アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

545 ともに生きる

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 その日のうち。暗くなる前にグランドに帰ってきたんだ。

 「やっぱピーちゃんはすげぇなぁ」

 「シャーーーなんにも‥‥わよ」

 「褒めてもなんにも出ないわよって」

 「ピーちゃんいつもありがとうね」

 「狐ちゃんこそ、シャつも姫を救ってくれてありがとうね」

 「おぉ~!ピーちゃんの言葉がわかるよ!」

 「「「えっ?!」」」

 「「狐ちゃんすごいわ!グランドでピーちゃんの言葉がわかるのは私(姫)とマル爺だけよ」」

 「へぇーそうなんだ」

 グランドには暗くなる前に帰ってきたんだ。そこにはジョングのほか海人族の大人10人と子どもも10人いたんだ。

 「海洋諸国人とアレクに感謝する。そして海洋諸国人、これまでの我ら海人族のすべての行いを謝罪する。どうか我らを許してほしい」

 「許すもなにも、すべては済んだことよ」

 「ありがとう、ありがとう。うっう‥‥」

 「あなたたちはこれからどうするの?」

 (アレクが言ってたな。どうしたいのか決めるのは自分たちだって)

 「逃した女子どもと合流してから、どこかで住む場所を探そうかと思う。どこか静かで落ち着ける場所を‥‥」

 ジョングたちは安住の地を探してるんだな。

 「姫ちょっといいかしら」

 「レベちゃん?」

 レベちゃんが目配せしたんだ。

 「よかったらあなたたち海人族もグランドに住まない?」

 「「「えっ?」」」

 「グランドは私たち海洋諸国人しか住んでないわ。あなたたちも知ってるとおり、海洋諸国人の男たちはみんな小さいからあなたたちと変わらないでしょ。
 そして私たちは差別なんかしないわ。差別するのが大嫌いな狐ちゃんもいるからね。
 ああアレクちゃんも半分以上グランド島民みたいなもんよ」

 「そ、それはうれしい話なんだが‥‥我らに返せる金などない。見てのとおり弱いだけで役にもたたない獣人だからな」

 「あらあなたたち海人族の泳ぎはすごいじゃない」

 「まぁ泳ぐしか能がない獣人だからな」

 「あなたたち海人族を見込んで。海人族にこそやってもらいたいことがあるのよ」

 レベちゃんがばちこーんとウィンクしたんだ。

 「このグランドにはね、水辺だけに生えるゴームの木があるのよ。そしてこの木が私たちの生活の糧になるの。
 だからあなたたち海人族が水の中から、私たちデグーが陸から協力して守っていってくれないかしら?」

 「それは‥‥?」

 「ええ。私たちと一緒に暮らさない?」

 「「「‥‥」」」

 レベちゃんの話を聞いているうちに、ジョングたちみんなが声を上げて、泣き出したんだ。

 「「「うっ、うっ、うわぁぁぁーーんっ」」」

 泣きながら子どもも大人も海人族のみんながレベちゃんと俺を交互に眺めながら、熱のこもった視線を浴びせていたんだ。

 やっぱり‥‥ジョングたち海人族はレベちゃんと同類だったんだ。ヤバい、ヤバい、ヤバい!俺の尻子玉が抜かれる!嫌だ嫌だ、絶対嫌だ!

 「(団長尻抑えてどうしたんですか?)」

 「(ドン、俺一足早く帰るからね。てか帝都に帰るから)」

 わんわん泣いてる海人族の子どもが声に出して言ったんだ。

 「海人族の言い伝えにね、大きな力持ちのお姉さんと小さな魔法使いのへんたいの男の子が一族の危機に現れるって。みんなをあんじゅうの地に連れてってくれるって」

 「まっ!大きなお姉さんは私しかいないわっ!小さな変態は‥‥狐ちゃんしかいないじゃない!
 だからその言い伝えは本当よ!本当の伝説よおぉぉぉぉ!」

 レベちゃんの高らかな宣言はそのままジョングたち海人族に受け入れられたんだ。

 「「「大きな女神様ありがとう!」」」

 「まっ!かわいい子どもたちは正直でかわいいわぁ!」

 「「「小さなへんたい様もありがとう」」」

 なんだよ!小さな変態って!

 「そのアレク‥‥俺たちでじゃんけんをして俺が負けたから、その俺がお前の変態の相手を‥」

 「要らねぇーし!ぜったい絶対要らねぇーし!」

 「それよかジョング、お前俺の尻子玉取ったりしねぇよな?絶対嫌だかんな!」

 「尻子玉?なんだそれは?」

 「「はぁ?」」


―――――――――――――――


その後、迫害されてきた海人族の真実を知ったデグー一族は、自身の境遇も相まって、また海人族とガタロとの違いも理解できたことにより、差別の元となる偏見も解消できたんだ。

 姫はグランドの北東の一角を、海人族が暮らす占有地とした。

 「焦っちゃダメなのよぉ!」

 レベちゃんの助言もあり、これからは少しずつ双方の理解度は増していくだろう。

 海人族の主な仕事はゴームの木の水中から見守ることとなる。
 陸からは草、水中からは海人族の共同戦線の警らは完璧となった。

 いつしかグランドを襲う船はいなくなったことが、観光地としての評価も一層増した。「女子旅、学生旅行はグランド」が評判となるのであった。


 帝国と大国からの領事館設置の話も進んでいる。大国は魔法学校まで開設してくれるそうなんだ。
 法国は神父様とシスターを増員してくれるというし、エルファニアからはエルフさんと診療所も作ってくれるんだって。グランドはますます発展するんじゃないかな。

 夜、ジョングたち海人族もそろって参加する宴席になった。

 「狐ちゃん、あのときは助けてくれてありがとうね」

 エロかわいい女将さんが言ったんだ。

 「えっ?あのとき?」

 「わからないの?」

 「ん?」

 「フフフ」

 女将さんが猫仮面を付けて言ったんだ。

 「助けてくれてありがとにゃん」

 ギュッッ!

 う、腕に弾力があたる。い、いい匂いがする……。

 「うっ、うっ、うっ‥‥」

 「姐さんダメだ!コイツにそんなことしちや!」

 コジローさんの静止は少し遅かったんだ。



















 ブッシュュュューーーッッ!

 アレクのこの姿を見たジョングたち海人族の皆が納得したらしい。

 「やっぱり魔法使いの変態だ‥‥」



―――――――――――――――



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