19 / 26
第三王子の不安
しおりを挟む
マークは不安だった。
計画通りとはいえ、エイミーとトーマスを二人きりにしてしまう。
そのため、気の迷いが生じて、エイミーに王都に来いと言ってしまい、エイミーに選ばせる形にしてしまった。
トーマスはエイミーのことを愛しているが、エイミーは興味がないから大丈夫だと納得しようとしても、不安は消えなかった。
そんなとき、マークはフローラに面会することになった。
グロリア家はフローラ一人だけが残されたのだが、一族の離散後、フローラは牢獄塔から毎日のように教会に行き、祈るようになっていた。
最初はまた演技だとマークは思っていたのだが、つきものが落ちたように人が変わってしまったフローラの姿を教会で見かけて、マークは興味を持ち、話をしてみたのだ。
フローラの母は、フローラが七歳のときに心臓発作で急死している。
母が亡くなるまでは、フローラは明るく活発で優しい少女だったようだ。
あまりにも意外だったため、マークは当時の学校の関係者に確認したが、驚くべきことに事実だった。
母の死後、フローラは学校でいじめにあい、徐々に攻撃的な性格に変わって行ったという。
「母を亡くして、情緒不安定だったの。そうしたら、だんだん友達がいなくなって、虐められるようになり、毎日泣いていたわ。でも、お父様に言われたの。やり返さないと、私も殺されるって」
グロリア伯爵が変わったのもこの頃だった。
それまでも少々強引ではあったが、政敵を容赦なく徹底的に排除し始めたのだ。
「お父様はお母様の仇を討とうとしたの。だから、私も手伝ったわ」
「君の母上は病死ではないのか?」
「わからない。でも、お父様は殺されたと思っていたわ。お父様はおっしゃってたわ。強くなければ何も守れないって。上に立たなければ殺されるって。だから、私も上を目指したわ。誰かの下になったら、虐められるし、殺されるから」
「エイミーにはどんな目的で近づいたんだ?」
「お父様がマルソー家は味方にしたいとおっしゃったの。理由はわからないけど、私はエイミーと友だちになるように言われたわ。エイミーを騙すのは簡単だった」
「少女時代のエイミーはどんな感じだった?」
「バカなくらいお人好しで、明るくて元気で、本当の友だちになってもいいかもと思ったくらいよ。でも、トーマスが現れた。女子の友情なんて、男が現れた途端に簡単に壊れるのよ」
「兄さんはエイミーに振られたと言っていた」
「振られたのではなく、エイミーが身を引いたのよ。あの子はトーマスのことを大好きだったわよ。目がキラキラ輝いて、笑顔いっぱいでトーマスを見ていたわ。私がきれいと思うぐらいにね」
「エイミーはゴボウザルじゃなかったのか?」
「あはは、ぴったりの表現ね。誰があだ名をつけたの?」
「兄さんだよ」
「意外だわ。トーマスがね。エイミーはまさにゴボウザルだったけど、顔は綺麗だったわよ。日に焼けて髪はボサボサで、いつも野山を走り回ってたから、美人だとは気づかれなかったけどね」
「ある日を境に兄さんはどんなに誘っても、エイミーが屋敷から出て来なくなったと言っていた」
「きっと私と喧嘩した日よ。トーマスをどっちが取るかで大喧嘩よ。私はトーマスの正体を知っていたから、絶対に負ける訳には行かなかった。トーマスと付き合えなかったら、自殺するって言ったわ。そうしたら、エイミーは泣いて止めるのよ。エイミーが諦めるからって」
「そんなことが……」
「でも、私は信じてなかった。そう言って二人で会っていると思ったの。私がそういう性悪な性格だったから、人も同じだと思ってたの」
まずい、二人にしたのは間違いだった……。
計画通りとはいえ、エイミーとトーマスを二人きりにしてしまう。
そのため、気の迷いが生じて、エイミーに王都に来いと言ってしまい、エイミーに選ばせる形にしてしまった。
トーマスはエイミーのことを愛しているが、エイミーは興味がないから大丈夫だと納得しようとしても、不安は消えなかった。
そんなとき、マークはフローラに面会することになった。
グロリア家はフローラ一人だけが残されたのだが、一族の離散後、フローラは牢獄塔から毎日のように教会に行き、祈るようになっていた。
最初はまた演技だとマークは思っていたのだが、つきものが落ちたように人が変わってしまったフローラの姿を教会で見かけて、マークは興味を持ち、話をしてみたのだ。
