連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ② 

KZ

文字の大きさ
77 / 101
天使のホワイトデー 後編

天使のホワイトデー ⑧

しおりを挟む
「さあ、始まりました。ゲームにして闘いの極地。力ではなく頭脳を比べる闘いが! 先行はじゃんけんで、あいこ10回の激闘を制して勝ったミカエラ選手です。おっとミカエラ選手、1ターン目から動くようです。これはいいスタートです!」

『ミカエラ選手の引きがムダに強い。あのカードはデッキの中に3枚。初手に入る可能性は40分の3で、初期手札が5枚ですから……そこそこ低い可能性です』

「おい、計算しろよ。そのくらいの演算は一瞬でできるだろうが! お前は人工知能のくせに、本当にやる気がないな!」

『ご主人様。昼間から何を言ってるの。やる……だなんて。昼間から変なことばかり考えてちゃダメだよ?』

「──お前が何を言ってんだ!」


 ※


 回想に入る前に突然だがARってのがあるだろう?
 これはウィキで調べたら、オーグメンテッド・リアリティというらしいな。日本語だと拡張現実とか言う。
 VRは聞いたことあるだろう。バーチャルリアリティ、仮想現実と言うやつだな。後、MRなんてのもある。ミクスト・リアリティ。これは複合現実感と言うらしい。

 何でこんな話をするのかと言うと、こんな感じのことを異世界でも出来るからだ。
 そして、それを使用してゲームが行われているからだ。

 ──で、話は脱線するんだけど! 俺がこれらの技術を使っているもので最も気になり、是非ともやってみたいと思うのはゲーム関連だ。あれスゴくない!?
 絶対その内ゲームの中に入れるようになるよ! もしくはゲームの中が飛び出してくる! どっちもスゲえよな! スゴく未来的で魅力的だ。

 満足したから脱線した話を戻すね。
 アナログゲームであるカードゲームも、アニメとかだと何Rだかは知らないがモンスターとか飛び出してくるじゃん? あれってカッコいいじゃん? というわけだ。では、回想です。

「こちらの二クスさんは悪魔スキルで幻を見せられる。もう本物だと思うほどのやつをな。バレンタインの時なんて、二クスさんの幻で会場を飾り付けたくらいだからな!」

 お姫様の部屋にてホワイトデーにやりたいことをプレゼンした。
 どうしても協力してほしい相手だったから、資料を念入りにチェックし、お菓子とジュースも用意した。抜かりはない!

「ほう、それを使ってモンスターを実際に出そうというわけだ。そして、まるでアニメのようなデュエルが可能になるというわけだ」

 ジュースを飲むのと同じくらい、話の内容を飲み込みが早い我が妹。
 やっぱり俺の中でカードゲームというと一愛いちかちゃんなんで、協力を依頼した。

「そうそう。すでに一愛には、お姫様たちへのカードの手ほどきを頼んでいるわけで悪いんだけど、何とかこっちも協力してくれない? 素人だけだと不安なんだ」

 毎週楽しみにアニメを観ている、いわばプロに協力を依頼するのは自然なこと。
 俺と二クスで相談し、絵をそのまま実体化させたところであまり面白くもない。
 なら、プロにそれっぽい動きを付けてもらう方が完成度が上がる。だが、二重にお願いを受けてくれるかという問題が……。

「高い物を買ってもらってるわけだし、いいよ」

 先日のあの出費にも意味があったらしい。良かった。こんな簡単に請け負ってくれたのも良かった。
 これならプレゼンの準備は必要なかったのかもしれないな。俺は妹にビビりすぎだったな!

「──ただし! やるからには一愛が満足するレベルでやってもらわないといけない。ハンパなものは認めない! 妥協とか泣き言とかいいやがったらシメるからな!」

「えっ……」

「──何を気の抜けた顔してんだ! とりあえずやってみせろや。あと、ジュースがなくなったぞ。買ってこいや!」

「えっ……」

 簡単に通った話は簡単にはいかなかった! そんなに世の中甘くなかったんだ!
 予定とかを考えも、なんとしても協力してもらわないとだったから、言われた通りにパシリました。
 もう、本当に、マジで、大変でした。一愛にだけは二度とものを頼まないと誓いました。

「なんというか……白夜はくやさんとすごく血の繋がりを感じました。微塵も妥協しない辺りが特に……」

 次の日。一愛に1日指導を受けたイケメンは、そう言い残して倒れた。その様すらイケメンだった。
 俺はそれを見て……イケメンは死ねばいいと思いました。

「イケメンの人すっげーーっ! こんなのアニメの中の話じゃん! 本番はもっと大きく出してやろうね。これはスゴい!」

 イケメンを犠牲に妹は大喜びし、それを見た俺は心底妹に恐怖を感じました。あの、二クスさんが倒れるくらいに大変なんだろう長時間の幻の維持を、平気な顔でもっとやろうという一愛は怖い。
 更に、なんだか背筋に冷たいものも感じました。
 思わず振り返ると……そこにはひどく怒っている顔のお姫様が立っていました。

