仄暗い灯が迷子の二人を包むまで

霞花怜

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第Ⅳ.5章 番外:仄暗R18アンソロジー『温かな暗がりが愛する二人を包む夜』

Cp7.護×直桜『唯一の魔酒⑤(直桜目線)』

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 最後に回るのは班長・須能忍の所だ。
 直桜は地下二階の忍の部屋に向かった。
 扉を開けた忍が、直桜の表情を眺めて怪訝な顔をした。

「一先ず、入れ」

 部屋に入り、ソファに腰掛ける。 
 那智がコーヒーを出してくれた。

「あのね、木札持って来たんだ。それで、祝福をね、忍にも渡したいんだけど」
「何かあったか?」

 直桜は俯いたまま頷いた。

「木札を渡したのは、覚えてるんだ。でも、祝福を与えてる時の記憶がなくて、もしかしたら俺、とんでもないこと、しちゃってるかもしれない」

 忍が那智と顔を合わせる。

「何処を廻ってきた?」
「解析室と回復治療室、あと呪法解析部。皆、祝福を与えた後に寝ちゃってて。ただ寝ているだけだから、そのまま出てきちゃったんだけど」

 忍が空を見上げた。

「化野は一緒じゃなかったのか?」

 直桜は頷いた。

「祝福を与える時、左手の薬指にキスするだろ。護は見たくないかもと思って、清人と相談して内緒にしたんだ」

 内緒にしたのはある意味、正解だったかもしれない。
 キスよりもっと深い行為をしてしまっているかもしれないのだから。

「俺の所が最後か?」
「うん、あとは組対室に戻って木札と、清人に祝福を与えたら、終わり」

 腕を組んで考え込んでいた忍が、直桜に向かって手を伸ばした。

「とりあえず、俺にも同じようにしてみろ」

 直桜は言われた通り、木札に口付けて神力を流しこんだ。
 木札を忍に手渡す。

「濃い神力だ。出会った時とは比べ物にならんな。直桜も成長している」

 忍に頭を撫でられて、こそばゆい気持ちになる。
 きっと、直桜の成長を褒めてくれるのは忍くらいだろうと思う。
 他の皆は、出会った時から最強である直桜の成長に気付けない。

「それで、祝福だが」

 忍が左手を直桜に向かい、伸ばした。
 その手を取って引き寄せる。

「忍と、キスしたい。口移しで流し込んでもいい?」

 快楽の欲望が胸の奥から湧き上がって、言葉が口を突いて出る。
 体が勝手に動いて、忍の細い体躯に絡みつく。

「なるほど、きっかけは触れ合いか」
「性別も関係あるやもしれませぬぞ。直桜様は男色でございます故」

 忍と那智が何かを話していても気にならない。
 膝の上に乗り、忍に抱き付いて唇を寄せる。

「……あとで化野に殴られる程度の覚悟はしておくか」
「緊急事態でございましょう。ご理解いただきましょうぞ」

 冷静な二人の声が耳を抜けて流れていく。
 直桜は忍の唇に吸い付いた。
 舌で唇を割り開いて、神力を流し込む。
 忍の体が、がくりと崩れた。那智に緊張が走る。

「流石に、濃いな。これを流し込まれたら、一介の術者は意識を保つのすら難しいだろう。それに」

 忍の目が自分の股間に向いた。
 直桜の熱くなった男根が触れて硬さを増している。

「欲情を煽られる。押し倒して犯したくなるな」

 忍の腕が直桜の腰に回る。
 触れる指がくすぐったくて気持ちいい。

「ぁ、ん……、しのぶ、もっと、舌、吸わせて……ぁん」

 忍の口内に舌を伸ばして舐め挙げる。
 舌を絡めとって吸い上げながら、神力を流し込んだ。

「ぅっ、んっ……はぁ……」

 忍の口から声が漏れて嬉しくなる。
 ジュクジュクと卑猥な音を響かせて、忍の舌を吸った。
 互いに硬くなった股間を擦り合わせる。

「これ以上は、本当に押し倒しそうだ」

 忍の目が直桜の後ろに向いた。

「直桜、祝福は受け取った。自分で止まれるか?」

 直桜は、ふるふると首を振った。

「ヤダ、もっとぉ。忍と気持ちくなりたい。俺の祝福、もっと貰ってぇ」

 股間を押し付けて、強く抱き付く。
 唇を押し付けて神力を一気に流し込んだ。
 忍の体が崩れて、直桜を抱く腕に力が入った。忍の方から直桜の舌を強く吸った。

「ぁ、はぁ……。もっと欲しい、直桜。俺に総て、流し込め。……ん、ぁっ」

 忍の顔が蕩けている。初めて見る欲情に塗れた顔だった。
 服をずらされて、忍の舌が直桜の腹を這った。
 突然、後ろから大きな手が伸びてきて、直桜の体を掴まえた。

「降ろしてよ、四季。忍と気持ちくなりたい」

 片手で軽く頭を抑える忍に、那智が法力を流し込んでいる。
 忍が、のっそりと起き上がった。

「すまん、呑まれた。あれだけ濃い神力を一気に流し込まれたら、一溜りもないな。何か、混ざっているようだが」

 那智に手渡された水を、忍が一気に飲み干した。
 四季が直桜の口元に鼻を近づけ匂いを嗅いだ。

「酒、でしょうか。媚薬の類かと。梛木様が直桜に渡したのは、御神水でしたね」
「酒、媚薬……」

 忍の眉が歪んだ。
 思いついた顔をしている。

「保輔か。さしずめ化野にでも渡した薬を直桜が知らずに飲んだのだろう。保輔の血魔術なら自力で浄化できそうだが」

 忍の目が直桜に向いた。
 欲情が収まりきらない体が辛くて疼いて、じっとしていられない。

「今は無理か。一度は収まって俺の部屋まで移動してきているのだから、収まる条件がありそうだが」

 考え込む忍に、那智が言いずらそうに口を開いた。

「皆、寝ちゃってた、と話しておりましたので、直桜様の神力を限界まで流し込めば、御本人が満足して収まるのではないかと思いまするが」

 忍と那智が微妙な顔で四季に目を向ける。

「喰ってもいいのであれば喰いますが。俺の限界より直桜が果てる方が先でしょう。直桜の体力と神力を考えれば、二日もあれば喰い尽くせますが」
「食欲の化物め」
「惟神は美味い。特に直桜は美味いから、無尽蔵に喰える」

 那智の嫌味に四季が真面目に返事をしている。

「それだと直桜が死にかねん。却下だ。惟神に浄化させるのが現実的だな。組対室に運ぶか」

 欲情の疼きを腹に抱え込んだまま、直桜は四季に羽交い絞めにされて組対室に運ばれた。
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