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第三章 魔王城
契約更改
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『よお、エリコさんの契約解除しろよ』
俺は自分が闇金の追い込みをかけているような気分だった。
「これは両者合意のうえでの契約です」
魔王が必死に抵抗する。
『お前ら、問答無用で勝手に異世界からエリコさん連れ出しておいて、何もわからないエリコさんに契約させて、そういうのを両者合意っていうのか、ぉお?」
「そ、それは……」
『エリコさんを元の世界に戻すか、契約破棄しろ。それが出来ないっていうなら、俺の隣におられる姐さんに、この前みたいな手加減なしの前蹴りを決めてもらうからな』
魔王は顔面蒼白だ。魔王妃は腰を抜かしてしまって、椅子から立ち上がれない状態だ。
『ちっ、わかんねえやつだな。じゃあ、姐さん、よろしくお願いします。こいつが死ねば、契約は自動解除されるでしょう』
ミサトは頷いて、魔王の椅子を手加減なしで思いっきり蹴飛ばした。俺はパンツが見える位置に気づかれないように移動して、パンチラを堪能したことは黙っておく。
ミサトの足が当たった部分から椅子がものすごい勢いで爆発して、後ろの壁にぼろぼろになった椅子の一部が勢いよくぶつかり、バラバラに飛び散った。
椅子の破片のいくつかが魔王妃の方に飛んで行き、魔王妃は椅子の上で頭を抱えてまるまって、ガクガクと震えている。
魔王は座っていた椅子がなくなり、尻もちをついていた。
『姐さん、ちゃんと狙って下さいよ。次は外さないでくださいね』
「ま、待って下さい。け、契約は破棄します。契約魔法を唱えたおばばを連れて来ますので、少しお待ち下さい」
慌てて魔王は部屋を出て行った。
『最初からそう言えばいいのによぉ。立派な椅子が木片になっちゃったじゃねえか』
俺はそう言い残して、魔王が逃げないようにあとをつけた。部下に呼びに行かせればいいのに、魔王自ら呼びにいく行動を不審に思ったからだ。
『おい、逃げるなよ』
俺が後ろから声をかけると、魔王がビクッとした。
「はい、逃げないです」
『お前たちの召喚には頭きてるんだよ。自分勝手に呼び出しやがって。呼び出される側の迷惑は考えたことないのかよ』
「すいません」
魔王は急ぎ足で歩きながら謝った。
『勇者はこのままでいいから、聖女は解放するんだぞ』
「ゆ、勇者はいいんですねっ」
『おう、勇者はくれてやる』
魔王がほっとした表情を見せた。ちっ、こいつ、本当に俺に似てやがる。
魔王は祭壇のようなものが飾ってある部屋に入った。奥でこの前見た赤い服のお婆さんが跪いて祈っていた。
「おばば、聖女との契約を解除せよ、との神様のご命令だ」
魔王の声にお婆さんは祈りをやめて振り返った。
「契約はどちらかが死亡するまで破棄は出来ませぬ」
『じゃあ、魔王には死んでもらおう』
「れ、霊王様!」
お婆さんがそう言って俺の方に向かってすぐに平伏した。見えてはいないようだ。「霊王」というのは耳慣れない単語だが、とりあえずはスルーしておく。
『お婆さん、エリコさんが自由になる方法を教えてくれないと、魔王が死んじゃうよ』
お婆さんは平伏したまま答えた。
「契約更改という手がございます。契約者を魔王様から魔王妃様に変更して、魔王妃様が聖女様にご一緒するという方法はいかがでしょうか。さすれば、聖女様はほぼ自由に動けます」
『魔王はどうなるの?』
「魔王様は勇者様と一緒に魔王城にて政務がございます」
『契約者を魔王から俺には出来ないの?』
「魔王様の継承者に限ります。現在、継承者は魔王妃様のみでございます」
『分かった。姐さんと相談してくる』
俺は魔王とお婆さんを残して、ミサトのところに向かった。
残された魔王がお婆さんに質問した。
「霊王というのは何だ?」
「人の耳に聞こえる音を出せる霊はかなり格の高い霊でございます。私ども霊能者は霊王様とお呼びして、崇めております」
「姐さんと呼ばれている霊の方は声は出さないが、恐ろしい威力の蹴りを持っている。この前も今も死にかけた。霊王はそんな力も持つのか?」
「そのお方は『霊王』を超える『神霊』でございます。神々と同等の最高位の霊でございます。決してお怒りを買わぬようお願い致します」
「すでに買ってしまっているようなのだ。お主もだぞ」
お婆さんはこの世の終わりを迎えたような顔になった。
「そ、それはまずいです。国が滅びてしまいます。神霊は意志を持った天災でございます。お怒りを鎮めていただくよう誠心誠意ご対応くださいませ」
「わ、わかった」
