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第Ⅰ章 ゲーム本編①
17.原作者の憂鬱
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この日、ノエルは一人、クラブ室で資料を調べていた。
前日、ロキの手配で入手した病院の資料だ。
(もうすぐ発生する、病院イベントに備えないと)
病院は事実上、教会の管理下にある。
この国において、いわゆる治療を行う場所は『治癒院』とか『治癒室』とか呼ばれるので、病院といえば呪い持ち患者用の施設、と誰もが連想する。
忌むべき『呪い』といえど、同じく治療を行う場所として、教会管理となっている。
病院は、呪い持ちの中でも末期症状の患者を治療する場所だ。皆が恐ろしがって忌み嫌うので、北側の街外れにある。
基本的に『呪い』の発生件数と死亡数は教会が厳重管理しているので、詳細を追えない。その為、主人公と攻略対象たちは、病院に張り込んで実態把握に挑む。
(ロキに探してもらった資料は、病院の概要と年間予定表。その中に教会関係者の視察日程が、予定も含め、記載されている)
ノエルが欲しかったのは、教会の視察日程だ。
病院に慰問と称して訪れる神官リヨン=マクレイガー=トロイト。
彼こそが物語第一部のラスボスであり、『呪い』事件の首謀者だ。
(何とかして、マリアにリヨンと接触してもらわないと。できれば攻略対象と一緒が望ましい。今の所、アイザックかユリウスだな)
あとはどういう形で張り込むか。
シナリオ的には学生ボランティアを装うのだが。
(ウィリアムあたりに打診してみるか。いや、向こうからの提案を待とうかな。多分、すぐに声が掛かる)
ふと窓の外を眺める。
今日は、昨日とは打って変わってすっかり晴れていた。
(誰もいないと、静かだ)
史跡調査クラブはメンバーが貴族メインなだけに、それなりに豪華な部屋を与えられている。
六人で使用するには広いこの部屋は、ノエル一人でいると勿体なく感じる。
本日、ウィリアムは、外出しているらしい。ロキとレイリーは剣術訓練の日だ。
聖バルドル魔術学院は、いわゆる学校というより職業訓練校のような意味合いが強い。能力さえあれば九歳から入学でき、上限はない。
貴族階級の九割以上と平民の二割程度は魔法適性を示す精霊国において、強い魔術師の育成は国の責務だ。強力な魔術師の量産は国防にも繋がる。
そんな学院においても、ロキとレイリーの剣技は抜きんでている。幼少から英才教育を受けているだけでなく、本人たちの資質も大きい。メインキャラはそういう設定でないと活きない。
(ウィリアムは今日、病院を調べに行っている可能性が高い。明日あたり、ボランティアの提案があるだろう。しかしまぁ、独断先行はいかにも彼らしい)
犠牲者を最小限に抑えるために自分が、まず動く。苦労や努力を表に見せない強がりキャラだ。ある意味、為政者に向いている。
マリアとアイザックはわからないが、きっとユリウスの所だろう。
(慣れとは恐ろしいな。本来ならこうして、一人で動くつもりでいたんだ)
たったの一カ月足らず、共に行動しただけで情が湧き、一人を寂しく思うのは、あまり自分らしくない気がした。
(自分が創作したキャラに対する興味関心なのか、独占欲なのか。この世界では、生身の人間、なのにな)
自分が書いたシナリオ、考えた世界観、キャラの性格設定。
二次元でしかなかった世界が三次元で再現されると、自分の手など離れた存在に思える。
(きっと、そうなんだろう。彼らは自分で考え、動き、話すんだ。私が台詞を考えている訳じゃない)
不思議な感覚になかなか慣れない。同時に、嬉しくも悲しくもある。
(良い作品はキャラが独り歩きするっていうけど、似た感覚かもしれない。もっとずっとぶっ飛んでるけど)
紅茶を一口、含む。
クラブ室の扉が開き、マリアが顔を見せた。
前日、ロキの手配で入手した病院の資料だ。
(もうすぐ発生する、病院イベントに備えないと)
病院は事実上、教会の管理下にある。
この国において、いわゆる治療を行う場所は『治癒院』とか『治癒室』とか呼ばれるので、病院といえば呪い持ち患者用の施設、と誰もが連想する。
忌むべき『呪い』といえど、同じく治療を行う場所として、教会管理となっている。
病院は、呪い持ちの中でも末期症状の患者を治療する場所だ。皆が恐ろしがって忌み嫌うので、北側の街外れにある。
基本的に『呪い』の発生件数と死亡数は教会が厳重管理しているので、詳細を追えない。その為、主人公と攻略対象たちは、病院に張り込んで実態把握に挑む。
(ロキに探してもらった資料は、病院の概要と年間予定表。その中に教会関係者の視察日程が、予定も含め、記載されている)
ノエルが欲しかったのは、教会の視察日程だ。
病院に慰問と称して訪れる神官リヨン=マクレイガー=トロイト。
彼こそが物語第一部のラスボスであり、『呪い』事件の首謀者だ。
(何とかして、マリアにリヨンと接触してもらわないと。できれば攻略対象と一緒が望ましい。今の所、アイザックかユリウスだな)
あとはどういう形で張り込むか。
シナリオ的には学生ボランティアを装うのだが。
(ウィリアムあたりに打診してみるか。いや、向こうからの提案を待とうかな。多分、すぐに声が掛かる)
ふと窓の外を眺める。
今日は、昨日とは打って変わってすっかり晴れていた。
(誰もいないと、静かだ)
史跡調査クラブはメンバーが貴族メインなだけに、それなりに豪華な部屋を与えられている。
六人で使用するには広いこの部屋は、ノエル一人でいると勿体なく感じる。
本日、ウィリアムは、外出しているらしい。ロキとレイリーは剣術訓練の日だ。
聖バルドル魔術学院は、いわゆる学校というより職業訓練校のような意味合いが強い。能力さえあれば九歳から入学でき、上限はない。
貴族階級の九割以上と平民の二割程度は魔法適性を示す精霊国において、強い魔術師の育成は国の責務だ。強力な魔術師の量産は国防にも繋がる。
そんな学院においても、ロキとレイリーの剣技は抜きんでている。幼少から英才教育を受けているだけでなく、本人たちの資質も大きい。メインキャラはそういう設定でないと活きない。
(ウィリアムは今日、病院を調べに行っている可能性が高い。明日あたり、ボランティアの提案があるだろう。しかしまぁ、独断先行はいかにも彼らしい)
犠牲者を最小限に抑えるために自分が、まず動く。苦労や努力を表に見せない強がりキャラだ。ある意味、為政者に向いている。
マリアとアイザックはわからないが、きっとユリウスの所だろう。
(慣れとは恐ろしいな。本来ならこうして、一人で動くつもりでいたんだ)
たったの一カ月足らず、共に行動しただけで情が湧き、一人を寂しく思うのは、あまり自分らしくない気がした。
(自分が創作したキャラに対する興味関心なのか、独占欲なのか。この世界では、生身の人間、なのにな)
自分が書いたシナリオ、考えた世界観、キャラの性格設定。
二次元でしかなかった世界が三次元で再現されると、自分の手など離れた存在に思える。
(きっと、そうなんだろう。彼らは自分で考え、動き、話すんだ。私が台詞を考えている訳じゃない)
不思議な感覚になかなか慣れない。同時に、嬉しくも悲しくもある。
(良い作品はキャラが独り歩きするっていうけど、似た感覚かもしれない。もっとずっとぶっ飛んでるけど)
紅茶を一口、含む。
クラブ室の扉が開き、マリアが顔を見せた。
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