第一王子を取られたと思ったら、第三王子の方が優良物件でしたが……

もぐすけ

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婚約披露宴

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 第一王子の婚約披露宴は王宮内のダンスホールにて執り行われていた。

 トーマスは思った通りの美青年になっていた。

 マークの方が少し男っぽい感じで、トーマスの方が綺麗だが、根が山ザルの私にはマークの方が合っていると確信した。

 心に余裕がでたので、フローラの婚約を心から祝福出来そうだ。

 子供の頃に諦めたってのも、なんとなく自分には合っていないって、感じていたんだと思う。

 私はフローラに声をかけた。

「フローラ、トーマス様、メチャクチャ格好いいね。おめでとう、幸せになってね」

 フローラは私が悔しがることを期待していたらしい。

 肩透かしを食らったような顔をしている。

 やっぱり、こいつ、性格悪いわぁ。

「あ、ありがとう」

 フローラが私のドレスを穴が開くほど見ている。

 今日のドレスはマルソー家初の王室との婚姻で、気合いが入りまくっているからね。

 ビビるの分かるよ。

「フローラ、随分と仲が良さそうだね。こちらのお嬢様を僕にも紹介してくれないかな」

 トーマスが話していた人との会話が終わり、私たちの会話に加わって来た。

「あ、分かんないですよね。エイミーです。湖でフローラといっしょに遊んだエイミーですよ、トーマス様」

 トーマスが驚いている。

「あはは、トーマス様、初めて会ったとき、私が女の子だって言ったときと同じ顔していますよっ」

「エ、エイミーなのかっ!? いや、言われるまで全くわからなかった。あ、あの……」

「山ザルですかっ? トーマス様」

 トーマスが苦笑している。子供のときと同じ表情で懐かしい。

「トーマス様だなんて、昔通りトーマスでいいよ、エイミー」

「無理ですよ、第一王子様ですし、フローラの婚約者ですしね。お幸せにっ」

「あ、ああ」

 トーマス、何だか寂しそうね。

「じゃあね、フローラ」

「ええ、またね」

 いつまで私のドレスを見てるのよ。

 さあて、マークとの顔わせよね。

 陛下は一度魚釣りでお会いしているけど、マークのお母様はトーマスと同じで王妃様よね、緊張するわ。

「エイミー」

「あ、お母様」

 呼ばれて振り返るとホッとした表情のお母様がいた。

「何しているの、こっちに来なさい。お化粧直ししないとダメでしょう」

 まだ約束の時間まで一時間もあるんだけど。

 親としては心配かもね。

 一族始まって以来の王族との婚姻ですもの。

***

「陛下、娘のエイミーです。この度はありがたいお申し入れ、誠にありがとうございます」

「あっはっは。エイミーとは一度湖で会っておるわ。釣りの仕掛けを直してくれてな。一緒にいたトーマスが振られて、それは随分と悲しんでおったぞ」

「そんな、振るだなんて……」

「兄さんが言ってましたよ。何度誘っても変な理由をつけて出て来ないって。僕が笑ったのは、明日の天気が分からないからって、やつ。兄さん、それ脈ないよ、って言ったんだ」

 私ったら、なんて失礼なことを。

 お父様もお母様も下を向いて、ただただ恐縮している。

「エイミーさんは、うちの息子たちに大人気でね。兄の方が泣く泣く諦めたら、すぐに弟の方が早く予約してくれって、うるさいのよ」

 王妃様って柔らかくて優しそう。

「兄さんから聞く話聞く話が面白くって。どんな女性なのか楽しみにしていたんです。兄さんはゴボウみたいな山ザルって、言ってたけど、やっぱり嘘ついてたんだ」

「いや、わしが会ったときはゴボウザルだったぞ。今日会って変貌ぶりに驚いたわい。これなら、男に間違えられることはないな」

「あの、昔の私の話はそのう……」

「わっはっは。そうだの。もう立派なレディだな。エイミー、マークの婚約、受けてくれるか?」

「はい、喜んで、陛下」

「おお、即答か。マーク振られなくてよかったの」

「はい、父上。ありがとうございます、エイミー、マルソー御夫妻」

「こちらこそ、素晴らしい縁談ありがとうございます。マルソー一族、一層王家への忠誠を誓います」

「うむ、マーク、エイミーをエスコートして、食事でも楽しんでこい。わしはマルソー殿と少々難しい話をする」

「分かりました、父上。さあ、エイさん、どうぞ」

 私はマークの左腕に手を通して、寄り添った。

「マーク様、エイさんはやめて下さい」

「じゃあ、エイミー、君も僕のことはマークと呼んでくれ」

「はい、マーク」

 私たちはパーティ会場に入って行った。
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