6 / 7
エピソード2
6話 立ち止まるな。
しおりを挟む
接見のために永澤真紀のところに向かった真はまず、永澤に挨拶をした。
「前田裕美さんから依頼を受けて、永澤さんの弁護をさせていただくことになった高城真です。事件のことを詳しくお聞きかせ願いませんか。」
「裕美が依頼してくれたんですか。なんか申し訳ないなぁ、、」
永澤からは不甲斐なさが感じられた。
「あっ、事件のことですよね。私はやってないんです。」
「なるほど。全く身に覚えがないということですか?」
「そうなんです。毒物なんか見たことすらありませんし、それを使ったなんてとてもじゃないけどありません。」
「わかりました。来客してきた方、すなわち被害者の方についても詳しく聞きたいのですが、どういう方だったのですか?」
「来客できていたのは、うちの取引先の方で、そこの専務をされている方です。」
「なるほど。何か取引している上で、うまくいっていないこととかありませんでしたか?」
「いやぁ、取引に関しては私は詳しくはわからないのですが、いつもうちの会社によくしてくれていた方なので、私だけでなく、うちの会社のものがあの方を殺害すること自体考えられないです。」
「ならば、関係性は別に悪くなかったということですね。わかりました。」
「あともう一つお尋ねしたいのですが、あの場所にあなたと被害者以外に誰がいましたか?」
「うちの社長と社長の秘書です。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「あの~、私本当にやっていないんです。もう今、毎日が怖くて。」
「僕は永澤さんを信じていますから安心してください。本当にやっていないなら疑いはきっと晴れます。」
「よろしくお願いします。」
真は接見を終えて、家に帰った。
すると、家に由莉の姿はなく、一枚の手紙が置いてあった。
そこには次のように書かれていた。
真へ。
私は家を出て行きます。
前々から真の仕事が忙しくて、出かけたり話したりする機会も減って、寂しかったの。
直接言えばよかったんだけど、真が仕事を頑張っているのを見ると、なかなか言い出せなくて。
真は弁護士に向いてると思うし、これからもずっと頑張ってほしいと思う。
だから、これからも真は困ってる人たちをたくさん助けてあげてね。
また、どこかで会ったら、その時は友達として仲良くしてください。
由莉
真はとっさに、携帯で由莉に電話をかけたが、由莉は出なかった。
真は由莉の寂しさに気づけなかった自分に苛立ちを感じ、由莉がいなくなってしまったことにとてつもない寂しと悲しさを感じた。
次の日、真はいつも通り事務所に向かった。
いつもより暗い真を見た麻実が
「あれ真くん、なんか元気ないなぁ。さては、彼女に振られたな。」と冗談ぽくいうと、
「はい。」と真は返した。
麻実は一瞬何が起こったのかわからないような感覚になり、その後、自分が冗談で言ったことを後悔した。
「ごめんね。真くん、私そんな真くんの心の傷を深くするつもりはなかったの。」
「大丈夫ですよ。」
2人は気まずい雰囲気になってしまった。
「そういえば、真くん、何か事件の手がかりはあった?」と麻実が尋ねた。
「いや、まだ全然です。」と、真は無気力で答えた。
それから数週間が経過し、西堂が退院して事務所に戻ってきた。
「高城くん、永澤真紀さんの事件について何か突破口は見えたかね?」と西堂が真に聞くと、
真はまだ何か元気がなさそうに、
「いえ、まだそれらしき突破口は見つかってないです。」
と答えた。
「高城くん、麻実くんから聞いたが、彼女に振られたそうだね。それで仕事に力が入っていないとかではないだろうね?」
「そんなことありません。でも、確かに、いつもの自分よりかは、活力が感じられないのも事実です。」
「高城くん。弁護士というのはな、どんな時でも、依頼人の側に寄り添って1番の味方でいてあげないといけないんだ。君が彼女に振られたからって裁判所は裁判を延期してくれるわけでもないし、検察が起訴を取り下げてくれるわけでもない。だから、君が立ち止まったら、君を頼りにしている人の希望が薄れてしまうことになるんだ。」
西堂は真を諭すようにそう言った。
真は西堂に言われたことで、いつもの自分を取り戻してきたような感じがした。
