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第三段階
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エイミーが居室でロッキングチェアにかけて、編みものをしていたところに、マークが入って来た。
「マーク、グロリア伯爵の使いが来たって本当?」
先ほど侍女から聞いた話をエイミーは直接マークに確認した。
「ああ、さっき帰った」
マークはそう言って、エイミーの頬に軽くキスをした。
「それで何の用?」
「助けてくれって」
マークはエイミーのお腹に耳を当てて、胎動を注意深く聞いている。
「どういうこと?」
「第三段階に入ったんだ」
「第三段階?」
マークはエイミーのお腹を触りながら、少しずつ作戦の内容を話し始めた。
「そう。エイミーには話せるところまで話そう。兄さんが謀反の容疑で牢に入れられた」
「え? まさか」
「実は予定通りなんだ。それで、罪が確定次第、グロリア伯爵とフローラも連座して捕える予定だ」
マークはようやくエイミーから離れて、エイミーの隣のもう一台のロッキングチェアにかけた。
「謀反て死罪じゃ……?」
「そうだ。グロリア家はこれで終わりだ。兄さんはグロリア家を引き連れて自爆するためにフローラと結婚したんだ」
(何なの、その壮絶な計画は!?)
「……そんな計画があったなんて……。トーマスはどうなるの?」
「心配はしなくていい、としか言えない。全部話せないのは、兄さん自身や君や関係者の命を守るためなんだ。理解して欲しい」
「分かったわ。それで私たちはどうするの?」
「僕はすぐに王都に向かう。君は安定期まではここで安静にしていて欲しい。マルソー家が守ってくれる。安定期に入ったら、王都に戻って来て、立太子の礼に出席して欲しい」
「マーク、あなた皇太子になるの!?」
「そうなんだ。これも予定通りなんだ。エイミーは皇太子妃になるんだよ」
「……困るわ」
「ごめん、皇太子妃になっても、今のまま自由でいて大丈夫だから」
「……何か無理そう。でも、すぐにこの子に引き継いでしまえばいいか」
頑張ってね、とエイミーはお腹のなかの子に話しかけた。
「そうそう、僕は王なんてやりたくないんだよ。すぐに引き継いでしまおう。じゃあ、行ってくるね」
「え? もう行くの」
「グロリア伯爵に引導を渡してくる」
だが、あのグロリア伯爵が簡単にやられるだろうか。
「グロリア伯爵は抵抗するわよね」
「それはもう死にものぐるいで抵抗すると思うよ」
「勝てるの?」
「エイミーのお父上が協力してくれるんだ」
「お父様が?」
「うん、資金面と軍事面で全面的に協力してくれている。眠れる獅子と言われたマルソー家が立ち上がれば、グロリア派の貴族もあっという間に離散するはずだ」
「そうだったのね。そういえば、フローラの婚約披露パーティーのとき、陛下と何やら密談してたわね」
「うん、あの時にほぼ話はついたみたいだよ」
「フローラも死罪かしら?」
「フローラは兄さんの子どもを妊娠しているらしい。死罪は免れるかもしれない」
「そうなの? 妊娠しているってことに驚いたわ。男の人って、大嫌いな女性とも、その、出来ちゃうのね」
「何だか無理矢理だったみたいだよ」
「無理矢理って?」
「鎖で繋いで上から……、あの、詳細は聞かないで欲しいんだけど……」
「そ、そうね」
(でも、ちょっと興味あるわ。後でフローラに聞いてみようかしら)
「あの、エイミー……? ひょっとして笑ってる?」
「まさか。じゃあ、マーク、気をつけてね」
「あ、ああ」
マークは数十騎の護衛とともに王都に向かった。
(でも、そんなに思い通りに上手く行くのかしら)
エイミーは一抹の不安を覚えた。
「マーク、グロリア伯爵の使いが来たって本当?」
先ほど侍女から聞いた話をエイミーは直接マークに確認した。
「ああ、さっき帰った」
マークはそう言って、エイミーの頬に軽くキスをした。
「それで何の用?」
「助けてくれって」
マークはエイミーのお腹に耳を当てて、胎動を注意深く聞いている。
「どういうこと?」
「第三段階に入ったんだ」
「第三段階?」
マークはエイミーのお腹を触りながら、少しずつ作戦の内容を話し始めた。
「そう。エイミーには話せるところまで話そう。兄さんが謀反の容疑で牢に入れられた」
「え? まさか」
「実は予定通りなんだ。それで、罪が確定次第、グロリア伯爵とフローラも連座して捕える予定だ」
マークはようやくエイミーから離れて、エイミーの隣のもう一台のロッキングチェアにかけた。
「謀反て死罪じゃ……?」
「そうだ。グロリア家はこれで終わりだ。兄さんはグロリア家を引き連れて自爆するためにフローラと結婚したんだ」
(何なの、その壮絶な計画は!?)
「……そんな計画があったなんて……。トーマスはどうなるの?」
「心配はしなくていい、としか言えない。全部話せないのは、兄さん自身や君や関係者の命を守るためなんだ。理解して欲しい」
「分かったわ。それで私たちはどうするの?」
「僕はすぐに王都に向かう。君は安定期まではここで安静にしていて欲しい。マルソー家が守ってくれる。安定期に入ったら、王都に戻って来て、立太子の礼に出席して欲しい」
「マーク、あなた皇太子になるの!?」
「そうなんだ。これも予定通りなんだ。エイミーは皇太子妃になるんだよ」
「……困るわ」
「ごめん、皇太子妃になっても、今のまま自由でいて大丈夫だから」
「……何か無理そう。でも、すぐにこの子に引き継いでしまえばいいか」
頑張ってね、とエイミーはお腹のなかの子に話しかけた。
「そうそう、僕は王なんてやりたくないんだよ。すぐに引き継いでしまおう。じゃあ、行ってくるね」
「え? もう行くの」
「グロリア伯爵に引導を渡してくる」
だが、あのグロリア伯爵が簡単にやられるだろうか。
「グロリア伯爵は抵抗するわよね」
「それはもう死にものぐるいで抵抗すると思うよ」
「勝てるの?」
「エイミーのお父上が協力してくれるんだ」
「お父様が?」
「うん、資金面と軍事面で全面的に協力してくれている。眠れる獅子と言われたマルソー家が立ち上がれば、グロリア派の貴族もあっという間に離散するはずだ」
「そうだったのね。そういえば、フローラの婚約披露パーティーのとき、陛下と何やら密談してたわね」
「うん、あの時にほぼ話はついたみたいだよ」
「フローラも死罪かしら?」
「フローラは兄さんの子どもを妊娠しているらしい。死罪は免れるかもしれない」
「そうなの? 妊娠しているってことに驚いたわ。男の人って、大嫌いな女性とも、その、出来ちゃうのね」
「何だか無理矢理だったみたいだよ」
「無理矢理って?」
「鎖で繋いで上から……、あの、詳細は聞かないで欲しいんだけど……」
「そ、そうね」
(でも、ちょっと興味あるわ。後でフローラに聞いてみようかしら)
「あの、エイミー……? ひょっとして笑ってる?」
「まさか。じゃあ、マーク、気をつけてね」
「あ、ああ」
マークは数十騎の護衛とともに王都に向かった。
(でも、そんなに思い通りに上手く行くのかしら)
エイミーは一抹の不安を覚えた。
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