第一王子を取られたと思ったら、第三王子の方が優良物件でしたが……

もぐすけ

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第三王子の不安

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 マークは不安だった。

 計画通りとはいえ、エイミーとトーマスを二人きりにしてしまう。

 そのため、気の迷いが生じて、エイミーに王都に来いと言ってしまい、エイミーに選ばせる形にしてしまった。

 トーマスはエイミーのことを愛しているが、エイミーは興味がないから大丈夫だと納得しようとしても、不安は消えなかった。

 そんなとき、マークはフローラに面会することになった。
 
 グロリア家はフローラ一人だけが残されたのだが、一族の離散後、フローラは牢獄塔から毎日のように教会に行き、祈るようになっていた。

 最初はまた演技だとマークは思っていたのだが、つきものが落ちたように人が変わってしまったフローラの姿を教会で見かけて、マークは興味を持ち、話をしてみたのだ。

 フローラの母は、フローラが七歳のときに心臓発作で急死している。

 母が亡くなるまでは、フローラは明るく活発で優しい少女だったようだ。

 あまりにも意外だったため、マークは当時の学校の関係者に確認したが、驚くべきことに事実だった。

 母の死後、フローラは学校でいじめにあい、徐々に攻撃的な性格に変わって行ったという。

「母を亡くして、情緒不安定だったの。そうしたら、だんだん友達がいなくなって、虐められるようになり、毎日泣いていたわ。でも、お父様に言われたの。やり返さないと、私も殺されるって」

 グロリア伯爵が変わったのもこの頃だった。

 それまでも少々強引ではあったが、政敵を容赦なく徹底的に排除し始めたのだ。

「お父様はお母様の仇を討とうとしたの。だから、私も手伝ったわ」

「君の母上は病死ではないのか?」

「わからない。でも、お父様は殺されたと思っていたわ。お父様はおっしゃってたわ。強くなければ何も守れないって。上に立たなければ殺されるって。だから、私も上を目指したわ。誰かの下になったら、虐められるし、殺されるから」

「エイミーにはどんな目的で近づいたんだ?」

「お父様がマルソー家は味方にしたいとおっしゃったの。理由はわからないけど、私はエイミーと友だちになるように言われたわ。エイミーを騙すのは簡単だった」

「少女時代のエイミーはどんな感じだった?」

「バカなくらいお人好しで、明るくて元気で、本当の友だちになってもいいかもと思ったくらいよ。でも、トーマスが現れた。女子の友情なんて、男が現れた途端に簡単に壊れるのよ」

「兄さんはエイミーに振られたと言っていた」

「振られたのではなく、エイミーが身を引いたのよ。あの子はトーマスのことを大好きだったわよ。目がキラキラ輝いて、笑顔いっぱいでトーマスを見ていたわ。私がきれいと思うぐらいにね」

「エイミーはゴボウザルじゃなかったのか?」

「あはは、ぴったりの表現ね。誰があだ名をつけたの?」

「兄さんだよ」

「意外だわ。トーマスがね。エイミーはまさにゴボウザルだったけど、顔は綺麗だったわよ。日に焼けて髪はボサボサで、いつも野山を走り回ってたから、美人だとは気づかれなかったけどね」

「ある日を境に兄さんはどんなに誘っても、エイミーが屋敷から出て来なくなったと言っていた」

「きっと私と喧嘩した日よ。トーマスをどっちが取るかで大喧嘩よ。私はトーマスの正体を知っていたから、絶対に負ける訳には行かなかった。トーマスと付き合えなかったら、自殺するって言ったわ。そうしたら、エイミーは泣いて止めるのよ。エイミーが諦めるからって」

「そんなことが……」

「でも、私は信じてなかった。そう言って二人で会っていると思ったの。私がそういう性悪な性格だったから、人も同じだと思ってたの」

 まずい、二人にしたのは間違いだった……。
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