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プロローグ
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"好きな人"について語らせて欲しい。
彼の名はアルフレート・ランゲという。
16歳で入った軍学校。その入学式でやたら背が高い男性が目に留まった。
親友や兄以外で背が高い人を見たことがなかった彼が、とても印象的であった。
それがアルフレードだった。
忙しい軍学校生活の中でなんとなく目で追うようになり、彼の活躍や話を聞く内に好意を抱くようになっていた。
巨人の異名を持つランゲ家の3男で、父方母方ともに軍人の家系。両親や祖父母を慕い、8歳以上離れている兄2人とは仲が良い。
服を着ていてもわかるメリハリのある筋肉は飾りではなく、魔術と組み合わせた戦闘スタイルは大砲と変わらない威力を発揮。
顔の造形も美しく、鋭い目元に透き通った氷のような水色の瞳。短くまとめられたグレーの髪は光を受けると柔らかく輝く。精悍な顔つきと落ち着いた雰囲気からずいぶんと大人びて見えるけれど、ライバル意識を向けてくる同輩との接し方に悩んだり、食堂のメニューが好物だった時に浮かべる無邪気な笑顔。自由奔放なお兄さんに振り回されている姿は年相応で親しみやすい。
もちろん苦手なことや弱点もある。 1番は人付き合い。普段は意識的に社交的に振る舞っているが、本来は内向的な性格で、個人の交流となると途端に会話を続けられない上、言葉選びが相応しくないか足らず相手を誤解させる時があるのだとか。友人から注意を受けては、落ち込む姿を度々見かけた。
他にも手先は器用だが手が大きく、細かな作業に時間がかかり肩が凝りやすい。体温が高く冬でも薄着で過ごすが風邪を引く、など。後ろの2つを知った時はつい頬を緩ませてしまった。
まるで主人公のようなのに、ただただ普通の男の子。そのギャップに魅了されてしまったのかもしれない。
どんな一面にも惹かれてしまう。
そもそも存在が尊い。
自分の感情に気づいた時はとても驚いた。
大切な人たち以外は興味がないと自覚していたので、気が付かない内に特定の誰かに好意を寄せるとは思っていなかったから。
…その割に重みがあることは承知している。話したこともない相手に、どうしようもない感情を抱いていると自覚はあるが想いは募るばかり。彼と仲良くなりたいと一切思わなかったけれど、誰かとアルフレードについて話をしたい欲が溢れんばかりに増していく。しかし知り合いですらない異性を話題にすることは憚られ、1人でこっそり熱を上げる日々を過ごすしかなかった。
そんな毎日に転換期が訪れた。軍学校に入ってから初めての長期休み。親友3人と女子会を開いた時に親友の1人ー彼女は同じく軍試験に受かり同じ学校にいるーに指摘されたのだ。
『よくアルフレードを見つめてる…。さてはアイツに恋をしたな!』
親友の3人は子供の時から、かれこれ5年以上の長い付き合いがある。私があまり他人と関わらない、または関心を持たない事を彼女たちはよくよく知っていた。
なにより多感な年頃の女の子が集まれば恋や愛は最高の話のネタであり、追求は凄まじいものであった。
私は誤魔化したり隠すことはせず「アルフレードに惚れた」と素直に白状した。すると今まで隠し思っていたことが堰を切ったように溢れ出し、長々と彼について語ってしまった。
突然始まったトークショーに1人は楽しそうに、1人は呆れたように、1人はうっとりしながら話をしっかり聞いてくれた。一通り語り終えた後、楽しそうに話を聞いていた友人が呟いた。
『貴女はアルフレードを推してもいるのね』
『推し?』
曰く、熱烈に応援したい、その魅力を伝えたいほど愛ーこの場合の愛は恋愛とは関係なくていいーをかける特定の人物や物のこと。
何を隠そうこの親友こそ、私たちが暮らすファラデウス国代表の子息と、婚約者の隣国の姫を熱烈に応援活動をしている”カップリング&ロイヤルファン”だ。お2人が出席される催しには絶対に参加し、ブロマイド写真といったアイテムは沢山収蔵・展示している。彼らと関わり深い他国のトップにも詳しいほど"推し活"に精を出している。
そんな彼女のように、私がアルフレードを"推し"ている?
推し、推し、推し、推し、推し。
言葉を繰り返すほど、深く、深く納得した。
確かにアルフレードは好きだが、私にとって元気の象徴だ。彼と恋愛関係になりたい訳ではない。なにより語り尽くしたい。つまり、魅力を伝えたい、と言うことだろう。
((推し!なるほど!そうに違いない!))
