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殿下の変化 フローラの懐疑
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私が懐妊してから、殿下の監禁は解いたが、殿下は特に陛下に訴えることもなく、普通に政務を続けている。
私にはこれまでと同じように一貫して優しいが、人形のように無表情だったのが、何というか、媚を売るような態度を見せるようになってきた。
「フローラ。懐妊祝いだよ」
「え? ドレス?」
これからお腹が大きくなっていくのに、コルセットのドレスを贈るなんて、どういうつもりだろう。
男性だから、妊娠のことやコルセットのことがわかっていないのか。
「そうだよ。デバリエ夫人のオートクチュールだ。エイミーが着ていたもの以上のものを作ってくれってお願いしたんだ。この色、君の瞳と同じ色にしてもらったんだ」
卑屈な笑顔だ。こんな笑顔をする人ではなかったはずだが、監禁の影響だろうか。
「ええ、でも、高かったでしょう?」
デバリエ夫人のオートクチュールは最低でも一千万はするが、ダイヤをふんだんに使ったこのドレスは、想像を絶する金額だと思う。
いくら皇太子といえども、簡単に出せる金額ではない。
「大丈夫だよ。臨時収入があったのさ」
「臨時収入って?」
「フローラは気にしなくていいんだ。上手くやってるから」
どうしたんだろう。今までの殿下とはまるで違う雰囲気だ。
お父様に報告すべきだ。
***
「皇太子が軍事費を横領している」
お父様が調査結果を知らせに来た。
「え? 本当ですか?」
「全部お前へのプレゼントにつぎ込んでいる。何があった?」
「お父様のおっしゃる通りに無理矢理迫って妊娠しました」
「監禁しろとまでは言わなかったが、懐妊は大手柄だ」
「拒否されるのに耐えられなかったんです。捕まえてしまえば、何だか殿下が私のオモチャのように見えて、征服感が出て、安心出来たのです」
「……まあ、よい。王に知れたとしても、我々に喧嘩は売れないだろう」
「陛下には話していないようです」
「なぜだ? 皇太子の思考がまったく理解できないな」
「私のことをかばっているのでしょうか?」
「うむ。ただ、お前ではなく、子供をかばっているのかもしれん……」
「なぜ私ではないのでしょうか。殿下は私を愛してくれているようには思えないのです」
「フローラ、勘違いするな。王になるものは恋愛結婚などしない。結婚も政略に使う。愛を求めるな。求めたら、失望しかないぞ」
「はい……」
「しかし、軍事費の横領とはバカなことをしてくれる。慎重で思慮深いと見ていたが、お前の妊娠でこうも変わるものなのか? グロリア家で金額を補填してもみ消すが、しばらく皇太子の行動を注意深く監視しろ」
「お父様」
「なんだ?」
「孫のことはどう思いますか?」
「可愛いとかそういう感情はないが、自分が生きた証だ。お前同様大切にするぞ」
「ありがとうございます」
私の周りの男は、私を大切にはするが、愛してはくれない。
***
「え? 湖の城ですか?」
「そうだよ。約束を果たせてなかったから」
「政務は大丈夫ですか?」
「気づいたんだ。政務よりも私たちの人生を大切にしようって。政務はフローラのお父上に全部任せてしまえばいい」
殿下がおかしい。
国のためにあんなに責任感に燃えていたのに。
「まだ安定期ではないので、馬車での移動は控えた方がいいと思うのですが」
「あ、そうなのか? ごめん。勉強不足だった。じゃあ、フローラはどうしたい?」
本当にどうしてしまったのか。
今まではほとんど無表情だったのが、卑屈な笑顔が多くなって来た。
「私はつわりもひどくありませんし、体調も悪くないのですが、医師から安静にするようにと言われていて、手持ち無沙汰です。お話相手が欲しいです」
「エイミーを呼ぼうか?」
せっかく遠くにいるのに呼び戻されてはかなわないし、エイミーは話し相手ではなく、排除したい敵だ。
「殿下にいて頂きたいです」
「そうか、それもそうだね。政務しないとなると、私も手持ち無沙汰だ。よし、私が毎日話し相手になろう。話は得意ではないので、聞き役に徹するがね」
「ありがとうございます」
一体どうしたのだろうか。
しばらくして、皇太子が妃ばかりにかまけて、政務をおろそかにしていると問題になり始めた。
殿下はあたかも皇太子を廃されるような行動ばかりを取り始めた。
私にはこれまでと同じように一貫して優しいが、人形のように無表情だったのが、何というか、媚を売るような態度を見せるようになってきた。
「フローラ。懐妊祝いだよ」
「え? ドレス?」
これからお腹が大きくなっていくのに、コルセットのドレスを贈るなんて、どういうつもりだろう。
男性だから、妊娠のことやコルセットのことがわかっていないのか。
「そうだよ。デバリエ夫人のオートクチュールだ。エイミーが着ていたもの以上のものを作ってくれってお願いしたんだ。この色、君の瞳と同じ色にしてもらったんだ」
卑屈な笑顔だ。こんな笑顔をする人ではなかったはずだが、監禁の影響だろうか。
「ええ、でも、高かったでしょう?」
デバリエ夫人のオートクチュールは最低でも一千万はするが、ダイヤをふんだんに使ったこのドレスは、想像を絶する金額だと思う。
いくら皇太子といえども、簡単に出せる金額ではない。
「大丈夫だよ。臨時収入があったのさ」
「臨時収入って?」
「フローラは気にしなくていいんだ。上手くやってるから」
どうしたんだろう。今までの殿下とはまるで違う雰囲気だ。
お父様に報告すべきだ。
***
「皇太子が軍事費を横領している」
お父様が調査結果を知らせに来た。
「え? 本当ですか?」
「全部お前へのプレゼントにつぎ込んでいる。何があった?」
「お父様のおっしゃる通りに無理矢理迫って妊娠しました」
「監禁しろとまでは言わなかったが、懐妊は大手柄だ」
「拒否されるのに耐えられなかったんです。捕まえてしまえば、何だか殿下が私のオモチャのように見えて、征服感が出て、安心出来たのです」
「……まあ、よい。王に知れたとしても、我々に喧嘩は売れないだろう」
「陛下には話していないようです」
「なぜだ? 皇太子の思考がまったく理解できないな」
「私のことをかばっているのでしょうか?」
「うむ。ただ、お前ではなく、子供をかばっているのかもしれん……」
「なぜ私ではないのでしょうか。殿下は私を愛してくれているようには思えないのです」
「フローラ、勘違いするな。王になるものは恋愛結婚などしない。結婚も政略に使う。愛を求めるな。求めたら、失望しかないぞ」
「はい……」
「しかし、軍事費の横領とはバカなことをしてくれる。慎重で思慮深いと見ていたが、お前の妊娠でこうも変わるものなのか? グロリア家で金額を補填してもみ消すが、しばらく皇太子の行動を注意深く監視しろ」
「お父様」
「なんだ?」
「孫のことはどう思いますか?」
「可愛いとかそういう感情はないが、自分が生きた証だ。お前同様大切にするぞ」
「ありがとうございます」
私の周りの男は、私を大切にはするが、愛してはくれない。
***
「え? 湖の城ですか?」
「そうだよ。約束を果たせてなかったから」
「政務は大丈夫ですか?」
「気づいたんだ。政務よりも私たちの人生を大切にしようって。政務はフローラのお父上に全部任せてしまえばいい」
殿下がおかしい。
国のためにあんなに責任感に燃えていたのに。
「まだ安定期ではないので、馬車での移動は控えた方がいいと思うのですが」
「あ、そうなのか? ごめん。勉強不足だった。じゃあ、フローラはどうしたい?」
本当にどうしてしまったのか。
今まではほとんど無表情だったのが、卑屈な笑顔が多くなって来た。
「私はつわりもひどくありませんし、体調も悪くないのですが、医師から安静にするようにと言われていて、手持ち無沙汰です。お話相手が欲しいです」
「エイミーを呼ぼうか?」
せっかく遠くにいるのに呼び戻されてはかなわないし、エイミーは話し相手ではなく、排除したい敵だ。
「殿下にいて頂きたいです」
「そうか、それもそうだね。政務しないとなると、私も手持ち無沙汰だ。よし、私が毎日話し相手になろう。話は得意ではないので、聞き役に徹するがね」
「ありがとうございます」
一体どうしたのだろうか。
しばらくして、皇太子が妃ばかりにかまけて、政務をおろそかにしていると問題になり始めた。
殿下はあたかも皇太子を廃されるような行動ばかりを取り始めた。
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