37 / 304
犯人を追いかけて
消える装備
しおりを挟む私は、アイテム欄を見る。私の防具と武器、ちゃんと作動するかな。私は少しだけ、不安になる。なにしろ作るだけ作ったけど、動作テストとか、一切する時間なく相手に渡してしまったからね。
私はアイテム欄を見ると、ほっとため息をついた。さっき詐欺師さんらしき人に渡したアイテム、『木の剣(呪)』、『木の盾(呪)』、『布でできた服(呪)』がちゃーんと存在していた。
もちろん本体は渡してしまったけど。アイテム名の後ろには、【作動中】という文字が。それぞれ、きっちり仕事を始めてくれてるみたい。
これでもし、『木の剣(呪)』が売られたらすぐに場所が分かるし、『木の盾(呪)』は、もし他の人が装備を盗まれてもこちらで回収することが可能。『布でできた服(呪)』は、装備を持って帰った人を追跡することができる機能がついている。
私は安心してアイテム欄を閉じると、目の前の装備を見る。詐欺師さんらしき人が置いて行った『一式装備:瞬装備。武器:瞬剣』。これだけ見ると、持って帰られた装備より、こっちの方が性能がいい。
とりあえず、1人身の女性に声をかけて手あたり次第に装備を盗むとしたら、コストパフォーマンスが悪すぎる気がするんだよね。だって現に、今回の私との取引はむしろ彼にとってはマイナスの取引になりかねないから。
だとしたらこの装備、何か裏があるんじゃ……。私は、武器防具をじっくり眺める。うん、見たところ普通の装備だ。
私が首を捻っていると、ヒナコさんが首をかしげた。
「あの、サランさん。わたしの目がおかしいんでしょうか。この装備、少しだけ、少しずつ、薄くなっているような気がするんですが……」
ヒナコさんの言葉を聞いて私は、あわてて装備に視線を戻す。言われてみれば……。色とかさっき、詐欺師さんらしき人からもらった時よりは薄くなっているような……? でも、そんなこと、あるのかな。
私が目をこする。ヒナタさんもヒナコさんの後ろから装備を見る。
「でも、そんなこと、あるかよ? 装備が薄くなるなんてこと」
「さぁ……」
私がそう返事をする間にも、だんだん装備の色が薄くなってしまっていく。あわわ、本当に勝手に消えていく。私、何もしてないよ。
それからさらに、装備の色が失われ、最終的に装備は完全に姿を消した。もらってからだいたい、30分ほどかな。
その間、何もしてなかったわけじゃない。詐欺師さんらしき人に連絡をとろうとしたりもした。でも、連絡先とか聞いてなかったから、当たり前だけど無理だった。
しかも、装備が透明になっただけなのかと思ったけど、違った。完全にそこから装備の存在自体が「消えた」。装備を置いていた場所を触ってみても、装備を触っているんじゃなくて、テーブルを触っている。質感も、テーブルそのもの。
詐欺師さんらしき人にもらった装備は、こうして完全に私たちの前から消えてしまった。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー
びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。
理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。
今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。
ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』
計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る!
この物語はフィクションです。
※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした
夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。
しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。
やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。
一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。
これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる