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正義のペン1(喰いついたら離すな)
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笹島中学校は、世間からは生徒が平穏に学校生活を送っているように見えるが、問題がない学校など、ほどほど存在しない。
その笹島中学校での問題点を暴いてきたのが、笹島中学校新聞部発行の「あかつき」、通称“笹スポ”だ。スポはスポでもスポーツのスポではなく、スッポンのごとく一度かみついたら、何があっても追求し続ける、ジャーナリスト魂をモットーとしてきてたからだ。
まさに笹スポの伝統は、先輩たちから脈々と受け継がれてきてた。
そんな笹スポは、日常の学校生活ではなく、取材を尽くした特集面にこそ特徴がある。先日も学校内での電気消費の無駄遣いを訴えた特集により、生徒のエコ意識を変えただけでなく、家庭に帰ってからの行動にも変化を与えた。また、笹島中校区の地元独居老人宅訪問を紙面で追い続けたことで評価がされ、地域の社会福祉協会から表彰を受けたほどの活躍ぶりを見せている。
笹スポの部長いや編集長は塚田悠太。そして部には、副編集長であり悠太の一番の理解者である熊切洋介を含め、8人の部員がいる。
今日も全員による編集会議が開かれていた。まず悠太が口火を切る。
「この前の電気消費の件、とても評判良かったけど、次回の特集のテーマはどうする?」
さっそく熱い討論が勃発する。
「あんまり学校にたて突くと、部費が削られうちゃうぞ」
部員の一人が弱気な発言をすると、すかさず悠太が切り返す。
「いいか俺たちはジャーナリストなんだ。やはり不正を追及し、巨悪をさらすことが大事。権力に阿ってどうすんだよ」
一瞬にして部室に緊張感が漂う。
「癒やし系というかほっこりというか。推しのアニメ特集とかどうですか?」
空気を変えようと冗談の一つでも言ったところで、
「そんなんじゃ誰も読まないよ。分かった分かった。次までテーマを持ち寄ること」
と、鬼編集長が許すはずもない。明日、再度会議が行われることになった。
「さあ誰からでもいいよ。どんなテーマにする?」
答えられる者はいない。しかたなく2年生部員の青島翔也が口を開いた。
「生徒の不正を調べるってのはどうですか?教室へのスマホ持ち込みとか」
悠太の目つきが変わった。
「それっておもしろいかも。でもどやって調べるの?本当のことなんて、誰も言わなけないし」
洋介も食いついてきた。
「普通にやってたらダメですよ。まあ監視カメラは無理だけど、密告ってのはどうですか?」
何か江戸時代にタイムスリップしたみたいだが、
「なるほど、その手があったか。それって情報提供ってやつね。それに別に法律に反してないはずだし」
ひょんな発言から、一気に取材の方向が決まっていく。
「でも提供者なんているかなあ?」
とにかく、ツイッターで情報を収集してみることにしました。
# 求む、笹島中のスマホ持ち込み
数日後、集まってきた部員たちは大騒ぎ。
「編集長、こんなにたくさん集まってきてますよ」
祥也が見せた内容を見て、もうみんなビックリ。例えば。
各教室でスマホが氾濫、知らぬは学校ばかりなり
こんなのもあった。
授業中に動画を見ている者、ゲームをしている者、メールをしている者
教師は見ても知らぬふり?そもそも気づいたら注意すべきじゃない?
わずか3日間で、20件以上のたれ込み、いや情報提供があった。まさにSNS恐るべしとはこのこと。
「すげえ。今度はこれをどう記事にしていくかだ」
しかしここであることに気づく。
「でもこれって学校に言っておかなくてもいいのか?」
不安な気持ちも分かる。しかしここで一刀両断。
「だからすっぱ抜くんじゃないか」
この悠太の大胆な発言により、その後の方針は自ずと決まっていった。
笹島中学校新聞 「あかつき」第85号
・今月の特集
【 スマホ持ち込み 知られざる笹中の実態!