フローラの母は、フローラが七歳のときに心臓発作で急死している。
母が亡くなるまでは、フローラは明るく活発で優しい少女だったようだ。
あまりにも意外だったため、マークは当時の学校の関係者に確認したが、驚くべきことに事実だった。
母の死後、フローラは学校でいじめにあい、徐々に攻撃的な性格に変わって行ったという。
「母を亡くして、情緒不安定だったの。そうしたら、だんだん友達がいなくなって、虐められるようになり、毎日泣いていたわ。でも、お父様に言われたの。やり返さないと、私も殺されるって」
グロリア伯爵が変わったのもこの頃だった。
それまでも少々強引ではあったが、政敵を容赦なく徹底的に排除し始めたのだ。
「お父様はお母様の仇を討とうとしたの。だから、私も手伝ったわ」
「君の母上は病死ではないのか?」
「わからない。でも、お父様は殺されたと思っていたわ。お父様はおっしゃってたわ。強くなければ何も守れないって。上に立たなければ殺されるって。だから、私も上を目指したわ。誰かの下になったら、虐められるし、殺されるから」
「エイミーにはどんな目的で近づいたんだ?」
「お父様がマルソー家は味方にしたいとおっしゃったの。理由はわからないけど、私はエイミーと友だちになるように言われたわ。エイミーを騙すのは簡単だった」
「少女時代のエイミーはどんな感じだった?」
「バカなくらいお人好しで、明るくて元気で、本当の友だちになってもいいかもと思ったくらいよ。でも、トーマスが現れた。女子の友情なんて、男が現れた途端に簡単に壊れるのよ」
「兄さんはエイミーに振られたと言っていた」
「振られたのではなく、エイミーが身を引いたのよ。あの子はトーマスのことを大好きだったわよ。目がキラキラ輝いて、笑顔いっぱいでトーマスを見ていたわ。私がきれいと思うぐらいにね」
「エイミーはゴボウザルじゃなかったのか?」
「あはは、ぴったりの表現ね。誰があだ名をつけたの?」
「兄さんだよ」
「意外だわ。トーマスがね。エイミーはまさにゴボウザルだったけど、顔は綺麗だったわよ。日に焼けて髪はボサボサで、いつも野山を走り回ってたから、美人だとは気づかれなかったけどね」
「ある日を境に兄さんはどんなに誘っても、エイミーが屋敷から出て来なくなったと言っていた」
「きっと私と喧嘩した日よ。トーマスをどっちが取るかで大喧嘩よ。私はトーマスの正体を知っていたから、絶対に負ける訳には行かなかった。トーマスと付き合えなかったら、自殺するって言ったわ。そうしたら、エイミーは泣いて止めるのよ。エイミーが諦めるからって」
「そんなことが……」
「でも、私は信じてなかった。そう言って二人で会っていると思ったの。私がそういう性悪な性格だったから、人も同じだと思ってたの」
まずい、二人にしたのは間違いだった……。
1
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
『完璧すぎる令嬢は婚約破棄を歓迎します ~白い結婚のはずが、冷徹公爵に溺愛されるなんて聞いてません~』
鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎる」
その一言で、王太子アルトゥーラから婚約を破棄された令嬢エミーラ。
有能であるがゆえに疎まれ、努力も忠誠も正当に評価されなかった彼女は、
王都を離れ、辺境アンクレイブ公爵領へと向かう。
冷静沈着で冷徹と噂される公爵ゼファーとの関係は、
利害一致による“白い契約結婚”から始まったはずだった。
しかし――
役割を果たし、淡々と成果を積み重ねるエミーラは、
いつしか領政の中枢を支え、領民からも絶大な信頼を得ていく。
一方、
「可愛げ」を求めて彼女を切り捨てた元婚約者と、
癒しだけを与えられた王太子妃候補は、
王宮という現実の中で静かに行き詰まっていき……。
ざまぁは声高に叫ばれない。
復讐も、断罪もない。
あるのは、選ばなかった者が取り残され、
選び続けた者が自然と選ばれていく現実。
これは、
誰かに選ばれることで価値を証明する物語ではない。
自分の居場所を自分で選び、
その先で静かに幸福を掴んだ令嬢の物語。
「完璧すぎる」と捨てられた彼女は、
やがて――
“選ばれ続ける存在”になる。
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる