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ヴォーカリストとギタリスト
アニソン
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「もしかして涼宮?」
と僕は近頃話題になっていたアニメの名前を口にした。
「お! よぉ分かったな。流石やな」
と翔は驚いたような表情を見せた。
「という事は」
「『God knows...』や」
と翔が胸を張ってのけ反る様に言った。
――何故、お前がドヤ顔になるんや?――
オリジナル曲のこだわりはどこへ行った?
アニソンだと? この曲を今から僕に弾かす気だったのか?
この春卒業した千龍さん達が聞いたら、絶対に部活で『アニヲタめ!」といじられる展開だ。
「また無茶振りやんかぁ」
と僕は呆れ果ててため息混じりに呟いた。
今度の曲もノリのいいロックだ。もちろんオリジナルにはピアノなんか入っていない。
またもや即興でやれという事か……。
その時、僕は肩をポンと叩かれて
「諦めてあと一曲弾けや。俺もお前と一緒にやりたいし」
と声を掛けられた。
振り向けばそれは和樹だった。
「はぁ……これで俺もコミックバンドの一員か……?」
とため息をつくと和樹が
「うんにゃ。コミックバンドの特別ゲストさまや」
と笑った。
「なんか、そっちの方が恥ずかしいな」
「ま、そういう事で楽しくやろうぜ」
と和樹はステージの反対側に歩いて行った。
周りを見渡すとコミックバンドの他のメンバーも舞台に上がってきていた。
勇山が舞台の反対側でピアノの僕と向かい合うように立っていた。
僕と目が合うと、右手で敬礼するように頭の横で軽く手を振って笑っていた。
勇山はキーボードを弾くようだ。
彼にちょっと悪い気もしないではなかったが、和樹とこうやって舞台で演奏するのも初めてだし、ぽっぽちゃんの初舞台だし、最後の一曲だし……と腹を括って僕はピアノの前に座り直した。
翔が満足そうに笑みを浮かべた。
なんだか翔に上手い具合に操られている感じがする。
腹立たしいがやはり彼らとの演奏はそそられる。
周りを見ていてぽっぽちゃんがまだ舞台には上がっていない事に気が付いた。
それを察したように
「みなっさ~ん! 前々から探していたボーカルがやっとみつかりましたぁ!」
と翔が観客席に向かって声を張り上げた。
何故か翔の声がとっても嬉しそうに聞こえる。
――マイク使えよ――
と僕は心の中でツッコんでいた。
『おお!』という太い声の歓声と『ええ?』という高い声が入り混じった何とも言えない歓声が沸き上がった。『知ってるぞ!』という声もその歓声に混じっていた。
前者は軽音楽部員で後者は翔目当てのファンの女子だろう。
軽音楽部のメンバーは勿論今日のデビューを知っているはずだ。でもファンの女子連中はどうなんだろう? 多分知らなかった人が大半ではないだろうか?
「新しいヴォーカルの鳩崎澪! 上がって!」
と翔はぽっぽちゃんの名前を呼んだ。
ぽっぽちゃんは僕の傍を通って舞台の真ん中に立った。
軽音楽部の部員の歓声が上がる。それに押されてファンの女子のため息はかき消されていた。
まあ、翔の前で表立って否定的なポーズは取りにくいだろうと思う。
――あの歌声でねじ伏せればええねん――
と僕はぽっぽちゃんの横顔を見ながら思った。
多分他のメンバーも同じことを思っているのは想像に難くない。
ぽっぽちゃんは微笑みながら舞台の中央まで歩いて行った。
全く物怖じしていない。彼女は本番に強いタイプかもしれない。
マイクスタンドのマイクを右手で掴んで高さを調整すると、ぽっぽちゃんは振り向いて頷いた。
と僕は近頃話題になっていたアニメの名前を口にした。
「お! よぉ分かったな。流石やな」
と翔は驚いたような表情を見せた。
「という事は」
「『God knows...』や」
と翔が胸を張ってのけ反る様に言った。
――何故、お前がドヤ顔になるんや?――
オリジナル曲のこだわりはどこへ行った?
アニソンだと? この曲を今から僕に弾かす気だったのか?
この春卒業した千龍さん達が聞いたら、絶対に部活で『アニヲタめ!」といじられる展開だ。
「また無茶振りやんかぁ」
と僕は呆れ果ててため息混じりに呟いた。
今度の曲もノリのいいロックだ。もちろんオリジナルにはピアノなんか入っていない。
またもや即興でやれという事か……。
その時、僕は肩をポンと叩かれて
「諦めてあと一曲弾けや。俺もお前と一緒にやりたいし」
と声を掛けられた。
振り向けばそれは和樹だった。
「はぁ……これで俺もコミックバンドの一員か……?」
とため息をつくと和樹が
「うんにゃ。コミックバンドの特別ゲストさまや」
と笑った。
「なんか、そっちの方が恥ずかしいな」
「ま、そういう事で楽しくやろうぜ」
と和樹はステージの反対側に歩いて行った。
周りを見渡すとコミックバンドの他のメンバーも舞台に上がってきていた。
勇山が舞台の反対側でピアノの僕と向かい合うように立っていた。
僕と目が合うと、右手で敬礼するように頭の横で軽く手を振って笑っていた。
勇山はキーボードを弾くようだ。
彼にちょっと悪い気もしないではなかったが、和樹とこうやって舞台で演奏するのも初めてだし、ぽっぽちゃんの初舞台だし、最後の一曲だし……と腹を括って僕はピアノの前に座り直した。
翔が満足そうに笑みを浮かべた。
なんだか翔に上手い具合に操られている感じがする。
腹立たしいがやはり彼らとの演奏はそそられる。
周りを見ていてぽっぽちゃんがまだ舞台には上がっていない事に気が付いた。
それを察したように
「みなっさ~ん! 前々から探していたボーカルがやっとみつかりましたぁ!」
と翔が観客席に向かって声を張り上げた。
何故か翔の声がとっても嬉しそうに聞こえる。
――マイク使えよ――
と僕は心の中でツッコんでいた。
『おお!』という太い声の歓声と『ええ?』という高い声が入り混じった何とも言えない歓声が沸き上がった。『知ってるぞ!』という声もその歓声に混じっていた。
前者は軽音楽部員で後者は翔目当てのファンの女子だろう。
軽音楽部のメンバーは勿論今日のデビューを知っているはずだ。でもファンの女子連中はどうなんだろう? 多分知らなかった人が大半ではないだろうか?
「新しいヴォーカルの鳩崎澪! 上がって!」
と翔はぽっぽちゃんの名前を呼んだ。
ぽっぽちゃんは僕の傍を通って舞台の真ん中に立った。
軽音楽部の部員の歓声が上がる。それに押されてファンの女子のため息はかき消されていた。
まあ、翔の前で表立って否定的なポーズは取りにくいだろうと思う。
――あの歌声でねじ伏せればええねん――
と僕はぽっぽちゃんの横顔を見ながら思った。
多分他のメンバーも同じことを思っているのは想像に難くない。
ぽっぽちゃんは微笑みながら舞台の中央まで歩いて行った。
全く物怖じしていない。彼女は本番に強いタイプかもしれない。
マイクスタンドのマイクを右手で掴んで高さを調整すると、ぽっぽちゃんは振り向いて頷いた。
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※この物語はフィクションです。
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