えらいものに目をつけられてしまった。こうなった以上、魔王妃になんとか頑張って欲しいと及び腰の魔王であった。
俺は自分が闇金の追い込みをかけているような気分だった。
「これは両者合意のうえでの契約です」
魔王が必死に抵抗する。
『お前ら、問答無用で勝手に異世界からエリコさん連れ出しておいて、何もわからないエリコさんに契約させて、そういうのを両者合意っていうのか、ぉお?」
「そ、それは……」
『エリコさんを元の世界に戻すか、契約破棄しろ。それが出来ないっていうなら、俺の隣におられる姐さんに、この前みたいな手加減なしの前蹴りを決めてもらうからな』
魔王は顔面蒼白だ。魔王妃は腰を抜かしてしまって、椅子から立ち上がれない状態だ。
『ちっ、わかんねえやつだな。じゃあ、姐さん、よろしくお願いします。こいつが死ねば、契約は自動解除されるでしょう』
ミサトは頷いて、魔王の椅子を手加減なしで思いっきり蹴飛ばした。俺はパンツが見える位置に気づかれないように移動して、パンチラを堪能したことは黙っておく。
ミサトの足が当たった部分から椅子がものすごい勢いで爆発して、後ろの壁にぼろぼろになった椅子の一部が勢いよくぶつかり、バラバラに飛び散った。
椅子の破片のいくつかが魔王妃の方に飛んで行き、魔王妃は椅子の上で頭を抱えてまるまって、ガクガクと震えている。
魔王は座っていた椅子がなくなり、尻もちをついていた。
『姐さん、ちゃんと狙って下さいよ。次は外さないでくださいね』
「ま、待って下さい。け、契約は破棄します。契約魔法を唱えたおばばを連れて来ますので、少しお待ち下さい」
慌てて魔王は部屋を出て行った。
『最初からそう言えばいいのによぉ。立派な椅子が木片になっちゃったじゃねえか』
俺はそう言い残して、魔王が逃げないようにあとをつけた。部下に呼びに行かせればいいのに、魔王自ら呼びにいく行動を不審に思ったからだ。
『おい、逃げるなよ』
俺が後ろから声をかけると、魔王がビクッとした。
「はい、逃げないです」
『お前たちの召喚には頭きてるんだよ。自分勝手に呼び出しやがって。呼び出される側の迷惑は考えたことないのかよ』
「すいません」
魔王は急ぎ足で歩きながら謝った。
『勇者はこのままでいいから、聖女は解放するんだぞ』
「ゆ、勇者はいいんですねっ」
『おう、勇者はくれてやる』
魔王がほっとした表情を見せた。ちっ、こいつ、本当に俺に似てやがる。
魔王は祭壇のようなものが飾ってある部屋に入った。奥でこの前見た赤い服のお婆さんが跪いて祈っていた。
「おばば、聖女との契約を解除せよ、との神様のご命令だ」
魔王の声にお婆さんは祈りをやめて振り返った。
「契約はどちらかが死亡するまで破棄は出来ませぬ」
『じゃあ、魔王には死んでもらおう』
「れ、霊王様!」
お婆さんがそう言って俺の方に向かってすぐに平伏した。見えてはいないようだ。「霊王」というのは耳慣れない単語だが、とりあえずはスルーしておく。
『お婆さん、エリコさんが自由になる方法を教えてくれないと、魔王が死んじゃうよ』
お婆さんは平伏したまま答えた。
「契約更改という手がございます。契約者を魔王様から魔王妃様に変更して、魔王妃様が聖女様にご一緒するという方法はいかがでしょうか。さすれば、聖女様はほぼ自由に動けます」
『魔王はどうなるの?』
「魔王様は勇者様と一緒に魔王城にて政務がございます」
『契約者を魔王から俺には出来ないの?』
「魔王様の継承者に限ります。現在、継承者は魔王妃様のみでございます」
『分かった。姐さんと相談してくる』
俺は魔王とお婆さんを残して、ミサトのところに向かった。
残された魔王がお婆さんに質問した。
「霊王というのは何だ?」
「人の耳に聞こえる音を出せる霊はかなり格の高い霊でございます。私ども霊能者は霊王様とお呼びして、崇めております」
「姐さんと呼ばれている霊の方は声は出さないが、恐ろしい威力の蹴りを持っている。この前も今も死にかけた。霊王はそんな力も持つのか?」
「そのお方は『霊王』を超える『神霊』でございます。神々と同等の最高位の霊でございます。決してお怒りを買わぬようお願い致します」
「すでに買ってしまっているようなのだ。お主もだぞ」
お婆さんはこの世の終わりを迎えたような顔になった。
「そ、それはまずいです。国が滅びてしまいます。神霊は意志を持った天災でございます。お怒りを鎮めていただくよう誠心誠意ご対応くださいませ」
「わ、わかった」
えらいものに目をつけられてしまった。こうなった以上、魔王妃になんとか頑張って欲しいと及び腰の魔王であった。
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