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第Ⅰ章 ゲーム本編①
27.ノエル=ワーグナーの遺物
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体の中心が熱い。
内側から悪い気が消えていくような、清浄な気と安堵が込み上げる。
ふわり、と瞼が自然に開いた。
部屋が真っ暗だ。窓の向こうは宵闇で、小さな月が空に穴をあけているように見えた。
「随分、寝ちゃったな」
ユリウスの言付けはとりあえず守った。守らされたというべきか。
胸に手を当てると、魔法の残滓を感じた。
「マリアの治癒魔法、これは多分、浄化術」
マリアは約束通り、浄化術を覚えてくれたらしい。
これで中和術の習得に一歩近づいた。だが、ノアを退けるまでには、至らない。
(ノアは、マリア一人で太刀打ちできる相手じゃない。そもそも戦う予定の相手じゃなかったんだ)
しかも、物語の後半、ノアの存在は必須になる。死なれても困るのだ。
(シナリオというか、作戦考えないとな。エリートチートを死なせず撃退する方法。全然、思いつかないな)
一先ず、ベットから降りて机に向かう。
視界の隅で、何かが光った。
(そういえば、眠る前にも、あの辺で何か光っていたような)
本棚の隅の隙間を覗き込む。
魔術書が二冊くらい余裕で入りそうな大きさの箱が挟まっていた。取り出して、振ってみる。かさかさと紙が擦れる音と、ごん、と鈍い音がした。
(鍵が掛かっているのか。この金具が光っていたのかな。それにしても、何故今更)
前にユリウスに部屋の中の残滓を探ってもらった時は反応がなかった。
ノエルが部屋を探した時も、ここには何もなかった筈だ。
とりあえず、箱の魔力観測をしてみる。
(魔力の反応は二つ……三つ? 一つは微量すぎてわからない。一つは明らかに前のノエルだ。もう一つは、リヨン?)
リヨンとは病院で数回、顔を合わせた程度だ。観測できるほど知らない。何故、リヨンだと思うのか、自分でもよくわからない。
(……あ、もしかして紅茶か! あの紅茶はトリガーだったんだ)
リヨンが紅茶に魔法付与していたのなら、この気配を感じられる。
しかし、ユリウスすら探知できないステルス魔法をリヨンが使えるとは思えない。
(隠したのはリヨンではないのか? じゃぁ、前のノエル? いや、違う。前のノエルはそんな高難易度の魔法は使えなかったはず。となると、残りのもう一つの魔力……誰だよ)
また知らない誰かが出てくるのだろうか。サブキャラかモブか。
もう勘弁してほしい。
「とりあえずは開けたいけど、これ、鍵がないと絶対開かないよなぁ」
箱の真ん中には鍵穴がある。解析魔法を付与しても、壊そうと攻撃しても、びくともしない。
「ユリウスにお願いしてみるか。私一人じゃ、無理そうだ」
箱を抱えたまま独り言ちる。
突然、箱が燃えだした。
「うわ! うわぁああああ! 熱い! 熱い!」
思いっきり箱をぶん投げた。
床に転がった箱は、発火などしていない。焦げてすらいない。
恐る恐る、箱に手を伸ばす。見付けた時のままの状態だった。
「何、今の。幻影? 普通に熱かったんだけど。もしかして、人に頼るなと言いたいのか?」
箱が、光った気がした。
(えー……。意志でも持ってんのか、この箱。嫌だ、怖い。でも多分、開けないとダメなヤツには、違いない)
「何だよ、もう。嫌になってきちゃったなぁ。こんな箱、知らないもん。シナリオにないもん。書いた展開と違うもん。心折れそうだもん」
床に突っ伏して、泣く。
目の前の箱がまた光った。
「がんばれ、とでも言いたいのか。余計なお世話だよ、馬鹿野郎。だったら、鍵寄越せよ。せめてヒントくれさい」
箱が沈黙した。
「いじわるかよ! もういいよ! わかったよ! 鍵探すよぉ!」
