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第六話
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ファーレンハウト領までの道のりは穏やかなものであったが、エルノワの心は穏やかとは言えなかった。
何故、ヴァイン様からのお呼び出しなのか。
お父様は一体何をご存知なのか。
そして、この旅路は、なんて美しいもので溢れているのだろうか。
「なんて美しい山々!お願い、ちょっとだけ!ほんのちょっとだけスケッチをさせて!」
「いけません、お嬢様。旦那様にも出来るだけ旅路を急ぐように言われております」
「一時間でいいから!」
「いけません」
「三十分!」
「ダメです」
「十分!お願い!」
「ダメなものはダメです!」
道中は始終こんな有様で、
「お願い!一分でいいわ!目に焼き付けて馬車の中でスケッチするの!お願いお願いお願いー!」
とのしつこいお願い攻撃に侍女が折れた。
馬車で一日半の行程の中でエルノワのスケッチの為の停車時間が数回発生したが、旅路は順調であったと言えるだろう。
「五十九、六十!はい出発です!エルノワお嬢様!」
と、きっかり六十秒だけで済ませた侍女はさすがとしか言いようがない。
ちなみに敏腕侍女の彼女は、エルノワお嬢様の扱いのプロとして、フロスティ家の使用人達から密かに尊敬されている。
長いようで短い、エルノワにとってはあっという間(スケッチに夢中だったので)の馬車の旅は、側仕えと使用人達の努力もあり無事に終了を向かえる。
先触れを送り、もうそろそろですよと言われ馬車から外を眺めると、立派な街並みが現れていた。
「まあ、なんて賑やかで活気のある街でしょう」
隣国と我が国との国境にある辺境伯領。
街を歩く人々は他国の民も多いようで、見たこともない肌の色の者や不思議な服を着ている者もいる。
はっきりとわかる旅装束で、自分の身長の倍はあるであろう荷を担ぐ者は行商だろうか。
行き交う馬車の数も多いが、とにかく人が多い。
雑多で、騒がしいが、我が国は栄えているのだと強く印象を受ける。
なるほど、この街は他国から入る者からすればこの国の顔なのだろう。
きっちりと整備された石畳の道、その両脇に揃えて建てられている頑丈そうな家々、そしてこの活気。国力を感じさせるに十分だ。
「本当に賑やかでございますね。あ、ご覧下さいお嬢様、あの大きなお屋敷がファーレンハウト家のお屋敷ではございませんか?」
栄えた街並みの最奥、まだかなり距離があるにも関わらずそれでも大きく見えるお屋敷は、まさに雄大豪壮と呼ぶにふさわしい姿であった。
「……あそこには、何が待っているのかしら」
立派な街、立派なお屋敷。
エルノワは、ちっぽけでなにも出来ない自分が、さらに小さくなったように感じていた。
逃げ帰りたい……。でももう、逃げる事は許されないのである。
何故、ヴァイン様からのお呼び出しなのか。
お父様は一体何をご存知なのか。
そして、この旅路は、なんて美しいもので溢れているのだろうか。
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「いけません、お嬢様。旦那様にも出来るだけ旅路を急ぐように言われております」
「一時間でいいから!」
「いけません」
「三十分!」
「ダメです」
「十分!お願い!」
「ダメなものはダメです!」
道中は始終こんな有様で、
「お願い!一分でいいわ!目に焼き付けて馬車の中でスケッチするの!お願いお願いお願いー!」
とのしつこいお願い攻撃に侍女が折れた。
馬車で一日半の行程の中でエルノワのスケッチの為の停車時間が数回発生したが、旅路は順調であったと言えるだろう。
「五十九、六十!はい出発です!エルノワお嬢様!」
と、きっかり六十秒だけで済ませた侍女はさすがとしか言いようがない。
ちなみに敏腕侍女の彼女は、エルノワお嬢様の扱いのプロとして、フロスティ家の使用人達から密かに尊敬されている。
長いようで短い、エルノワにとってはあっという間(スケッチに夢中だったので)の馬車の旅は、側仕えと使用人達の努力もあり無事に終了を向かえる。
先触れを送り、もうそろそろですよと言われ馬車から外を眺めると、立派な街並みが現れていた。
「まあ、なんて賑やかで活気のある街でしょう」
隣国と我が国との国境にある辺境伯領。
街を歩く人々は他国の民も多いようで、見たこともない肌の色の者や不思議な服を着ている者もいる。
はっきりとわかる旅装束で、自分の身長の倍はあるであろう荷を担ぐ者は行商だろうか。
行き交う馬車の数も多いが、とにかく人が多い。
雑多で、騒がしいが、我が国は栄えているのだと強く印象を受ける。
なるほど、この街は他国から入る者からすればこの国の顔なのだろう。
きっちりと整備された石畳の道、その両脇に揃えて建てられている頑丈そうな家々、そしてこの活気。国力を感じさせるに十分だ。
「本当に賑やかでございますね。あ、ご覧下さいお嬢様、あの大きなお屋敷がファーレンハウト家のお屋敷ではございませんか?」
栄えた街並みの最奥、まだかなり距離があるにも関わらずそれでも大きく見えるお屋敷は、まさに雄大豪壮と呼ぶにふさわしい姿であった。
「……あそこには、何が待っているのかしら」
立派な街、立派なお屋敷。
エルノワは、ちっぽけでなにも出来ない自分が、さらに小さくなったように感じていた。
逃げ帰りたい……。でももう、逃げる事は許されないのである。
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