この瞬間からアルフレート・ランゲは、私、アンジュ・ブルナーにとっての’’推し’’になった。
それから私はアルフレード・ランゲの推し活を始め、人生に新しい彩りが生まれたのだ。
そんな推しが数年後に自分の婚約者になったのだから、人生は何が起こるかわからない。
彼の名はアルフレート・ランゲという。
16歳で入った軍学校。その入学式でやたら背が高い男性が目に留まった。
親友や兄以外で背が高い人を見たことがなかった彼が、とても印象的であった。
それがアルフレードだった。
忙しい軍学校生活の中でなんとなく目で追うようになり、彼の活躍や話を聞く内に好意を抱くようになっていた。
巨人の異名を持つランゲ家の3男で、父方母方ともに軍人の家系。両親や祖父母を慕い、8歳以上離れている兄2人とは仲が良い。
服を着ていてもわかるメリハリのある筋肉は飾りではなく、魔術と組み合わせた戦闘スタイルは大砲と変わらない威力を発揮。
顔の造形も美しく、鋭い目元に透き通った氷のような水色の瞳。短くまとめられたグレーの髪は光を受けると柔らかく輝く。精悍な顔つきと落ち着いた雰囲気からずいぶんと大人びて見えるけれど、ライバル意識を向けてくる同輩との接し方に悩んだり、食堂のメニューが好物だった時に浮かべる無邪気な笑顔。自由奔放なお兄さんに振り回されている姿は年相応で親しみやすい。
もちろん苦手なことや弱点もある。 1番は人付き合い。普段は意識的に社交的に振る舞っているが、本来は内向的な性格で、個人の交流となると途端に会話を続けられない上、言葉選びが相応しくないか足らず相手を誤解させる時があるのだとか。友人から注意を受けては、落ち込む姿を度々見かけた。
他にも手先は器用だが手が大きく、細かな作業に時間がかかり肩が凝りやすい。体温が高く冬でも薄着で過ごすが風邪を引く、など。後ろの2つを知った時はつい頬を緩ませてしまった。
まるで主人公のようなのに、ただただ普通の男の子。そのギャップに魅了されてしまったのかもしれない。
どんな一面にも惹かれてしまう。
そもそも存在が尊い。
自分の感情に気づいた時はとても驚いた。
大切な人たち以外は興味がないと自覚していたので、気が付かない内に特定の誰かに好意を寄せるとは思っていなかったから。
…その割に重みがあることは承知している。話したこともない相手に、どうしようもない感情を抱いていると自覚はあるが想いは募るばかり。彼と仲良くなりたいと一切思わなかったけれど、誰かとアルフレードについて話をしたい欲が溢れんばかりに増していく。しかし知り合いですらない異性を話題にすることは憚られ、1人でこっそり熱を上げる日々を過ごすしかなかった。
そんな毎日に転換期が訪れた。軍学校に入ってから初めての長期休み。親友3人と女子会を開いた時に親友の1人ー彼女は同じく軍試験に受かり同じ学校にいるーに指摘されたのだ。
『よくアルフレードを見つめてる…。さてはアイツに恋をしたな!』
親友の3人は子供の時から、かれこれ5年以上の長い付き合いがある。私があまり他人と関わらない、または関心を持たない事を彼女たちはよくよく知っていた。
なにより多感な年頃の女の子が集まれば恋や愛は最高の話のネタであり、追求は凄まじいものであった。
私は誤魔化したり隠すことはせず「アルフレードに惚れた」と素直に白状した。すると今まで隠し思っていたことが堰を切ったように溢れ出し、長々と彼について語ってしまった。
突然始まったトークショーに1人は楽しそうに、1人は呆れたように、1人はうっとりしながら話をしっかり聞いてくれた。一通り語り終えた後、楽しそうに話を聞いていた友人が呟いた。
『貴女はアルフレードを推してもいるのね』
『推し?』
曰く、熱烈に応援したい、その魅力を伝えたいほど愛ーこの場合の愛は恋愛とは関係なくていいーをかける特定の人物や物のこと。
何を隠そうこの親友こそ、私たちが暮らすファラデウス国代表の子息と、婚約者の隣国の姫を熱烈に応援活動をしている”カップリング&ロイヤルファン”だ。お2人が出席される催しには絶対に参加し、ブロマイド写真といったアイテムは沢山収蔵・展示している。彼らと関わり深い他国のトップにも詳しいほど"推し活"に精を出している。
そんな彼女のように、私がアルフレードを"推し"ている?
推し、推し、推し、推し、推し。
言葉を繰り返すほど、深く、深く納得した。
確かにアルフレードは好きだが、私にとって元気の象徴だ。彼と恋愛関係になりたい訳ではない。なにより語り尽くしたい。つまり、魅力を伝えたい、と言うことだろう。
((推し!なるほど!そうに違いない!))
この瞬間からアルフレート・ランゲは、私、アンジュ・ブルナーにとっての’’推し’’になった。
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