはない!
「ほう、それを使ってモンスターを実際に出そうというわけだ。そして、まるでアニメのようなデュエルが可能になるというわけだ」
ジュースを飲むのと同じくらい、話の内容を飲み込みが早い我が妹。
やっぱり俺の中でカードゲームというと一愛ちゃんなんで、協力を依頼した。
「そうそう。すでに一愛には、お姫様たちへのカードの手ほどきを頼んでいるわけで悪いんだけど、何とかこっちも協力してくれない? 素人だけだと不安なんだ」
毎週楽しみにアニメを観ている、いわばプロに協力を依頼するのは自然なこと。
俺と二クスで相談し、絵をそのまま実体化させたところであまり面白くもない。
なら、プロにそれっぽい動きを付けてもらう方が完成度が上がる。だが、二重にお願いを受けてくれるかという問題が……。
「高い物を買ってもらってるわけだし、いいよ」
先日のあの出費にも意味があったらしい。良かった。こんな簡単に請け負ってくれたのも良かった。
これならプレゼンの準備は必要なかったのかもしれないな。俺は妹にビビりすぎだったな!
「──ただし! やるからには一愛が満足するレベルでやってもらわないといけない。ハンパなものは認めない! 妥協とか泣き言とかいいやがったらシメるからな!」
「えっ……」
「──何を気の抜けた顔してんだ! とりあえずやってみせろや。あと、ジュースがなくなったぞ。買ってこいや!」
「えっ……」
簡単に通った話は簡単にはいかなかった! そんなに世の中甘くなかったんだ!
予定とかを考えも、なんとしても協力してもらわないとだったから、言われた通りにパシリました。
もう、本当に、マジで、大変でした。一愛にだけは二度とものを頼まないと誓いました。
「なんというか……白夜さんとすごく血の繋がりを感じました。微塵も妥協しない辺りが特に……」
次の日。一愛に1日指導を受けたイケメンは、そう言い残して倒れた。その様すらイケメンだった。
俺はそれを見て……イケメンは死ねばいいと思いました。
「イケメンの人すっげーーっ! こんなのアニメの中の話じゃん! 本番はもっと大きく出してやろうね。これはスゴい!」
イケメンを犠牲に妹は大喜びし、それを見た俺は心底妹に恐怖を感じました。あの、二クスさんが倒れるくらいに大変なんだろう長時間の幻の維持を、平気な顔でもっとやろうという一愛は怖い。
更に、なんだか背筋に冷たいものも感じました。
思わず振り返ると……そこにはひどく怒っている顔のお姫様が立っていました。
「どこにいるのかと思ったら、こんなところで遊んでたのね。今日の授業はどうしたの? あたしに手間をかけさせんなって言ったわよね」
屋内ではスペースが足りなかったので、城の裏の訓練場で今日の指導は行われていた。
日よけのパラソルをさして、椅子とテーブルを置いて、お菓子とジュースを完備して行われていた。
「ルシアちゃん。れーとは、おかし食べてジュース飲んでしてたよ。『二クスが頑張ってるから、暇だーー』って言ってジュース飲んでたよ。それは全部、一愛のためにじゃなく自分のために用意してたみたいだねー」
一愛は指導に夢中で、二クスは夢中で指導されていて、俺は1人暇だった。それは確かだ。
自分で買ってきたんだから飲み食いもした。しかし……──逃げるしかない!
「へぇ……そんなに余裕があるなら、今日はいっそう厳しくしてもらいましょう。そうしてもらえるように、あたしから言ってあげるから。ほら、──行くわよ!」
お姫様より遥かに素早さが足りない俺の『にげる』はあえなく失敗し、首根っこを押さえられ連行されていく。天国という名の地獄に。
「やめてーー! これは必要なことなんだよ。サボっていたわけではないんだよ。だからガブリエルさんには言わないでーーーー」
「グタグタ言うな! あたしたちに何も言わずにいる時点で、全部サボるための口実でしょうが!」
こうして地獄へと連行され、サボりペナルティが加わった授業を受けさせられた。
連帯責任で同じペナルティが課せられたミカにもめっちゃ怒られた。散々だった。
※
ターンが進むごとに歓声が上がる。
二クスの出現させるモンスターは幻ではあるが、本物さながらにアクションしカードゲームを盛り上げる。
こうすることでルールが分からなくても見て楽しめ、どっちが勝っているのかも分かる仕様になっている。アマテラスもまじめに撮影しているので、映像も大したものになっている。
そして、この中継を見ている各地の様子をざっと見た限りではあるが、このカードゲームへの反応はかなりある。『本物ではありません』とテロップを出しているから、『戦争が始まった!』という勘違いとかではない。
ちゃんと理解して盛り上がっていると分かる。だからこそ思うことがある。
「……」
『ご主人様。どうしたの? もう決着つくよ?』
「昨日まで散々だったなー、と思い出してな。こうしてモンスターが飛び出してきて、めっちゃ盛り上がっているのは俺のおかげなのに。散々だったなー。なんか俺だけいいことないなー」
『いや、ご主人様。応援しようよ』
応援も何もチラリと盤面を見ただけで分かる。この勝負は1ターン目から動けたミカの勝ちだ。
一愛いわく、天使デッキと悪魔デッキの性能は五分だが、今回はミカの引きが良かった。
横並びが強い天使デッキが、その特色を生かし鬼回りしていた。
「じゃあ最後だけ……。天使デッキは早いターンで勝負を決めるデッキだったのですが、その戦術が見事に決まりました。ミカエラ選手の勝ちです!」
お姫様のモンスターが倒され、ミカのモンスターがお姫様へと直接ぶつかる。直後の爆発のエフェクトの後、画面には勝者の顔がデカデカと映る。
めっちゃ勝ちを喜ぶ天使ちゃんがデカデカ映っている。
『お姉様ーーっ。嘘よ、お姉様が負けるわけない!』
「お前は誰なんだよ……。そのキャラはなんなの? まぁいいや。では、休憩を挟んで2戦目に突入します」
『……終わりじゃないの?』
「先に二本先取した方が勝ちです。次戦は負けた方、お姫様が先行でゲームが始まります。休憩中はCMをどうぞ! アマテラス。お前はルールブックに目を通せ! やるならちゃんとやれや!」
主に二クスのための休憩時間には、えらーい天使たちのCMを流してあげた。
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