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社交界デビュー
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社交界デビューとは、簡単に言ってしまえば、良家の子女を著名人のパーティなどに連れて行って紹介することだ。
今日は第一王子の二十歳の誕生日会だが、当然我が家に招待状など届いてはいない。
カーネギー伯爵家が招待を受けており、マリアンヌは伯爵の次女として参加する。そして、俺は長女マーガレットの婚約者としての参加だ。
パーティの最初に、初参加の令息令嬢が壇上に集められ、一人ずつ紹介され始めた。
俺も初参加といえば初参加だが、紹介されるのは十六歳から十九歳までだ。
壇上には二十名ほどが並んでいるが、招待客は他を圧倒する美貌の二人の女性しか見ていなかった。
そのうちの一人、マーガレットが紹介され、すでに婚約者がいることが発表されると、会場から大きなため息が漏れた。
「マーガレット嬢は結核で先が長くないと聞いていたが、あの美しさを隠すための偽装だったのか」
「それにしてもやり手の伯爵がなぜ娘を名もない子爵などに嫁がせるのだろうか?」
その名もない子爵の前で話さないで欲しい。
ざわつきが終わらぬうちに、続いてマリアンヌが紹介され、婚約がまだであることがわかると、会場中の話題がマリアンヌ一色となった。
「伯爵は一人娘だったはずだぞ」
「養女らしい。ミドルネームのロンメルクはマーガレット嬢の婚約者の子爵殿と関係があるのか?」
「こんな美女が今まで知られていなかったのか」
「おや? 伯爵は若い女性と再婚されたのか? 新しい女性を連れておられるぞ」
「あなた、何をおっしゃってるの? あれはアンナ夫人よ」
「アンナ夫人!? 十歳以上若返っていないか!?」
それぞれが好き勝手なことを囁き、男性の眼はマリアンヌに、女性の眼はアンナ夫人へと向かっていく。
「だれが最初にマリアンヌ嬢にダンスを申し込むのだろうか?」
「それよりあなた、アンナ夫人の美容担当は誰なのか調べて来て頂戴」
ざわめきのなか、子息令嬢全員の紹介が終わり、ダンスの時間となった。
令嬢の最初のダンスの相手は、通常は父親が務める。
マーガレットのダンス相手はカーネギー伯爵が、そして、マリアンヌのダンス相手は俺が務めた。
「マーガレット嬢はキャスバル殿の妹君らしい」
どこからかそんな声が聞こえた。
マリアンヌはダンスが上手だ。両親から教わった形見のようなもので、両親が亡くなったあとも、ダンスの練習はずっと続けていた。
俺も元気な頃はマリアンヌの相手をしていたので、それなりに出来る。
会場は俺たち二人のダンスに釘付けとなった。
最初のダンスが終わり、マリアンヌの次のダンスの相手を巡って、男たちの牽制合戦が始まった。
俺はすぐにマーガレットの手を取り、ダンスを始めた。
会場の視線はマリアンヌに移るかと思ったら、何故か女性たちの眼が、俺にロックオンしている。
(アンナ、マーガレット、マリアンヌの美容担当があなただってバレたわよ)
女神様が理由を教えてくれた。いつかはバレると思っていたが、思ったより早かった。
「キャス様」
「ん? どうしたメグ」
俺はマーガレットのことをメグという愛称で呼んでいる。
「シクスス様がマリのお相手のようです」
ダンスを踊りながら、マリアンヌの方を見ると、涼しげな眼の超イケメンがマリアンヌの手を取っていた。
「へえ、男前だね。どこのお方?」
「第六王子様です」
マジかっ。
今日は第一王子の二十歳の誕生日会だが、当然我が家に招待状など届いてはいない。
カーネギー伯爵家が招待を受けており、マリアンヌは伯爵の次女として参加する。そして、俺は長女マーガレットの婚約者としての参加だ。
パーティの最初に、初参加の令息令嬢が壇上に集められ、一人ずつ紹介され始めた。
俺も初参加といえば初参加だが、紹介されるのは十六歳から十九歳までだ。
壇上には二十名ほどが並んでいるが、招待客は他を圧倒する美貌の二人の女性しか見ていなかった。
そのうちの一人、マーガレットが紹介され、すでに婚約者がいることが発表されると、会場から大きなため息が漏れた。
「マーガレット嬢は結核で先が長くないと聞いていたが、あの美しさを隠すための偽装だったのか」
「それにしてもやり手の伯爵がなぜ娘を名もない子爵などに嫁がせるのだろうか?」
その名もない子爵の前で話さないで欲しい。
ざわつきが終わらぬうちに、続いてマリアンヌが紹介され、婚約がまだであることがわかると、会場中の話題がマリアンヌ一色となった。
「伯爵は一人娘だったはずだぞ」
「養女らしい。ミドルネームのロンメルクはマーガレット嬢の婚約者の子爵殿と関係があるのか?」
「こんな美女が今まで知られていなかったのか」
「おや? 伯爵は若い女性と再婚されたのか? 新しい女性を連れておられるぞ」
「あなた、何をおっしゃってるの? あれはアンナ夫人よ」
「アンナ夫人!? 十歳以上若返っていないか!?」
それぞれが好き勝手なことを囁き、男性の眼はマリアンヌに、女性の眼はアンナ夫人へと向かっていく。
「だれが最初にマリアンヌ嬢にダンスを申し込むのだろうか?」
「それよりあなた、アンナ夫人の美容担当は誰なのか調べて来て頂戴」
ざわめきのなか、子息令嬢全員の紹介が終わり、ダンスの時間となった。
令嬢の最初のダンスの相手は、通常は父親が務める。
マーガレットのダンス相手はカーネギー伯爵が、そして、マリアンヌのダンス相手は俺が務めた。
「マーガレット嬢はキャスバル殿の妹君らしい」
どこからかそんな声が聞こえた。
マリアンヌはダンスが上手だ。両親から教わった形見のようなもので、両親が亡くなったあとも、ダンスの練習はずっと続けていた。
俺も元気な頃はマリアンヌの相手をしていたので、それなりに出来る。
会場は俺たち二人のダンスに釘付けとなった。
最初のダンスが終わり、マリアンヌの次のダンスの相手を巡って、男たちの牽制合戦が始まった。
俺はすぐにマーガレットの手を取り、ダンスを始めた。
会場の視線はマリアンヌに移るかと思ったら、何故か女性たちの眼が、俺にロックオンしている。
(アンナ、マーガレット、マリアンヌの美容担当があなただってバレたわよ)
女神様が理由を教えてくれた。いつかはバレると思っていたが、思ったより早かった。
「キャス様」
「ん? どうしたメグ」
俺はマーガレットのことをメグという愛称で呼んでいる。
「シクスス様がマリのお相手のようです」
ダンスを踊りながら、マリアンヌの方を見ると、涼しげな眼の超イケメンがマリアンヌの手を取っていた。
「へえ、男前だね。どこのお方?」
「第六王子様です」
マジかっ。
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