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第2章 幼年編
564 決勝トーナメント開幕
しおりを挟む「それではただいまから未成年者武闘祭の決勝戦の開始を宣言します!」
ウオオオォォーーーーーッッ!
シルフィのやつ、いったいどこ遊びにいったんだよ?ほんとに困った奴だなあ。
紙は飛躍的に普及してるんだ。ハチの父ちゃんによれば帝都郊外にも製紙工場ができたんだってさ。さらにその横には印刷所もできたんだって。
活版印刷とガリ板印刷。どっちも飛躍的に文明が進化させたんだろうけど、情報の普及は平和に繋がるって思うから良いんだよ。
ちなみにアレク工房製紙工場ロイズ帝国店にアレク工房印刷所ロイズ帝国店って言うらしいよ。俺‥‥知らんけど。
決勝出場校と書いた紙(チラシみたいなの?)があったから俺も1枚もらったんだ。裏になんか落書きも書けるよ。きっと。
「‥‥」
うーん。ホントならここでシルフィのツッコミがあるはずなのに。何にもないとつまんねえな……。どこ遊びに行ったんだよ。
◎ 決勝トーナメント出場校
① 帝都学園 アレク
② 帝都騎士団 フリージア
③ 陸軍兵学校 ランディ
④ 帝都学校(アポロ校) ジャスティス
⑤ 魔法軍学校 キキ
⑥ モンク僧養成学校 テアトル
⑦ 自治領アブルサム学校 ビリージーン
⑧ 北の辺境コートのコート学園 カラス
⑨ 東の辺境ティティカカのティティカカ学園 メヒコ
⑩ ティンギュー村のティンギュー学園 キザエモン
「アレク君知ってる?この①から⑩までの番号が決勝前に予想された順番なんだって」
「へぇー。じゃあ俺と決勝でやるのはフリージアじゃん」
「フフフ。そうね。毎晩修練には付き合ってもらって悪かったわ。だから、私決勝では少しは良いところをアレク君にみせるからね」
「おお、期待してるよ!」
「それとね、もしアレク君が‥‥その‥‥私に勝ったらね‥‥」
なにやら顔が紅くなったフリージアがゴニョゴニョしだしたんだ。
「大丈夫か!?フリージア?」
心配だったからさ、フリージアのおでこと俺のおでこを合わせたんだ。熱がでてないかなって。そしたらさ、やっぱりちょっと熱っぽかったらさ。
「風邪かよ?本番になにやってんだよフリージアは。ヒール水を頭にかけてやろうか?」
「‥‥」
「アレク君のバカ!変態!」
ガーンッッ!
「痛っ‥‥」
レイピアの柄で頭を殴られたよ。
「うっ、うっ‥‥」
なんで殴られるんだよ。やっぱ俺って変態だって思われてるのかな。
「おいおいアレク、俺を忘れちゃ困るな」
俺よりもひと回り大きなガタイ。銀髪を短髪にしたマッチョマンが声をかけてきたんだ。
「おっすーランディ。3週間ぶりくらいか?」
「おおよ。てかお前最近全然来ねえじゃん。陸軍にはいい練習相手がいねえからな。ときどき相手してくんなきゃ困るぞ」
「すまんすまん。ちょっといろいろやることが山積みでさ」
「どうせお前のことだから保険以外にもなんかやってんだろ。ワハハハハ」
「ああ、ちょっとな。それでって言っちゃ悪いけど、この決勝トーナメント終わったらラーメン屋のタダ券もっていくからさ、ランディ、陸軍のみんなと食べに来てくれよ」
「らあめんや?」
「うん。食堂始めるんだ。ラーメン。めっちゃうまいぞ」
「アレク、お前なに目指してんだよ‥‥」
「なんだろ?」
ワハハハハハ
わははははは
「じゃあ対戦できること楽しみにしてるぞ」
「おおよ」
去っていく男の背中を追いながらフリージアが訊ねる。
「アレク君?」
「今の奴はさ、陸軍兵学校のランディ。あいつの体術はすごくてさ。闘りあうとだいたい5分なんだよ」
「でもそれだってアレク君剣も魔法もあるでしょ?」
「違うんだよなーフリージア。そこは‥」
「「同じ土俵(どひょう)の上!」」
「いいーねフリージア!わかってきたじゃん!」
フフフフフフ
わははははは
シルフィどこ行ったんだよ?
▼
「ジン!シェール!」
「「シルフィちゃん(シルフィ)!」」
円形闘技場内。1階貴賓席に現れたジン・マッカーシーが傍らにやってきた風の精霊シルフィと話を始めた。
唇から話す内容を読まれないよう、口元を隠しているせいはある。が、それは側から見れば独言つレベルのもの。
軽く四方を見渡し、最後には10人の出場者のただ1人に目線を向けたジンが話をはじめる。
「たしかにのお。シルフィちゃん。この凶々しい気は彼奴らのものじゃわい‥‥」
「でしょ。でもね、ジンの孫のコウメもソニアも、青雲館にいるサラもウェンディも残念ながら誰も気づけなかったのよ」
「それは仕方なかろう。なにせわしやシェールでも500年前しか知らんからの」
「でもさ、シルフィのアラート(警報)が効いたんだよ。凶々しい奴らの本体はいなくなったわ。きっと警戒したわね」
「シェールの言うとおりじゃわい。奴等は慎重じゃからの。今は眷属の気しか残っておらんの」
「正直感心するわ。アイツらの慎重さったらないよね!」
「そりゃそうじゃろ。奴等は死ねば輪廻の道から外れるからの」
「で、どうするのジン?」
「そうじゃの。今は静観するしかあるまいて。このまま武闘祭を中止しようものなら、余計奴等の思うままになるからの。
ただ、この武闘祭の後‥‥アレク君も会議に参加してもらうことになるがな」
「ええ。それはもう‥‥仕方ないでしょうね」
「そうよ。なにせ
この広い帝都で実在する奴等を知ってるのはジンと私、シルフィしかいないんだからね」
「して‥‥1つだけええかなシルフィちゃん」
「ええジン」
「今もシェールが言うたのは、奴等に会うたことのあるのはこの3人。
わし、シェール、シルフィちゃん。言い難いことなんじゃが‥‥」
「ええジンの言うとおりよ。アレクは1度闇堕ちしたわ。そこでサタンに会ったことがあるわ。ただアレク本人は気付いていないけどね」
「やはりそうか‥‥」
3人に沈黙が続く。
「じゃあ私はアレクの側にいるから。ジンは偉いお爺ちゃんたちを守ってて」
「わかったよシルフィちゃん」
「それにしてもシルフィちゃんや。よくぞアラートを発現してくれたの。この円形闘技場の中がパニックになったらと思うと肝が冷えるわい」
「ホントね」
同時刻。
帝都のあちらこちらでは……。
「なんでオラのブッヒーが鳴いたのかの?」
「なぜ馬が鳴いたのかいな?」
「ママ、どうしてワンちゃんが鳴いてたの?」
「「「なぜ?」」」
「あっ!シルフィどこ遊びに行ってたんだよ」
「ちょっとジンとシェールのところまでね」
「シルフィのツッコミが入んねぇとなんかおもしろくないんだよね。しかもさ、なんでか知らないけどフリージアには頭を叩かれるしさ‥‥」
「それはアンタが変態なだけよきっと」
「なんだよそれ!」
「それでは決勝リーグ。第1試合は‥‥」
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