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第三章 起業と領地経営

農業演習

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酒場経営が軌道に乗り始め、ルイーゼ、アンリ、リンクの三人は、離れの執務室で今後について話していた。

「アードレー家が味方についたことで、王家を倒す計画を十年は前倒し出来ますよ!」

リンクはとても嬉しそうだ。

「え~とっ、いつの間に私たちは、王家を倒すことになっていたのでしたっけ?」

ルイーゼは戸惑いながらリンクに尋ねると、アンリが代わりに答えた。

「あれ? 姉さまは皇太子を蹴飛ばしても大丈夫なぐらいの力をつけるって、お母様にお話しされてませんでしたっけ?」

アンリが肘でルイーゼの腕をツンツンしてくる。

「それは確かに言ったけど」

「あの皇太子をぶん殴るんですよね!?」

なぜかアンリの鼻息が荒い。

「まあ、殴れるものなら、殴りたいわね」

ルイーゼはハンカチの屈辱を思い出した。

「では、殴りましょう。私はあの皇太子が大嫌いなのです」

リンクまで過激な発言をして来た。リンクが人を嫌うなんて珍しい。皇太子と何かあったのだろうか?

「王家を倒すには、アードレー家を王家を含めた国内全ての貴族を敵に回しても余裕で勝てるようにする必要があります。絶対的な力を示さないと、内乱が起き、国が疲弊してしまいますから」

そんなものなのだろうか。話が大きすぎて、ルイーゼにはピンと来なかった。

そんなルイーゼの表情を見て、リンクが補足をした。

「ルイーゼさんは、接戦を何とか制して勝つのと圧倒的に敵を蹴散らすのと、どちらがお好きですか?」

「圧倒的に蹴散らす方です……」

ルイーゼはそう答えるのが何だか恥ずかしかったので、小声で答えた。

「ですよね、私もそっちの方が好きです。アードレー家を無敵にしましょう。そのためには、領地経営の改革が必要です。まずはルイーゼさんには実地研修をして頂きたいです」

「何をするのでしょうか?」

「農民になって、税金を納めませんか?」

「はい?」

「ちょうど今、働き手が病死してしまって、このままでは税金が納められず、領主に接収されてしまう農地があります。この農地を私たちで引き継ぎませんか?」

「何をしていいのか全く分からないのですが……」

「私も農作業には詳しくないので、組織から技術指導者を手配してもらうようにしました。老夫婦に扮して、農業のイロハを教えてもらうことになっています。私とルイーゼさんは若夫婦役です。アンリは私の妹役です。この五人で農業します」

「えっ? 夫婦ですって!?」

「すいません、お嫌かもしれませんが、役人に怪しまれないように前の農家と同じ家族構成にしたいのです」

(やりますっ!)

などと食いついては、いい女が台無しだ。仕方ないわね、という態度と表情を作る。

「仕方がないです」

「すいません。農作業はかなり厳しいので、労働担当に別の人間を用意しています。ですから、ルイーゼさんとアンリは農作業は見ているだけで大丈夫です。日に焼けるのも不味いでしょうから、木陰から眺めていればいいです」

(何だか随分楽そうね。まるで毎日ピクニック気分かも)

「リンクさんは農作業されるのですか?」

「ええ、私はいつも体を鍛えておりますので、いい運動になって丁度いいです」

(じょ、上半身裸になって、た、耕したり、す、するのかしら?)

「どうかしましたか?」

「いいえ、何でもありません」

私はすまして答えた。

「そうですか。緩い体験学習ですので、ご心配なく」

農業演習、楽しすぎるんじゃないっ!?
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