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第七章 王国と帝国
家族風呂
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俺たちは藪神社に向かって神走りをしていた。俺は昨夜、「権現」の取得に夢中になり過ぎてしまい、神通力を使い果たし、死んだように眠ってしまったのだ。
ワインが家族風呂の時間だと呼びに来てもピクリともしなかったという。神通力切れはかなりやばい。ほどほどにしなければ。
ただ、努力の甲斐あって、権現はできるようになった。今朝もキララが挨拶したいというので、権現して会ったら、えらく感激されて、また抱きつかれてしまった。ミサトが氷のような目で見ていたが、キララは度胸あるなあ。
「ミサト、帰りにまた温泉寄りたいな。俺も久々に温泉を堪能してみたい」
ミサトは先ほどから黙って走っている。キララが抱きついたからだろうか。機嫌が悪いような気がする。
「ゆうき、あなたキララはどうするのよ?」
うおっ、き、来たかっ。
「どうするって、特にどうもしないぞ。ただ、庇護はするぞ」
俺は用意していた回答を口にした
「皇帝が狙っているようよ」
「キララをか?」
「この国をよ」
「この国の女王は俺たちが決めたってことを皇帝は知ってるのか?」
「知らないでしょうね」
「まずはそれを教えて、出方を見ればいいんじゃないか? いきなり殺すのは良くないと思うぞ」
「殺すなんて一言も言ってないわよ。キララ、また抱きついてたわね。しかも、私の見えるところでね。あの子、命がけであなたのお妾さんになりたいようね」
「お、お父さんが恋しい年頃なんじゃないか? ミサト、キララを殺すなよ」
お父さんが恋しい年頃って一体なんだ? そんなのあるわけないな、と自問自答してみた。
「殺すつもりなら、抱きついたときに殺してたわよ。少しね、思い出したのよ。こういうのは初めてではないってね。初めてどころかしょっちゅうだったのよ」
ワインとアオが気のせいか、俺の後ろに隠れるような位置どりで走っているような気がする。
「何の話だ?」
「あなたは優しいだけが取り柄のヘタレなんかじゃないってことよっ」
何だ何だ? 寒さを感じないはずの俺が寒いぞっ。ミサトからものすごい冷気が出ている。
「ミサト、とりあえず落ち着こう。俺には何のことなのかさっぱりわからないぞ」
「でしょうね。この浮気神っ」
ミサトが走りながら、さらに冷気を強めて来た。神霊の俺がとてつもなく寒い。ワインとアオはいつの間にかいなくなっていた。
「落ち着いてくれ。俺は浮気なんてしていないだろう? ミサト一筋だぜ」
「ふん、まあいいわ。でも、今回ので家族風呂はなしよ」
「え? 何で?」
「話は終わりよ」
「どうして、人間なんかを気にするんだよ」
ダメだ。ミサトはもう話すつもりはないらしい。あれ? ワインとアオがまた並走している。
「ほどほどにお願いします」
ワインがボソボソと話しかけて来た。
「俺は何もしていないだろう」
「人間の女が抱きついてきてもお咎めなしとは、何らかの感情がおありになるということです」
「あれだけで罰するのか。いくら何でもおかしいだろう」
「ゆうき様、御身のためにも、優しさはミサト様にだけお向けになるようお願いします」
ワインはそう言って少し離れたところを並走している。アオが何とも言えない苦笑いのような顔をしている。
「おい、アオっ」
俺はアオに近づいていった。
「ミサトは何であんなに怒るんだ?」
アオは驚いた顔をしている。
「ゆうき様、仮に私がゆうき様の目の前で、ミサト様に抱きついたら、どうされます?」
「ぶち殺す」
「で、私を殺さないでとミサト様に言われたら?」
「とても悲しい。アオ、ありがとう。分かったよ」
俺がまずしなければいけないことは、ミサトに謝ることだった。
「ミサト、ごめん。俺が悪かった。許して下さい」
ミサトは驚いたような顔をして、それからクスッと笑った。
「ゆうきは素直なところがいいわね。悪いと思ったら謝るって、案外難しいものなのに」
ミサトはふうっと息を吐いた。
