第一王子を取られたと思ったら、第三王子の方が優良物件でしたが……

もぐすけ

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ドレス作り

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 私はフローラから婚約披露宴に招待されていた。

 あれからフローラは幼馴染み気取りなのだが、単に私にトーマスとの仲を自慢したいだけだ。

 あの心優しかったフローラはどこに行ってしまったのだろうか。

 そういえば、一度、弟と話したことがある。

「え? フローラは心優しくなんかないよ。嫉妬深く、意地悪で、陰険な感じだぜ」

「まさか。でも、あなた、そういえば、いつからかついて来なくなったね」

「姉ちゃん、仲良かったから黙ってたけど、俺が一人のときはわがままだった。姉ちゃんといるときは、姉ちゃんのことが気に入ってたから、猫かぶってたんだよ。キレイだけど、性格悪かったぞ」

 あのときは弟が何かちょっかい出して、袖にされて悪口を言ってるのかと思ったけど、本当だったかもしれない。

 婚約パーティは正直気乗りしなかったのだが、第三王子も出席するとのことで、別室で顔合わせをしたいとの申し入れがあったのだ。

 両親もわざわざ田舎から出てくるとのことで、出席するしかない。

 最高級のドレスをこの日のために両親が買ってくれるというので、それで我慢するか。

 私はさっそく行きつけの店に入った。

 あちゃあ、どうして会うかなぁ。

 フローラが店にいたのだ。

「あら? エイミー、どうしてここに?」

「あなたの婚約披露宴のドレスを見に来たのよ」

「え? でも、ここ、王都でも最高級品を扱うところよ。別の店にした方がいいわよ」

「そ、そうね。場違いだったわ。失礼するわね」

 だが、店を出るときに馴染みの店員とばったり会ってしまった。

「あ、マルソー様、いらっしゃいませ」

「おほほほ、人違いでしてよ、おほほほ」

 私は逃げるようにして店を出てきた。

 このクラスの店であれば、客の素性をばらすことはあるまい。

 ちょっと遠いけど、もう一つのお店の方がいいかもね。

 店に入ると背の高いスタイルの良い男性客が店員と話をしていた。

 男性が振り向きかけたので、慌てて視線をそらした。

 あちゃあ、どうして会うかなぁ。

 あれ、トーマスだよね。

 いやあ、すごく格好よくなってるわ。

 まじでヨダレが出そうだわ。

 フローラいいなあ。私もあれがよかったなあ。

「いらっしゃいませ。あっ、マル……」

 私は店員の口に人差し指を突き出した。

「ちょっと、そんな簡単に名前呼ばないの」

「失礼しました。本日はドレスでございますか?」

 私は店員の背中に手を回し、トーマスに背を向けるようにして小声で話した。

「ええ、そこの人って王子様でしょう? 王子様の婚約披露宴のドレスを作りに来たのよ」

「マルソー様もご出席されるとお伺いしております」

「だから名前呼ばないで。そうね、マルソーのMエムって呼んで」

「Mですか?」

「……。ちょっと誤解されるわね。エイミーのエイさんでいいわ。エイさんって呼んで」

「かしこまりました。エイ様」

「エイさん」

 後ろから突然声が聞こえたので、ビクっとして後ろを振り返ると、トーマスが笑いをこらえていた。

「あ、し、失礼いたしました。ご挨拶もせず」

「いいですよ、エイさん。プライベートですから。あ、申し遅れました。私、あなたに婚約を申し込んでいるマーク・アレクセイです。よろしくっ!」

 何、この人、トーマスじゃないの?

 それに、人質だったくせに、明るくて軽いわっ。

「あ、あの、トーマス様そっくりなんですね」
 
「ああ、兄とはよく似ているって言われますけど、兄はほら、暗いですよねえ。私は明るいです。でも、エイさん、兄から散々聞かされたイメージ通りの方で感激してますっ」

「あの、その、エイさんってのは、何というかロマンチックでないというか」

「いいじゃないですか。ドレス楽しみにしてます。それじゃあ、またお会いしましょう」

 はやっ、もう出て行かれてしまった。

 でも、あのひとかぁ。

 えへへ、元気出たかも。

 よしっ、ドレス作るぞっ。
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