第一王子を取られたと思ったら、第三王子の方が優良物件でしたが……

もぐすけ

文字の大きさ
12 / 26

謀反の嫌疑 フローラの動揺

しおりを挟む
 今朝、フローラが東宮殿の居室を出ると、見知らぬ男が付近を警護していた。

 午前中はトーマスに来客があったため、昼食の席でフローラはトーマスに確認してみた。

「殿下、私の居室近辺を警護している人たちがいますが、あの人たちは何者でしょうか。父の手のものではないようですが」

「ああ、身重のフローラが心配でね。東宮殿を警備するために私が雇ったのだ」

 王室の規定で皇太子は私兵を持つことは固く禁じられている。

「殿下、私兵には当たらないのでしょうか」

「え? 警備員だよ。私兵だなんて、そんな大袈裟な」

「何人雇ったのでしょうか?」

「とりあえず百名だ。武具も手配している」

 フローラは耳を疑った。

「で、殿下、謀反と疑われてしまいますっ!」

「ははは、そんなことなどあるものか。午前中に陛下から使いのものが来ていたが、別段咎められなかったよ」

 非常にまずい。陛下にも知られてしまう。すぐにお父様に知らせなければ。

 昼食後、フローラはすぐに父に使いを出した。

 しかし、すでに遅かった。

 東宮殿は衛兵に囲まれていて外に出られない、と父に出した使いが戻って来てしまったのだ。

 フローラはトーマスを探し回った。すると、トーマスはのんびり書斎で本を読んでいた。

「殿下、陛下にご説明を」

「ああ、フローラ、そんなに慌ててどうしたの? 体に触るから、落ち着いた方がいい」

「東宮殿の周りが衛兵に囲まれてしまっていますっ」

「おかしいな。陛下の使者にはきちんと説明したのに。どうして衛兵なんかを送って来たのだろう? ちょっと聞いてこよう」

 散歩に行くような感じで歩き出した殿下をフローラは止めた。

「殿下、お一人で行かれるのは危険です」

「ははは、どうしたの、フローラ。心配には及ばないよ。ちょっと聞いてくるだけだから」

 トーマスを止めるようにフローラはグロリア家のものにも指示したが、トーマスの雇った傭兵のようなものたちに阻まれてしまった。

 結局、トーマスは外に出たまま帰って来なかった。

 衛兵に捕えられ、王宮の地下牢に入れられてしまったのだ。

***

 父が血相を変えて、私の部屋に怒鳴り込んできた。

「お前の夫は正気の沙汰とは思えないな。妊娠してからの行動は、まるで皇太子を廃されようとしているとしか思えないではないか」

「私を守るためと言ってました」

「百人も傭兵を雇って、武具を調達して、誰から守るのだ?」

「お父様からではないでしょうか? そうとしか考えられませんっ」

「ばかな。お前や孫を攻撃などするものか!」

「監禁の影響でしょう。まるで人が変わってしまいました。何だか卑屈な感じなのです」

「挫折を知らない男だから、意外と精神が脆いかもな。お前をわしが操って、監禁したのだと思っているかもしれないな」

 私がやり過ぎたのかもしれないが、妊娠するまでは、監禁をものともしない感じだった。

 行動がおかしくなったのは、監禁ではなく、妊娠が原因のように思う。

「どういたしましょう」

「今回は謀反の嫌疑がかけられている。謀反と裁定された場合、わしもお前も死罪は免れん。関係者だから言い分も聞いてもらえない。こうなった以上、第三王子に取りなしてもらうことも考えよう。私から使者を出そう」

「エイミーに助けを求めるのですか?」

「マルソー一族はお人好しだ。泣いて頼めば、何とかしてくれるはずだ。特に妊娠中のお前には同情するだろう。演技の見せどころだぞ」

「分かりました」

(エイミーたちは簡単に騙せそうだけど、まさかエイミーに頭を下げることになるなんて。屈辱だわ)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

『完璧すぎる令嬢は婚約破棄を歓迎します ~白い結婚のはずが、冷徹公爵に溺愛されるなんて聞いてません~』

鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎる」 その一言で、王太子アルトゥーラから婚約を破棄された令嬢エミーラ。 有能であるがゆえに疎まれ、努力も忠誠も正当に評価されなかった彼女は、 王都を離れ、辺境アンクレイブ公爵領へと向かう。 冷静沈着で冷徹と噂される公爵ゼファーとの関係は、 利害一致による“白い契約結婚”から始まったはずだった。 しかし―― 役割を果たし、淡々と成果を積み重ねるエミーラは、 いつしか領政の中枢を支え、領民からも絶大な信頼を得ていく。 一方、 「可愛げ」を求めて彼女を切り捨てた元婚約者と、 癒しだけを与えられた王太子妃候補は、 王宮という現実の中で静かに行き詰まっていき……。 ざまぁは声高に叫ばれない。 復讐も、断罪もない。 あるのは、選ばなかった者が取り残され、 選び続けた者が自然と選ばれていく現実。 これは、 誰かに選ばれることで価値を証明する物語ではない。 自分の居場所を自分で選び、 その先で静かに幸福を掴んだ令嬢の物語。 「完璧すぎる」と捨てられた彼女は、 やがて―― “選ばれ続ける存在”になる。

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...