「キララの件は私も少し考えるわ。あの子は本当に命をかけて私に許可を求めているの。コソコソ隠れず、私の見ているところで、私に許してと叫んでるのよ。ゆうきを好きでいさせて下さいってね」
ワインが家族風呂の時間だと呼びに来てもピクリともしなかったという。神通力切れはかなりやばい。ほどほどにしなければ。
ただ、努力の甲斐あって、権現はできるようになった。今朝もキララが挨拶したいというので、権現して会ったら、えらく感激されて、また抱きつかれてしまった。ミサトが氷のような目で見ていたが、キララは度胸あるなあ。
「ミサト、帰りにまた温泉寄りたいな。俺も久々に温泉を堪能してみたい」
ミサトは先ほどから黙って走っている。キララが抱きついたからだろうか。機嫌が悪いような気がする。
「ゆうき、あなたキララはどうするのよ?」
うおっ、き、来たかっ。
「どうするって、特にどうもしないぞ。ただ、庇護はするぞ」
俺は用意していた回答を口にした
「皇帝が狙っているようよ」
「キララをか?」
「この国をよ」
「この国の女王は俺たちが決めたってことを皇帝は知ってるのか?」
「知らないでしょうね」
「まずはそれを教えて、出方を見ればいいんじゃないか? いきなり殺すのは良くないと思うぞ」
「殺すなんて一言も言ってないわよ。キララ、また抱きついてたわね。しかも、私の見えるところでね。あの子、命がけであなたのお妾さんになりたいようね」
「お、お父さんが恋しい年頃なんじゃないか? ミサト、キララを殺すなよ」
お父さんが恋しい年頃って一体なんだ? そんなのあるわけないな、と自問自答してみた。
「殺すつもりなら、抱きついたときに殺してたわよ。少しね、思い出したのよ。こういうのは初めてではないってね。初めてどころかしょっちゅうだったのよ」
ワインとアオが気のせいか、俺の後ろに隠れるような位置どりで走っているような気がする。
「何の話だ?」
「あなたは優しいだけが取り柄のヘタレなんかじゃないってことよっ」
何だ何だ? 寒さを感じないはずの俺が寒いぞっ。ミサトからものすごい冷気が出ている。
「ミサト、とりあえず落ち着こう。俺には何のことなのかさっぱりわからないぞ」
「でしょうね。この浮気神っ」
ミサトが走りながら、さらに冷気を強めて来た。神霊の俺がとてつもなく寒い。ワインとアオはいつの間にかいなくなっていた。
「落ち着いてくれ。俺は浮気なんてしていないだろう? ミサト一筋だぜ」
「ふん、まあいいわ。でも、今回ので家族風呂はなしよ」
「え? 何で?」
「話は終わりよ」
「どうして、人間なんかを気にするんだよ」
ダメだ。ミサトはもう話すつもりはないらしい。あれ? ワインとアオがまた並走している。
「ほどほどにお願いします」
ワインがボソボソと話しかけて来た。
「俺は何もしていないだろう」
「人間の女が抱きついてきてもお咎めなしとは、何らかの感情がおありになるということです」
「あれだけで罰するのか。いくら何でもおかしいだろう」
「ゆうき様、御身のためにも、優しさはミサト様にだけお向けになるようお願いします」
ワインはそう言って少し離れたところを並走している。アオが何とも言えない苦笑いのような顔をしている。
「おい、アオっ」
俺はアオに近づいていった。
「ミサトは何であんなに怒るんだ?」
アオは驚いた顔をしている。
「ゆうき様、仮に私がゆうき様の目の前で、ミサト様に抱きついたら、どうされます?」
「ぶち殺す」
「で、私を殺さないでとミサト様に言われたら?」
「とても悲しい。アオ、ありがとう。分かったよ」
俺がまずしなければいけないことは、ミサトに謝ることだった。
「ミサト、ごめん。俺が悪かった。許して下さい」
ミサトは驚いたような顔をして、それからクスッと笑った。
「ゆうきは素直なところがいいわね。悪いと思ったら謝るって、案外難しいものなのに」
ミサトはふうっと息を吐いた。
「キララの件は私も少し考えるわ。あの子は本当に命をかけて私に許可を求めているの。コソコソ隠れず、私の見ているところで、私に許してと叫んでるのよ。ゆうきを好きでいさせて下さいってね」
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