「どこにいるのかと思ったら、こんなところで遊んでたのね。今日の授業はどうしたの? あたしに手間をかけさせんなって言ったわよね」

 屋内ではスペースが足りなかったので、城の裏の訓練場で今日の指導は行われていた。
 日よけのパラソルをさして、椅子とテーブルを置いて、お菓子とジュースを完備して行われていた。

「ルシアちゃん。れーとは、おかし食べてジュース飲んでしてたよ。『二クスが頑張ってるから、暇だーー』って言ってジュース飲んでたよ。それは全部、一愛のためにじゃなく自分のために用意してたみたいだねー」

 一愛は指導に夢中で、二クスは夢中で指導されていて、俺は1人暇だった。それは確かだ。
 自分で買ってきたんだから飲み食いもした。しかし……──逃げるしかない!

「へぇ……そんなに余裕があるなら、今日はいっそう厳しくしてもらいましょう。そうしてもらえるように、あたしから言ってあげるから。ほら、──行くわよ!」

 お姫様より遥かに素早さが足りない俺の『にげる』はあえなく失敗し、首根っこを押さえられ連行されていく。天国という名の地獄に。

「やめてーー! これは必要なことなんだよ。サボっていたわけではないんだよ。だからガブリエルさんには言わないでーーーー」

「グタグタ言うな! あたしたちに何も言わずにいる時点で、全部サボるための口実でしょうが!」

 こうして地獄へと連行され、サボりペナルティが加わった授業を受けさせられた。
 連帯責任で同じペナルティが課せられたミカにもめっちゃ怒られた。散々だった。


 ※


 ターンが進むごとに歓声が上がる。
 二クスの出現させるモンスターは幻ではあるが、本物さながらにアクションしカードゲームを盛り上げる。
 こうすることでルールが分からなくても見て楽しめ、どっちが勝っているのかも分かる仕様になっている。アマテラスもまじめに撮影しているので、映像も大したものになっている。

 そして、この中継を見ている各地の様子をざっと見た限りではあるが、このカードゲームへの反応はかなりある。『本物ではありません』とテロップを出しているから、『戦争が始まった!』という勘違いとかではない。
 ちゃんと理解して盛り上がっていると分かる。だからこそ思うことがある。

「……」

『ご主人様。どうしたの? もう決着つくよ?』

「昨日まで散々だったなー、と思い出してな。こうしてモンスターが飛び出してきて、めっちゃ盛り上がっているのは俺のおかげなのに。散々だったなー。なんか俺だけいいことないなー」

『いや、ご主人様。応援しようよ』

 応援も何もチラリと盤面を見ただけで分かる。この勝負は1ターン目から動けたミカの勝ちだ。
 一愛いちかいわく、天使デッキと悪魔デッキの性能は五分だが、今回はミカの引きが良かった。
 横並びが強い天使デッキが、その特色を生かし鬼回りしていた。

「じゃあ最後だけ……。天使デッキは早いターンで勝負を決めるデッキだったのですが、その戦術が見事に決まりました。ミカエラ選手の勝ちです!」

 お姫様のモンスターが倒され、ミカのモンスターがお姫様へと直接ぶつかる。直後の爆発のエフェクトの後、画面には勝者の顔がデカデカと映る。
 めっちゃ勝ちを喜ぶ天使ちゃんがデカデカ映っている。

『お姉様ーーっ。嘘よ、お姉様が負けるわけない!』

「お前は誰なんだよ……。そのキャラはなんなの? まぁいいや。では、休憩を挟んで2戦目に突入します」

『……終わりじゃないの?』

「先に二本先取した方が勝ちです。次戦は負けた方、お姫様が先行でゲームが始まります。休憩中はCMをどうぞ! アマテラス。お前はルールブックに目を通せ! やるならちゃんとやれや!」

 主に二クスのための休憩時間には、えらーい天使たちのCMを流してあげた。
 彼らがいかに良い人であり、もうめちゃくちゃに協力的で、いくらでも出資してくれる優しい人たちなんだというCMを。

 あと、若干名のお嫁さん募集も入れてある。
 好きなタイプと理想の家庭とかの情報を入れた、公式のプロフィールを作ってやった。
 効果のほどはまだなんとも言えないが、約束は果たしたので良しとする。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...