アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

377 ニールセン村へ

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 「お兄ちゃんズルい!シャーリーお姉ちゃんやミリアさんとばかり遊んでて」
 「いや俺遊んでるわけじゃないんだけど‥」
 「絶対ウソ!ズルいよお兄ちゃん!だから‥‥もっと早く走って!」

 きゃーーーっ!
 きゃーーーっ!
 きゃーーーっ!
 もっと早くー!
 そうよもっとー!
 あははははは

 なぜかリアカーにはシャーリーとミリアのほかに妹のスザンヌも載っている。


 今日はニールセン村に時計台を建てに来た。なぜかのんのん村に建てた時計台はやり過ぎだって師匠に怒られたけど。
 ニールセン村は領都サウザニア寄り。うちの村から領都に向かう途中あたりにある。わがデニーホッパー村にとってはのんのん村ともう1つの仲良し村でもある。
 俺は領都学校時代、モンデール神父様のご配慮で冒険者ギルドから指名依頼を受けていた。そう指名依頼だ。カッコよくない?指名依頼。
 何の依頼かって?‥‥郵便屋さんだよ。
 モンデール神父様なんか「手紙運びのお使い」なんて言い方してたもんな。他の誰もやりたがらない安い料金の郵便屋さんなんだよ。
 俺はニールセン村と学校の間で郵便屋さんをさせてもらっていた。わずかばかりのお金だったけどうれしかったんだよな。

 「お久しぶりです。マモル神父様」

 マモル神父様はニールセン村の教会をたった1人で切り盛りされている神父様だ。師匠と同じくらいのお歳と背格好。柔和な雰囲気は師匠とは段違いだ。(あっ!でも師匠は俺以外には鬼じゃないな)

 「おやアレク君久しぶりだね。ヴィヨルドの学園ダンジョンだったかいの?」
 「はい。ダンジョンが長引いて帰るのが遅くなりました」
 「そうかいそうかい。で今日は何用かな?」
 「はい神父様。ダンジョンでドロップ品に時計が出まして」
 「おぉ時計が出たのかい!それはすごいな!」
 「はい。それで俺が金魔法で同じものを発現できましたから、ヴィヨルドの学園長からモンデール学校長に友情の証だと贈呈してくれることになりました」
 「そうかいそうかい。さすがはヴィヨルドの学園長さんだね」
 「それでモンデール神父様からうちの村とニールセン村、のんのん村の3つにも時計台を建ててきなさいと」
 「時計塔を建ててくれるのかい!モンデール神父様もさすがじゃわい。なんとありがたいことか!」
 「はい。(神父様間違えてるのかな。時計塔じゃないよ。時計台だよ?)」
 「親父様何人くらい入るのにしましょうか?」
 「はっ?何人?時計台ならば、そりゃまあ100人も入れれば万々歳じゃがな。わはははは。それはお金も時間もともに無理というもんじゃの。冗談じゃよ」
 「いえ神父様?(聞いてないな‥)」
 「時計塔じゃからの。2メルか3メルか……。まあアレク君1人で発現するからたいへんじゃろうが1週間くらいかけて発現はよろしいかの」
 「やだなあ神父様。1週間もいりませんよ。今すぐできるのに決まってるじゃないですか」
 「えっ?アレク君それはどういう意味かの?」
 「いや時計台でしょ神父様?」
 「いやいやアレク君塔だけの2、3メルの時計塔じゃろ?」
 「ん?」
 「あ?」

 「「「あー‥」」」

 なぜかリアカーに乗ってきた3人が頭を抱えていた。あまりに埒があかないのでシャーリーが間にたって説明してくれたんだ。

 「しかしのシャーリーちゃん。アレク君がツクネを作るミートマッシャーをすぐに発現できるのはサリー(シスターサリー/のんのん村)から聞いてわしも知っておるよ。ただのぉさすがに2、3メルある時計塔をすぐには‥‥」

よし。とっとと作っちゃえ。

 「じゃあ神父様いきますよー。いでよ時計台!」



 ズズッ






 ズズズズッ









 ズズズズズーーッッ!
















 「な、な、な、なんじゃこりゃああああああ?!」


 結局時計台は3村で1番小さなものを建てたよ。100人も入れば満員になるくらいの小さな広さだよ。その代わり会議や宿泊もできる小さな部屋が5つある2階建にしたんだけどね。

 「デニーホッパー村の塀も本当にアレク君の発現じゃったんじゃなぁ‥」

 腰を抜かさんばかりに驚いていたマモル神父様だ。激変したデニーホッパー村についても、師匠やシスターナターシャの幅広い人脈を使って土魔法に優れた人にお願いして何月もかけて発現したものとばかり思っていたそうだ。









 時計台を発現したあとは村の主だった人たちに集まってもらったんだ。この人たちは当然俺があれこれ発現できることを見知ってくれていたよ。だから時計台に関しても驚きはしてたけど「「「まあアレク君なら‥」」」と不思議に納得はしてくれていた。(なぜか生暖かい目線で見られた意味はわかんないけど)



 「というわけで、井戸は深く掘り直しますね。あとうちの村と同じように村の真ん中に噴水公園を発現しますね。これで夏の渇水、干ばつもなんとかなると思います」

 今年の夏は雨が降らずに干ばつになるという俺の話もみんなは受け入れてくれたんだ。
今使ってる井戸を深く掘り直した。それから新たに深い地層から湧きでる噴水公園も作ったからもう大丈夫だ。

 「久しぶりに人の子と作業をしたわい」
 「「ほんにほんに」」

 地中から出てきたノームにも手伝ってもらったんだ。ノームもうれしそうにしていたよ。

 「あら、こんなところに素敵な水辺を作ってくれたのね」

すぐにウンディーネも現れてくれたからね。



 「じゃあ稲の栽培方法も説明しますね」

 米の試食会は大好評だったよ。そのあとは田植えから収穫、脱穀、籾摺り、精米まで流れを説明したんだ。3度めの説明だから少しはわかりやすくなったかな。ミリアはわかりやすいイラストも書いてくれてたからこれからはシャーリーとミリアの合作が稲作りの教本になるんだ。

 「「「精一杯頑張ってみるね」」」
 「気楽にやってくださいね」
 「シャーリーちゃん秋のバザーで良い報告をするからね」
 「はい!」
 「「「ありがとうアレク君」」」

 これでお米の実証実験も3村でできる。秋が楽しみだな。


 「じゃあみんな帰ろうか」
 「「「うん」」」

 妹のスザンヌも含めて3人みんなが良い顔をしていた。3村ともより良く発展していけたらいいな。



 ゴロゴロゴロゴロ‥

 あはははははは‥

 もっと飛ばしてー

 きゃーきやーきゃー


 帰りはリアルジェットコースターだったみたい。








 村に帰ったらサンデー商会のシルカさんが待っていた。

 「アレク君お帰りっス」
 「ただいまシルカさん。ん?俺?」
 「急で悪いんっスけどアレク君明日領都の冒険者ギルドへ行ってきてくれないっスか?」
 「いいけど?商業ギルドじゃなくて?」
 「そうっス。冒険者ギルドっス」

 いつもの明るい笑顔で話してだけど。シャーリーたちがいるからだろうな。俺だけにわかる目配りで。シルカさんが真剣に話してるってことがわかったんだ。なんだろう?とりあえず冒険者ギルドに行ってみるか。



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