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屈辱ですわ
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第一回戦は「生花」だ。
妃候補全員に同じ大きさの籠が渡された。
この中に生花を入れて、フラワーアレンジメントの出来栄えを競うものだった。
制限時間は三時間で、すぐに審査員が点数をつける。
花は東宮殿に隣接する花園から摘むのだが、妃候補が直接摘むことは出来ない。
妃候補たちが花園に行って、花材を吟味した後、花の種類、色、本数を紙に記入して、試験官に渡す。
試験官は指定された花を摘んで候補者に渡すのだが、候補者はそれぞれ個室にいるため、誰が何の花を使ったのかは、お互いに分からないようになっている。
「何だかよくわからないのよねえ。花は野に咲いているのが一番綺麗だと私は思うのよ」
とはいえ、こんな感じが綺麗かな、というのを私なりに作った。
すぐに結果が発表された。
最優秀賞はマーガレットで、なんと審査員全員が100点をつけ、500点だった。
次点はリリアナの495点、私は恥ずかしくて点数は言えないが、順位は後ろから数えた方が早かった。
不得意分野とはいえ、何という屈辱だ。
皇太子殿下は会場にはいらしていない。
合わせる顔がないので、いらしてなくて本当によかったが、結果は毎日皇太子殿下に伝えられるそうだ。
(がっかりさせちゃうわよね。ごめんなさい。こういうの、私、出来ないのっ)
私は何とも申し訳ない気持ちになった。
だが、これが私の実力なのだから、仕方がない。
こんな気分のまま、夕方から妃候補たちの懇親会だった。
(最悪だわ。涙が出そう……)
立食形式での夕食会だった。
私は話す相手もなく、適当に料理と飲物をとって、壁の花になっていた。
マーガレットを中心とした輪とリリアナを中心とした二つの輪が出来ている。
皇太子殿下推薦枠の妃たちも、どちらかの輪に入っているようだ。
恐らく彼女たちは幼少から親交があるに違いない。
マーガレットが私が一人でいるのを気の毒がってか、取り巻きから離れて、私のところに近づいて来た。
「ソフィアさん、よろしかったら、こちらにいらして」
「お誘いありがとうございます」
私は遠慮なくマーガレットの輪に入って行った。
話しているのは主にマーガレットで、他の人たちは聞き役のようだ。
「ソフィアさん、帝国は初めてかしら?」
マーガレットは私を話題に選んだようだ。
「はい、初めてです」
「帝国語がお上手なのね」
「いいえ、敬語が上手くなくて、失礼な言い方をしてしまったら、ごめんなさい」
大丈夫よ、とそれぞれが口にしてくれる。思ったより、皆友好的だ。
敵ではないと思って、警戒されなくなったのかもしれない。
「ストレートにお伺いしてよろしいかしら」
「はい、何でしょうか?」
「どういった理由で皇太子殿下から推薦されたのかしら? お会いしたこともないのでしょう?」
殿下の学園への留学が身代わりだったことは、何となく話はしてはいけない気がした。
「私にもよくわからないのですが、殿下の弟君と剣の試合をしたことがございますので、そのご縁かと思っております」
「リズル殿下と?」
マーガレットは何かを考える表情をした。
どんな表情もきれいで、女の私でも困ってしまうほどの美貌だ。
「はい、もちろん一本負けしましたが」
「リズル殿下の剣の腕は超一流ですもの。何ら恥じることはなくてよ」
「やはりお強いのですね」
「皇太子殿下はもっとお強いのですよ」
「まあ、想像もつかない次元の強さですのね」
「最終戦は殿下が競技種目を選ぶという噂ですのよ。最終戦は加点が五倍ですから、それまでの競技は前座ですわ」
そういう話は聞いていない。
リズルもそういった話はしていなかった。
「まあ、そんな噂があるのですね。殿下は何を選ばれるのでしょうか」
「それは妻にしたい女の得意種目ですわ」
「そうですの。私にはあまり関係なさそうですわ。帝国の方々と交流できたことを手土産にして、王国に帰ります」
「あら、諦めるのはまだ早くってよ。お知り合いになったのも何かの縁ですわ。慣れない帝国のお暮らしでしょうし、何かあったら頼ってくださってよろしくてよ」
「ありがとうございます。マーガレット様のお優しさには感無量ですわ」
「マーガレットお姉様、ソフィア様を一人占めしないでくださいまし」
腹の探り合いの不毛の会話にリリアナが参戦して来た。
ほう、リリアナはマーガレットをそう呼ぶのか。
何が本当で、何が嘘なのかよく分からない会話がずっと続く。
分かったこと。
こいつらは生粋の貴族だ。
腹のなかを全く見せない。
そして、親交会の最後に選考委員会から二回戦の種目が発表された。
種目は「手芸」だった……。
毎回ぼやけた発表をするが、手芸は工芸品の製作ではなく、間違いなく裁縫だろう。
私の苦難は続く……。
妃候補全員に同じ大きさの籠が渡された。
この中に生花を入れて、フラワーアレンジメントの出来栄えを競うものだった。
制限時間は三時間で、すぐに審査員が点数をつける。
花は東宮殿に隣接する花園から摘むのだが、妃候補が直接摘むことは出来ない。
妃候補たちが花園に行って、花材を吟味した後、花の種類、色、本数を紙に記入して、試験官に渡す。
試験官は指定された花を摘んで候補者に渡すのだが、候補者はそれぞれ個室にいるため、誰が何の花を使ったのかは、お互いに分からないようになっている。
「何だかよくわからないのよねえ。花は野に咲いているのが一番綺麗だと私は思うのよ」
とはいえ、こんな感じが綺麗かな、というのを私なりに作った。
すぐに結果が発表された。
最優秀賞はマーガレットで、なんと審査員全員が100点をつけ、500点だった。
次点はリリアナの495点、私は恥ずかしくて点数は言えないが、順位は後ろから数えた方が早かった。
不得意分野とはいえ、何という屈辱だ。
皇太子殿下は会場にはいらしていない。
合わせる顔がないので、いらしてなくて本当によかったが、結果は毎日皇太子殿下に伝えられるそうだ。
(がっかりさせちゃうわよね。ごめんなさい。こういうの、私、出来ないのっ)
私は何とも申し訳ない気持ちになった。
だが、これが私の実力なのだから、仕方がない。
こんな気分のまま、夕方から妃候補たちの懇親会だった。
(最悪だわ。涙が出そう……)
立食形式での夕食会だった。
私は話す相手もなく、適当に料理と飲物をとって、壁の花になっていた。
マーガレットを中心とした輪とリリアナを中心とした二つの輪が出来ている。
皇太子殿下推薦枠の妃たちも、どちらかの輪に入っているようだ。
恐らく彼女たちは幼少から親交があるに違いない。
マーガレットが私が一人でいるのを気の毒がってか、取り巻きから離れて、私のところに近づいて来た。
「ソフィアさん、よろしかったら、こちらにいらして」
「お誘いありがとうございます」
私は遠慮なくマーガレットの輪に入って行った。
話しているのは主にマーガレットで、他の人たちは聞き役のようだ。
「ソフィアさん、帝国は初めてかしら?」
マーガレットは私を話題に選んだようだ。
「はい、初めてです」
「帝国語がお上手なのね」
「いいえ、敬語が上手くなくて、失礼な言い方をしてしまったら、ごめんなさい」
大丈夫よ、とそれぞれが口にしてくれる。思ったより、皆友好的だ。
敵ではないと思って、警戒されなくなったのかもしれない。
「ストレートにお伺いしてよろしいかしら」
「はい、何でしょうか?」
「どういった理由で皇太子殿下から推薦されたのかしら? お会いしたこともないのでしょう?」
殿下の学園への留学が身代わりだったことは、何となく話はしてはいけない気がした。
「私にもよくわからないのですが、殿下の弟君と剣の試合をしたことがございますので、そのご縁かと思っております」
「リズル殿下と?」
マーガレットは何かを考える表情をした。
どんな表情もきれいで、女の私でも困ってしまうほどの美貌だ。
「はい、もちろん一本負けしましたが」
「リズル殿下の剣の腕は超一流ですもの。何ら恥じることはなくてよ」
「やはりお強いのですね」
「皇太子殿下はもっとお強いのですよ」
「まあ、想像もつかない次元の強さですのね」
「最終戦は殿下が競技種目を選ぶという噂ですのよ。最終戦は加点が五倍ですから、それまでの競技は前座ですわ」
そういう話は聞いていない。
リズルもそういった話はしていなかった。
「まあ、そんな噂があるのですね。殿下は何を選ばれるのでしょうか」
「それは妻にしたい女の得意種目ですわ」
「そうですの。私にはあまり関係なさそうですわ。帝国の方々と交流できたことを手土産にして、王国に帰ります」
「あら、諦めるのはまだ早くってよ。お知り合いになったのも何かの縁ですわ。慣れない帝国のお暮らしでしょうし、何かあったら頼ってくださってよろしくてよ」
「ありがとうございます。マーガレット様のお優しさには感無量ですわ」
「マーガレットお姉様、ソフィア様を一人占めしないでくださいまし」
腹の探り合いの不毛の会話にリリアナが参戦して来た。
ほう、リリアナはマーガレットをそう呼ぶのか。
何が本当で、何が嘘なのかよく分からない会話がずっと続く。
分かったこと。
こいつらは生粋の貴族だ。
腹のなかを全く見せない。
そして、親交会の最後に選考委員会から二回戦の種目が発表された。
種目は「手芸」だった……。
毎回ぼやけた発表をするが、手芸は工芸品の製作ではなく、間違いなく裁縫だろう。
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