「前田裕美さんから依頼を受けて、永澤さんの弁護をさせていただくことになった高城真です。事件のことを詳しくお聞きかせ願いませんか。」
「裕美が依頼してくれたんですか。なんか申し訳ないなぁ、、」
永澤からは不甲斐なさが感じられた。
「あっ、事件のことですよね。私はやってないんです。」
「なるほど。全く身に覚えがないということですか?」
「そうなんです。毒物なんか見たことすらありませんし、それを使ったなんてとてもじゃないけどありません。」
「わかりました。来客してきた方、すなわち被害者の方についても詳しく聞きたいのですが、どういう方だったのですか?」
「来客できていたのは、うちの取引先の方で、そこの専務をされている方です。」
「なるほど。何か取引している上で、うまくいっていないこととかありませんでしたか?」
「いやぁ、取引に関しては私は詳しくはわからないのですが、いつもうちの会社によくしてくれていた方なので、私だけでなく、うちの会社のものがあの方を殺害すること自体考えられないです。」
「ならば、関係性は別に悪くなかったということですね。わかりました。」
「あともう一つお尋ねしたいのですが、あの場所にあなたと被害者以外に誰がいましたか?」
「うちの社長と社長の秘書です。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「あの~、私本当にやっていないんです。もう今、毎日が怖くて。」
「僕は永澤さんを信じていますから安心してください。本当にやっていないなら疑いはきっと晴れます。」
「よろしくお願いします。」
真は接見を終えて、家に帰った。
すると、家に由莉の姿はなく、一枚の手紙が置いてあった。
そこには次のように書かれていた。
真へ。
私は家を出て行きます。
前々から真の仕事が忙しくて、出かけたり話したりする機会も減って、寂しかったの。
直接言えばよかったんだけど、真が仕事を頑張っているのを見ると、なかなか言い出せなくて。
真は弁護士に向いてると思うし、これからもずっと頑張ってほしいと思う。
だから、これからも真は困ってる人たちをたくさん助けてあげてね。
また、どこかで会ったら、その時は友達として仲良くしてください。
由莉
真はとっさに、携帯で由莉に電話をかけたが、由莉は出なかった。
真は由莉の寂しさに気づけなかった自分に苛立ちを感じ、由莉がいなくなってしまったことにとてつもない寂しと悲しさを感じた。
次の日、真はいつも通り事務所に向かった。
いつもより暗い真を見た麻実が
「あれ真くん、なんか元気ないなぁ。さては、彼女に振られたな。」と冗談ぽくいうと、
「はい。」と真は返した。
麻実は一瞬何が起こったのかわからないような感覚になり、その後、自分が冗談で言ったことを後悔した。
「ごめんね。真くん、私そんな真くんの心の傷を深くするつもりはなかったの。」
「大丈夫ですよ。」
2人は気まずい雰囲気になってしまった。
「そういえば、真くん、何か事件の手がかりはあった?」と麻実が尋ねた。
「いや、まだ全然です。」と、真は無気力で答えた。
それから数週間が経過し、西堂が退院して事務所に戻ってきた。
「高城くん、永澤真紀さんの事件について何か突破口は見えたかね?」と西堂が真に聞くと、
真はまだ何か元気がなさそうに、
「いえ、まだそれらしき突破口は見つかってないです。」
と答えた。
「高城くん、麻実くんから聞いたが、彼女に振られたそうだね。それで仕事に力が入っていないとかではないだろうね?」
「そんなことありません。でも、確かに、いつもの自分よりかは、活力が感じられないのも事実です。」
「高城くん。弁護士というのはな、どんな時でも、依頼人の側に寄り添って1番の味方でいてあげないといけないんだ。君が彼女に振られたからって裁判所は裁判を延期してくれるわけでもないし、検察が起訴を取り下げてくれるわけでもない。だから、君が立ち止まったら、君を頼りにしている人の希望が薄れてしまうことになるんだ。」
西堂は真を諭すようにそう言った。
真は西堂に言われたことで、いつもの自分を取り戻してきたような感じがした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる