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第二章 HOW To ヒート!

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☆尊が朝からかけた楽曲はショーン・メンデスのThere's Nothing Holdin' Me Backです。俺の今の心情。みたいな気分でかけてます。そういえば番外編からしれっと小野寺君「尊」になってます。


 お世話させてとか大見えを切った割に、家に大した買い置きがないのは昨日の夜から変わらない。考えてみたらわかりそうなことなのにすっかり舞い上がっていた自分が恥ずかしくなる。

(青葉は普段朝から何食べてるんだろうな。うちのバイト先でもいつも甘いもの食べたり飲んだりしてるイメージがあるから、パンケーキとかトロトロのフレンチトーストとか食べてそう。作ってあげたいけど、卵すら買い置きがない)
 このところ外食や弁当ですませていたのがこんなところで仇になってしまった。
 ちゃんと自炊もしなさいよ!という母や姉の小言を聞いておけばよかった。
 いろいろ考えては見たものの結局作れたのが牛乳をかけただけのシリアル。自分もプロテインをごくごくと飲んでそれでしまいにした。

「これも食べる?」

 南国の木で作られた明るい色のお盆を膝の上に置いて、眠たげに眼を細めている青葉の口元に皮をむいたバナナの白い果肉を差し出してやると、赤い舌を出しぱくっと食べた。小鳥が啄むような食べ方が可愛いし、なにより少しだけ、赤みが残る目元と相まって、エロい。

「あんま。見なくていいってば」

 目が合ったら恥ずかしげにそらされて、もしょりもしょりと口を動かす。半分まで食べたらもう首を振って「もういい」と首を振ったので残りは尊が食べ切った。
 きりりっとアルバイトに精を出す姿も格好がいいが、くつろぎ切った姿もまた乙なものである。なんとなく猫っぽいしなやかな身のこなしでただそこにいる姿を見るだけで癒されるものがある。

「本当にごめん、こんなのしかなくて。あとで買い出し行ってくるから」
「え? なんで? 俺、別にシリアル好きだし。朝なんていつも、大したもの食べないよ。それよりさぁ」

 青葉はベッドに腰かけた尊の腕にすりりっと甘えるような仕草で顔を摺り寄せてきた。青葉としては今もまだ夜の火照りが残る身体の奥の疼きを尊の素肌に触れて鎮めたい気持ちになっていたのだが、かなり強い抑制剤を飲んでいる尊はもはや清々しい普段通りの朝の中にいた。
 頭の中はこれからまだ一週間近くある、青葉と初めて過ごす発情期の段取りで頭がいっぱいだった。

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