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第2章 幼年編
588 会敵
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カーカー
カーカー
窓から一斉に飛び立ったカラスを追って。
ガタッ ガタッ!
ガタガタ ガタガタガタッ!
全員が即座に動いたんだ。
「いくぞアレク君」
「はい!」
そう言った騎士団長のメイズさんを先頭に、陸軍大将のサムさん、冒険者のタムラさん、俺の4人が最初に戸外に飛び出したんだ。
ダッッ!
ダッッ!
ダッッ!
ダッッ!
帝都宮殿前
学校前のグランドみたく、お庭と芝生が広がっていたからそのまま地面を蹴って走り出したよ。
だけど、その先には建物群が前を塞ぐような感じで建っていたんだ。
上を飛ぶカラスたちは下から見ると斜めに飛んで見えるんだよね。だから建物を避けてそのまま1番近い道を走るのかなぁって思ってたんだ。
だけど……。
グンッッ シュタッッ!
タッタッタッタ‥‥
グンッッ シュタッッ!
タッタッタッタ‥‥
グンッッ シュタッッ!
タッタッタッタ‥‥
なんのためらいもなくメイズさんが2階建建物の屋上にジャンプ。そのまま次々と飛び移っていったんだ。
石造の建物の屋根を次々と飛び越えていったよ。
それは冒険者のタムラさんももちろんそうなんだ。だけど、体重100㎏は絶対超えてる陸軍大将のサムさんも例外じゃなかったんだ。
なんたる跳躍力!
なんたる身軽さ!
俺もついていかなきゃ!
グンッッ シュタッッ!
タッタッタッタ‥‥
「アレク気づいてる?」
いつものように俺の横を飛ぶシルフィが言ったんだ。
「みんな魔力の痕跡を残して走ってるってこと?」
「ええそうよ」
先頭を走る3人の強者は細く魔力を残しながら走っていったよ。言ってみれば魔力を垂れ流しながら?
たしかにこうすれば後ろからついてくる人たちも魔力の跡を辿ればいいんだからね。これは後を追いやすいな。
タッタッタッタ‥‥
タッタッタッタ‥‥
タッタッタッタ‥‥
タッタッタッタ‥‥
タッタッタッタ‥‥
タッタッタッタ‥‥
タッタッタッタ‥‥
先頭の俺たちを取り囲みながら左右に広がる翼もしっかり後をついてきているよ。渡り鳥のV字飛行みたいだ。ただ飛んでるのは建物の上だけどね。
カーカーカー
カーカーカー
カーカーカー
カーカーカー
俺たちのさらに上空にはカラス(人)がティムしたカラス(鳥)たちも飛んでいるよ。
▼
時間にしてわずか30分ほど走ったときだった。
「いるわよ。気をつけて!」
シルフィが警戒するように促した直後だった。
ダーーーーーンッッッ!
ダーーーーーンッッッ!
ダーーーーーンッッッ!
前方から銃声のような乾いた音が聞こえてきたんだ。
その直後。
ボオオォォォッッ‥‥
ボオオォォォッッ‥‥
ボオオォォォッッ‥‥
カラス3羽が青白い炎に包まれて撃墜された……。
「まさか‥‥?!」
「ええ。メギドよ!」
「まって!メイズさん停まってください!」
「あ、ああアレク君?」
3人が急停止したんだ。
「アレク、なんか嫌な感じがするな。階層主の部屋に入る前みたいだぞ‥‥」
タムラさんはいかにも冒険者らしい言い方をしたんだ。
「こいつは‥‥前からヒリヒリする気配だな‥‥」
サムさんも背の大剣に手をかけた。皆んなが一気に最上級の警戒態勢となったんだ。
「さっきみたいな前方からの攻撃魔法は絶対に受けないでください。剣でも絶対払っちゃダメです!」
「坊主なぜだ?」
「カラスが撃ち落とされた魔法、メギドって言います」
「「「メギド?」」」
「はい。剣や盾にあたれば金属は腐食します。それよりもっと危険なのは人間の身体です。ほんの少しでも身体に当たれば、そこからさっきのカラスみたいに燃え尽きるまで消えません!」
「それは聖魔法でもか?」
「おそらく聖魔法でも‥‥」
「マジか。マズいなそれは‥‥」
「マジかよ‥‥」
「やべぇなそいつは」
「メギドには俺の魔法を当てますから、3人は悪魔本体だけを狙ってください。
あとは‥‥すいません。どんな攻撃をしてくるのか、まったくわかりません」
「それは仕方ないよアレク君」
「ったりまえだろアレク」
「気にするな坊主」
「はい。ただ撃ち落とされるわけにはいけませんから、ここからは地面を歩いていきましょう。俺も土魔法を発現しやすいですし」
「「「わかった」」」
そこからは4人で歩きだしたんだ。
「私はなんにも言わないからアレクは好きにやりなさい。ただね‥‥」
「‥‥うん。わかったよシルフィ。
みなさん刀をここに。揃えて置いてください」
「「「ん?」」」
「俺の精霊、シルフィが刀に聖魔法を付与します。これで悪魔も斬れるそうです。
効果は今から1点鐘くらいですけど」
「それは便利だね」
「なんだ悪魔は斬れねぇのかよ?」
「聖魔法を付与しないと斬ってもすぐに再生するそうです」
「「「マジか?!」」」
「あとシルフィが言ってるんですが、冒険者のタムラさんが3人で1番隠密が得意みたいですね」
「「「!!!」」」
「見えねぇが精霊はそこまでわかるのかい!?」
「ええ。シルフィがそう言ってますから」
「「「すげぇな精霊って」」」
「そうよ私はすごいのよ!」
「シルフィ聞こえないって」
「(なんだ誰と喋ってやがる?)」
「(精霊とだろ)」
「「(なるほど!)」」
「あはは。そんでタムラさんは気配を消して移動してくださいと。
会敵したらメイズさんとサムさんが悪魔の相手を。俺が後ろから魔法でサポートします。あとはタイミングを見計らってタムラさんが斬るようにお願いします」
「「「わかった」」」
フッッ‥‥
えっ?もう消えた?
すげぇなこの人!言ったはなから姿も気配も消えてなくなったよ!どんだけすげぇスキルだよ!
ザッザッザッザッ‥‥
ザッザッザッザッ‥‥
ザッザッザッザッ‥‥
誰が言うまでもなく自然にメイズさんを先頭に歩き出した。
たぶん後方の何処かからタムラさんもついてきてるはず。
【 帝都宮殿side 】
「アーサー、悪魔の魔法攻撃に何があるかわかるかの?」
「いや知らねえ」
「気をつけなきゃならんのが、例えばメギドじゃ」
「「メギド?」」
「この魔法は聖魔法でしか崩せぬ。というか相殺できんのじゃよ」
「てことは当たったらどうなるんだ老師?」
「たとえ指先でもメギドが掠ろうものなら身体全身が燃え尽きるまでメギドの火は消せぬ」
「「なんじゃそりゃ!?」」
「もちろん回復魔法も効かぬよ。できることといったら、当たった部位をすぐに切除くらいかの」
ジンが自らの腕を斬るゼスチャーをした。
「そりゃまた厄介だな」
「だな、おやっさん」
「アレク君が闇落ちしたとき。彼もメギドを発現できたらしい」
「「‥‥」」
「会敵した敵の悪魔が万が一にもメギドを発現してくるのであれば‥‥アレク君頼りじゃの」
――――――――――
慎重に前進しながら2人の強者が話をしたんだ。
「メイズ、この先には他国の大使館が並ぶぞ」
「まさか‥‥この悪魔騒動は他国がらみかサム?」
「いや‥‥それはないだろう‥‥」
冒険者のタムラさんがそのまま言葉をつないだんだ。
てかどこにも姿見えないんですけど?
「言いたかねぇが‥‥俺ら冒険者の間じゃあ王国に若干不穏な動きがあると思ってる」
「王国?タイラーさんやロジャーさんがいるだろ!?」
「ヴィヨルドは別だよ。てかヴィヨルドくらいだろ、王国で永く友好関係が続いてるのは。なぁアレク?」
「えっ?!俺ガキだから政治のことはぜんぜんわかりません。
でもヴィヨルドは俺たち末端の学生まで帝国を尊敬してますよ」
と。そこまで話したときだった。
「(停まれ!)」
先頭を歩くメイズさんが言った。
前方200メル。
ステッキを突いたダンディなロマンスグレーの紳士が道の真ん中に立っていた。
「おいおいおい、魔力がまったく漏れてねぇじゃねぇか!?」
驚愕のサムさんが思わず言葉を発したんだ。
――――――――――
読書様も増えてまいりました。お読みいただき、ありがとうございます!
年度末ともあり、そろそろ毎日投稿が途切れるううぅぅぅ。あああぁぁぁと吠えている今日この頃です(大汗)
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