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第三章 魔王城

魔区再訪

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 魔区に再びやって来た。

 俺たちはエリコが滞在しているホテルに直行した。今回はエリコは一人でベッドの上に座ってぼっーとしていた。今は昼の二時だ。

「エリコの勤務時間はどうなってるんだ」

「さあ。それよりもまずはローション探しよ」

 小一時間ほど探したが、ローションらしきものはなかった。代用できるものもなかった。触れないものも沢山あって、その中にそれっぽいものがあったので、恐らくエリコはそっちの方を使っているのだろう。

 俺たちが探し終わっても、エリコはまだぼっーとしていた。座っていた場所もあまり変わっていない。

「大丈夫か? エリコのやつ」

「まだ庇護欲あるの?」

「まあな。独りぼっちで可哀想だろ」

「じゃあ、守ろうか」

「ミサトがいいなら」

「ゆうきは私がいいって言うまで話さないでよ」

「分かった」

 ミサトが拡声器を手にした。

『エリコ、元気ないね』

「え?」

 エリコがびっくりしてキョロキョロしている。

 ミサトは携帯のビデオをベッドの上に置いた。

『ミサトだよ、もっと元気出しなよ!』

 ベッドの上に突然現れた携帯から懐かしいミサトが手を振っていた。

「ミサト!? ミサトなのっ!?」

『エリコ、久しぶり~。私もこっちに来てたのよ。城にいたときに、ビンタして、蹴飛ばして、ごめんね~』

「あれはあなただったのね。でも、そんなのどうでもいいよぉ。ミサトにハグしたいよぉ、もう私、寂しくて、限界だよ~」

 エリコは泣きじゃくっていた。

『私ね、幽霊になっちゃったみたいなの。だから、あなたからは触れないの。私が頭ポンポンしてあげるね』

 ミサトはエリコの頭をそっと軽くポンポンした。

「あっ、すごい。ポンポンされた」

 その後、お互いにこれまでのことを三時間ぐらい話していた。

「女帝ミサトについに彼氏が出来たのね」

『何? 女帝って』

「ミサトはバイト仲間からもお客さんからもすごい人気だったけど、理想が高くて、近づいてくる男は全て敗れ去って行ったよね。それで『女帝』って呼ばれてたのよ」

『妥協したくなかったのよ』

「レンもダメだったんでしょ」

『うん、不合格だった』

「そっか、私がレンとヨリを戻しかけたからビンタしたのね。でも、良かったと思う。あいつ、すぐ暴力振るうのよ」

『みたいね』

「ねえ、ゆうきさんのビデオ見せてよ」

ミサトが俺に向かって頷いている。俺はビデオにメッセージを入れて、再生した。

『エリコさん、初めまして、なかむらゆうきです』

「初めまして。魔王によく似てますね。あと、オーナーに雰囲気がそっくりです。ミサトが好きになるの分かります」

 オーナーというのは、バイト先のケーキ屋チェーンのオーナー、すなわち、ミサトの親父さんだ。

『え? そうなの?』

 ミサトも驚いていた。

「うん、よく似てるよ。ねえ、ミサト、私もネットしたい。日本の家族や友達と通信もしたいよ」

 俺たちはエリコから懇願された。重度のホームシックにかかってしまっているエリコにとって、一番の薬になるだろう。

 ただ、問題は魔王との契約だ。エリコは魔王から要請があったときに、側に仕えることになっているらしい。ほとんど要請はないらしいが、先日の治療のときのように緊急で呼び出される場合があり、魔区を離れることは出来ないそうだ。

『魔王との契約解除の方法は分かりますか』

「分からないです」

『仕方ない、魔王に直接聞くか』

 俺たち三人は魔王城に向かうことにした。
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