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第十六話
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奇跡に近いと言われても。
どれだけ死の色が濃くても。
人は、誰しもいつか必ず死ぬのだと知っていても。
知っているからと言って、実感を伴い理解し、納得出来ているかは別だ。
もし納得出来る人間がいたとしても、悲しくないかはさらに別の話しだろう。
それをわたくしは、わかっていなかった。
「ヴァイン!ああ、誰か来て!誰か!」
ヴァインの呼吸が止まった。
侍女が慌ただしく動き、控えていた医者が呼ばれる。
目の前で必死の蘇生が行われているのに、なんだか音も遠くに聞こえるようで、本当に自分で今見ている現実なのかと、何故、どうしてと頭が理解を拒む。
いつか、こんな日がくると知っていた。
だが毎日を一緒に過ごし笑いあっていると、なんとなく彼なら大丈夫なのではないか、奇跡が起きるのではないかと考えていた。
だって彼はどんな時も笑顔を絶やさなかったから。
だから、もしかしたら夫婦で笑いあっていられる未来もあるのではないかと、どこかでそう期待してしまった。
「奥様!お声をおかけ下さい!旦那様を呼び戻して下さい!」
いつも控えていてくれる侍女が、叫ぶように言う。
そうだ、惚けている場合ではない。
ヴァインの部屋では外してはいけないと本人から言い含められていた手袋を外し、ヴァインの痩けた頬に手を当てる。
「ヴァイン!旦那様!起きて下さいませ!わたくし、今手袋もせずに、貴方にふれております!ダメなんでしょう?いけないんでしょう?早く起きてしかって下さいませ!ヴァイン!ねぇ!ヴァイン!」
ひたすらに名を呼び続けた。
「ヴァイン!もうすぐ今描いている絵が描き上がりますわ!内緒にしてましたけれど、あれ、実は貴方を描いてますのよ!ご本人に見ていただかなくては、わたくし拗ねてしまいますわ!」
「……っ!いいぞ!呼吸が戻った!」
小さく咳き込むように一つ呼吸をした。
生きてる!ヴァインは、生きてる!
「そうよ、息をして!お願い、まだまだ全然話し足りないの。聞きたい事もたくさんあるのよ。お願い、お願い、戻ってきて……」
「呼吸が安定してきた。一先ず、乗り越えられましたぞ」
医師が厳しい顔のまま、ふう、と息を吐く。
「しかし、意識が戻られるかどうかは、神にしかわかりません。奥様、どんどん話しかけて下さい。聞こえているんです、戻ってきたいと思えるように名前を呼んでさしあげて下さい」
医師が部屋をあとにすると、いつの間にか、部屋にはお義父様お義母様、ヴィヌ様もいらしていた。
わたくしはまったく気づいていなくて、驚いてしまった。
「皆様……、すみません、気づきませんで……」
「いいの、いいのよ。エルノワさん、ありがとう」
お義母様が両手を握ってくれる。
「貴女がヴァインを呼び戻してくれた。大丈夫だ、絶対に目を覚ますよ。こら、ヴァイン!君の奥方が泣いてしまったじゃないか。君がなぐさめてあげないと可哀想だろう」
言われて目元に指先をあてる。
本当だ。いつの間に。
「旦那様に……、泣かされてしまいましたわ」
「本当だ。可愛い奥さんを泣かすだなんて、ひどい旦那だ」
ヴァインの意識は戻らなかった。
とても眠る事が出来なくて、ずっとヴァインの手を握って、なんでもない事を話しかけ続けた。
また呼吸が止まってしまうのではないかと、胸元の動きを見て呼吸をしているのを確認し、顔を見ては口元の呼吸を確認するのを無意識に交互に繰り返していた。
一瞬も目を離したくなかった。
※本日中に完結までの全話を投稿したいと思います。
お時間がありましたら、お付き合いいただけますと幸いです。宜しくお願い致します。
どれだけ死の色が濃くても。
人は、誰しもいつか必ず死ぬのだと知っていても。
知っているからと言って、実感を伴い理解し、納得出来ているかは別だ。
もし納得出来る人間がいたとしても、悲しくないかはさらに別の話しだろう。
それをわたくしは、わかっていなかった。
「ヴァイン!ああ、誰か来て!誰か!」
ヴァインの呼吸が止まった。
侍女が慌ただしく動き、控えていた医者が呼ばれる。
目の前で必死の蘇生が行われているのに、なんだか音も遠くに聞こえるようで、本当に自分で今見ている現実なのかと、何故、どうしてと頭が理解を拒む。
いつか、こんな日がくると知っていた。
だが毎日を一緒に過ごし笑いあっていると、なんとなく彼なら大丈夫なのではないか、奇跡が起きるのではないかと考えていた。
だって彼はどんな時も笑顔を絶やさなかったから。
だから、もしかしたら夫婦で笑いあっていられる未来もあるのではないかと、どこかでそう期待してしまった。
「奥様!お声をおかけ下さい!旦那様を呼び戻して下さい!」
いつも控えていてくれる侍女が、叫ぶように言う。
そうだ、惚けている場合ではない。
ヴァインの部屋では外してはいけないと本人から言い含められていた手袋を外し、ヴァインの痩けた頬に手を当てる。
「ヴァイン!旦那様!起きて下さいませ!わたくし、今手袋もせずに、貴方にふれております!ダメなんでしょう?いけないんでしょう?早く起きてしかって下さいませ!ヴァイン!ねぇ!ヴァイン!」
ひたすらに名を呼び続けた。
「ヴァイン!もうすぐ今描いている絵が描き上がりますわ!内緒にしてましたけれど、あれ、実は貴方を描いてますのよ!ご本人に見ていただかなくては、わたくし拗ねてしまいますわ!」
「……っ!いいぞ!呼吸が戻った!」
小さく咳き込むように一つ呼吸をした。
生きてる!ヴァインは、生きてる!
「そうよ、息をして!お願い、まだまだ全然話し足りないの。聞きたい事もたくさんあるのよ。お願い、お願い、戻ってきて……」
「呼吸が安定してきた。一先ず、乗り越えられましたぞ」
医師が厳しい顔のまま、ふう、と息を吐く。
「しかし、意識が戻られるかどうかは、神にしかわかりません。奥様、どんどん話しかけて下さい。聞こえているんです、戻ってきたいと思えるように名前を呼んでさしあげて下さい」
医師が部屋をあとにすると、いつの間にか、部屋にはお義父様お義母様、ヴィヌ様もいらしていた。
わたくしはまったく気づいていなくて、驚いてしまった。
「皆様……、すみません、気づきませんで……」
「いいの、いいのよ。エルノワさん、ありがとう」
お義母様が両手を握ってくれる。
「貴女がヴァインを呼び戻してくれた。大丈夫だ、絶対に目を覚ますよ。こら、ヴァイン!君の奥方が泣いてしまったじゃないか。君がなぐさめてあげないと可哀想だろう」
言われて目元に指先をあてる。
本当だ。いつの間に。
「旦那様に……、泣かされてしまいましたわ」
「本当だ。可愛い奥さんを泣かすだなんて、ひどい旦那だ」
ヴァインの意識は戻らなかった。
とても眠る事が出来なくて、ずっとヴァインの手を握って、なんでもない事を話しかけ続けた。
また呼吸が止まってしまうのではないかと、胸元の動きを見て呼吸をしているのを確認し、顔を見ては口元の呼吸を確認するのを無意識に交互に繰り返していた。
一瞬も目を離したくなかった。
※本日中に完結までの全話を投稿したいと思います。
お時間がありましたら、お付き合いいただけますと幸いです。宜しくお願い致します。
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