なんで無機物にいじめられなきゃならないのかと思いながら、ノエルはとりあえず机に向かった。
内側から悪い気が消えていくような、清浄な気と安堵が込み上げる。
ふわり、と瞼が自然に開いた。
部屋が真っ暗だ。窓の向こうは宵闇で、小さな月が空に穴をあけているように見えた。
「随分、寝ちゃったな」
ユリウスの言付けはとりあえず守った。守らされたというべきか。
胸に手を当てると、魔法の残滓を感じた。
「マリアの治癒魔法、これは多分、浄化術」
マリアは約束通り、浄化術を覚えてくれたらしい。
これで中和術の習得に一歩近づいた。だが、ノアを退けるまでには、至らない。
(ノアは、マリア一人で太刀打ちできる相手じゃない。そもそも戦う予定の相手じゃなかったんだ)
しかも、物語の後半、ノアの存在は必須になる。死なれても困るのだ。
(シナリオというか、作戦考えないとな。エリートチートを死なせず撃退する方法。全然、思いつかないな)
一先ず、ベットから降りて机に向かう。
視界の隅で、何かが光った。
(そういえば、眠る前にも、あの辺で何か光っていたような)
本棚の隅の隙間を覗き込む。
魔術書が二冊くらい余裕で入りそうな大きさの箱が挟まっていた。取り出して、振ってみる。かさかさと紙が擦れる音と、ごん、と鈍い音がした。
(鍵が掛かっているのか。この金具が光っていたのかな。それにしても、何故今更)
前にユリウスに部屋の中の残滓を探ってもらった時は反応がなかった。
ノエルが部屋を探した時も、ここには何もなかった筈だ。
とりあえず、箱の魔力観測をしてみる。
(魔力の反応は二つ……三つ? 一つは微量すぎてわからない。一つは明らかに前のノエルだ。もう一つは、リヨン?)
リヨンとは病院で数回、顔を合わせた程度だ。観測できるほど知らない。何故、リヨンだと思うのか、自分でもよくわからない。
(……あ、もしかして紅茶か! あの紅茶はトリガーだったんだ)
リヨンが紅茶に魔法付与していたのなら、この気配を感じられる。
しかし、ユリウスすら探知できないステルス魔法をリヨンが使えるとは思えない。
(隠したのはリヨンではないのか? じゃぁ、前のノエル? いや、違う。前のノエルはそんな高難易度の魔法は使えなかったはず。となると、残りのもう一つの魔力……誰だよ)
また知らない誰かが出てくるのだろうか。サブキャラかモブか。
もう勘弁してほしい。
「とりあえずは開けたいけど、これ、鍵がないと絶対開かないよなぁ」
箱の真ん中には鍵穴がある。解析魔法を付与しても、壊そうと攻撃しても、びくともしない。
「ユリウスにお願いしてみるか。私一人じゃ、無理そうだ」
箱を抱えたまま独り言ちる。
突然、箱が燃えだした。
「うわ! うわぁああああ! 熱い! 熱い!」
思いっきり箱をぶん投げた。
床に転がった箱は、発火などしていない。焦げてすらいない。
恐る恐る、箱に手を伸ばす。見付けた時のままの状態だった。
「何、今の。幻影? 普通に熱かったんだけど。もしかして、人に頼るなと言いたいのか?」
箱が、光った気がした。
(えー……。意志でも持ってんのか、この箱。嫌だ、怖い。でも多分、開けないとダメなヤツには、違いない)
「何だよ、もう。嫌になってきちゃったなぁ。こんな箱、知らないもん。シナリオにないもん。書いた展開と違うもん。心折れそうだもん」
床に突っ伏して、泣く。
目の前の箱がまた光った。
「がんばれ、とでも言いたいのか。余計なお世話だよ、馬鹿野郎。だったら、鍵寄越せよ。せめてヒントくれさい」
箱が沈黙した。
「いじわるかよ! もういいよ! わかったよ! 鍵探すよぉ!」
なんで無機物にいじめられなきゃならないのかと思いながら、ノエルはとりあえず机に向かった。
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