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第七章 王国と帝国
勝負
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久しぶりの竹藪を猛スピードで抜け、藪の神社に到着した。ミサトとここに転移して来てから、まだ一ヶ月ほどなのだが、随分と色々なことがあったような気がする。
アオが電波状況を調べている。
「アオ、どんな感じだ?」
「やはり神々のミラーサイトからの発信のようです。ここで地球の規格で接続が出来るということは、この神社はこの世界での地球の神々の拠点だと思います」
地球が異世界に置いている大使館みたいなものか。誰もいないけど。
「そういえば、私たちは本当はもっと地球で留学していたはずなのよね」
確かワインがそんなことを言っていた。ってことは、何かあったってことだ。
「エリコさんたちの召喚に巻き込まれて転移したのかと思っていたが、巻き込まれる前に地球の神々が俺たちを先に転送したんじゃないかな」
ミサトが頷いている。
「そうかもね。レンやエリコよりも私たちの方が先にこっちに来たからね。ゆうきと一緒だったのは偶然なのかしら?」
あの日、同じ神社に俺とミサトが偶然いっしょにいて、偶然俺が間違ってミサトの手を取ったということは考えにくい。
「神々は未来を観ることができますので、偶然ではないはずです」
俺たちの会話を聞いていたワインが教えてくれた。
「すごいな、神々は予知能力があるのか」
何となくだが、あの日、同じ神社にいたのは偶然かもしれないが、俺が妹の手と間違えてミサトの手を取ることは神々が仕組んだように思う。どうやったかは分からないが。
「予見の神通力は、神霊様にもございます」
ワインは俺たちが神々と同等の存在ってよく言っているが、逆にどこが違うんだろうか。
「やっぱりね。最近、よく予想通りになるのよ。あ、これ、分かってた、ってのが多いよ」
俺には全くそんな兆候はない。やはりミサトの神格化のスピードは俺よりもずいぶんと速いようだ。
「なあ、ワイン、神霊ってのは神々とどこが違うのだ?」
「同じです。役職が違うだけです」
「同じって、今更なんだけど、俺って神だったの?」
「神は職業です。ゆうき様は神族であらせられ、神霊というお役割です」
「ってことは、神って俺の上司なのかな」
「それに近いと思います。神霊様は神々に代わって、世界を統べるお方です」
「よくわからないのだが、世界を統べるって何?」
「それは神霊様がお決めになることでございます」
「ゆうき、私は分かったわよ。要するに好きにしていいってことよ」
「そうなのか?」
本当に分かってるのかな、ミサトは。都合よく考えてるだけじゃないのか。
「その通りでございます。神霊様のお好きなように世界をお治め下さいませ」
ダメだ、神霊の存在意義が全く分からない。煮え切らない顔の俺をみて、ミサトが俺の肩に腕を回して来た。胸が当たって気持ちいいんだが。
「ゆうきは考えすぎなのよ。動く人形のおもちゃをもらったと思えばいいのよ。で、この世界、ゆうきはどうしたい?」
「いきなりそんなこと言われてもなあ。あれかな。カブトムシ飼って、オスとメスを入れて、沢山卵産ませて、幼虫いっぱい産まれてきて、それを育てて面白いってやつなのかな」
「カブトムシって、そんな小さなスケールじゃないわよ。シミュレーションゲームのリアル版で、ゲームよりももっと複雑で難しいんじゃないかしら。ねえ、ゆうき、勝負しない? 殺し合わせるのは可哀想だから、どっちが人口を増やせるか、みたいな平和的なものがいいわね」
「いいけど、例のご褒美を貰えるのかな?」
「ゆうきは本当にそればっかりよね。逆に感心するわよ。そんなに私がいいの?」
「はい、最高です」
「いいわよ。ルールと褒美を決めるわよ」
アオが電波状況を調べている。
「アオ、どんな感じだ?」
「やはり神々のミラーサイトからの発信のようです。ここで地球の規格で接続が出来るということは、この神社はこの世界での地球の神々の拠点だと思います」
地球が異世界に置いている大使館みたいなものか。誰もいないけど。
「そういえば、私たちは本当はもっと地球で留学していたはずなのよね」
確かワインがそんなことを言っていた。ってことは、何かあったってことだ。
「エリコさんたちの召喚に巻き込まれて転移したのかと思っていたが、巻き込まれる前に地球の神々が俺たちを先に転送したんじゃないかな」
ミサトが頷いている。
「そうかもね。レンやエリコよりも私たちの方が先にこっちに来たからね。ゆうきと一緒だったのは偶然なのかしら?」
あの日、同じ神社に俺とミサトが偶然いっしょにいて、偶然俺が間違ってミサトの手を取ったということは考えにくい。
「神々は未来を観ることができますので、偶然ではないはずです」
俺たちの会話を聞いていたワインが教えてくれた。
「すごいな、神々は予知能力があるのか」
何となくだが、あの日、同じ神社にいたのは偶然かもしれないが、俺が妹の手と間違えてミサトの手を取ることは神々が仕組んだように思う。どうやったかは分からないが。
「予見の神通力は、神霊様にもございます」
ワインは俺たちが神々と同等の存在ってよく言っているが、逆にどこが違うんだろうか。
「やっぱりね。最近、よく予想通りになるのよ。あ、これ、分かってた、ってのが多いよ」
俺には全くそんな兆候はない。やはりミサトの神格化のスピードは俺よりもずいぶんと速いようだ。
「なあ、ワイン、神霊ってのは神々とどこが違うのだ?」
「同じです。役職が違うだけです」
「同じって、今更なんだけど、俺って神だったの?」
「神は職業です。ゆうき様は神族であらせられ、神霊というお役割です」
「ってことは、神って俺の上司なのかな」
「それに近いと思います。神霊様は神々に代わって、世界を統べるお方です」
「よくわからないのだが、世界を統べるって何?」
「それは神霊様がお決めになることでございます」
「ゆうき、私は分かったわよ。要するに好きにしていいってことよ」
「そうなのか?」
本当に分かってるのかな、ミサトは。都合よく考えてるだけじゃないのか。
「その通りでございます。神霊様のお好きなように世界をお治め下さいませ」
ダメだ、神霊の存在意義が全く分からない。煮え切らない顔の俺をみて、ミサトが俺の肩に腕を回して来た。胸が当たって気持ちいいんだが。
「ゆうきは考えすぎなのよ。動く人形のおもちゃをもらったと思えばいいのよ。で、この世界、ゆうきはどうしたい?」
「いきなりそんなこと言われてもなあ。あれかな。カブトムシ飼って、オスとメスを入れて、沢山卵産ませて、幼虫いっぱい産まれてきて、それを育てて面白いってやつなのかな」
「カブトムシって、そんな小さなスケールじゃないわよ。シミュレーションゲームのリアル版で、ゲームよりももっと複雑で難しいんじゃないかしら。ねえ、ゆうき、勝負しない? 殺し合わせるのは可哀想だから、どっちが人口を増やせるか、みたいな平和的なものがいいわね」
「いいけど、例のご褒美を貰えるのかな?」
「ゆうきは本当にそればっかりよね。逆に感心するわよ。そんなに私がいいの?」
「はい、最高です」
「いいわよ。ルールと褒美を決めるわよ」
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