ー なんと授業中にメールやゲームを ー 】
職員室は、朝からおもちゃ箱をひっくり返したような状態になっていた。教頭が慌てて部顧問の山﨑に確認する。
「山﨑先生、この新聞記事のことはご存じなんでしょうね?」
教頭の強い語気に、山崎はたじろぐばかり。
「一応、企画内容は聞いてたんですけど。まさかこここまでひどいとは」
それでも教頭の怒りは収まらない。
「何無責任なこと言ってるんですか。最終確認はしてないってことですね。表に出たら笹中の大恥じゃないですか」
結果、全生徒へ発行した300部が朝のうちに回収されていった。
図らずも、この早朝からのドタバタ劇が新聞部員のやる気にさらに拍車をかけていこうとは、そのとき気づく余地もなかった。
その笹島中学校での問題点を暴いてきたのが、笹島中学校新聞部発行の「あかつき」、通称“笹スポ”だ。スポはスポでもスポーツのスポではなく、スッポンのごとく一度かみついたら、何があっても追求し続ける、ジャーナリスト魂をモットーとしてきてたからだ。
まさに笹スポの伝統は、先輩たちから脈々と受け継がれてきてた。
そんな笹スポは、日常の学校生活ではなく、取材を尽くした特集面にこそ特徴がある。先日も学校内での電気消費の無駄遣いを訴えた特集により、生徒のエコ意識を変えただけでなく、家庭に帰ってからの行動にも変化を与えた。また、笹島中校区の地元独居老人宅訪問を紙面で追い続けたことで評価がされ、地域の社会福祉協会から表彰を受けたほどの活躍ぶりを見せている。
笹スポの部長いや編集長は塚田悠太。そして部には、副編集長であり悠太の一番の理解者である熊切洋介を含め、8人の部員がいる。
今日も全員による編集会議が開かれていた。まず悠太が口火を切る。
「この前の電気消費の件、とても評判良かったけど、次回の特集のテーマはどうする?」
さっそく熱い討論が勃発する。
「あんまり学校にたて突くと、部費が削られうちゃうぞ」
部員の一人が弱気な発言をすると、すかさず悠太が切り返す。
「いいか俺たちはジャーナリストなんだ。やはり不正を追及し、巨悪をさらすことが大事。権力に阿ってどうすんだよ」
一瞬にして部室に緊張感が漂う。
「癒やし系というかほっこりというか。推しのアニメ特集とかどうですか?」
空気を変えようと冗談の一つでも言ったところで、
「そんなんじゃ誰も読まないよ。分かった分かった。次までテーマを持ち寄ること」
と、鬼編集長が許すはずもない。明日、再度会議が行われることになった。
「さあ誰からでもいいよ。どんなテーマにする?」
答えられる者はいない。しかたなく2年生部員の青島翔也が口を開いた。
「生徒の不正を調べるってのはどうですか?教室へのスマホ持ち込みとか」
悠太の目つきが変わった。
「それっておもしろいかも。でもどやって調べるの?本当のことなんて、誰も言わなけないし」
洋介も食いついてきた。
「普通にやってたらダメですよ。まあ監視カメラは無理だけど、密告ってのはどうですか?」
何か江戸時代にタイムスリップしたみたいだが、
「なるほど、その手があったか。それって情報提供ってやつね。それに別に法律に反してないはずだし」
ひょんな発言から、一気に取材の方向が決まっていく。
「でも提供者なんているかなあ?」
とにかく、ツイッターで情報を収集してみることにしました。
# 求む、笹島中のスマホ持ち込み
数日後、集まってきた部員たちは大騒ぎ。
「編集長、こんなにたくさん集まってきてますよ」
祥也が見せた内容を見て、もうみんなビックリ。例えば。
各教室でスマホが氾濫、知らぬは学校ばかりなり
こんなのもあった。
授業中に動画を見ている者、ゲームをしている者、メールをしている者
教師は見ても知らぬふり?そもそも気づいたら注意すべきじゃない?
わずか3日間で、20件以上のたれ込み、いや情報提供があった。まさにSNS恐るべしとはこのこと。
「すげえ。今度はこれをどう記事にしていくかだ」
しかしここであることに気づく。
「でもこれって学校に言っておかなくてもいいのか?」
不安な気持ちも分かる。しかしここで一刀両断。
「だからすっぱ抜くんじゃないか」
この悠太の大胆な発言により、その後の方針は自ずと決まっていった。
笹島中学校新聞 「あかつき」第85号
・今月の特集
【 スマホ持ち込み 知られざる笹中の実態!
ー なんと授業中にメールやゲームを ー 】
職員室は、朝からおもちゃ箱をひっくり返したような状態になっていた。教頭が慌てて部顧問の山﨑に確認する。
「山﨑先生、この新聞記事のことはご存じなんでしょうね?」
教頭の強い語気に、山崎はたじろぐばかり。
「一応、企画内容は聞いてたんですけど。まさかこここまでひどいとは」
それでも教頭の怒りは収まらない。
「何無責任なこと言ってるんですか。最終確認はしてないってことですね。表に出たら笹中の大恥じゃないですか」
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