言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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犯人を追いかけて

消える装備

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 私は、アイテム欄を見る。私の防具と武器、ちゃんと作動するかな。私は少しだけ、不安になる。なにしろ作るだけ作ったけど、動作テストとか、一切する時間なく相手に渡してしまったからね。

 私はアイテム欄を見ると、ほっとため息をついた。さっき詐欺師さんらしき人に渡したアイテム、『木の剣(呪)』、『木の盾(呪)』、『布でできた服(呪)』がちゃーんと存在していた。

 もちろん本体は渡してしまったけど。アイテム名の後ろには、【作動中】という文字が。それぞれ、きっちり仕事を始めてくれてるみたい。

 これでもし、『木の剣(呪)』が売られたらすぐに場所が分かるし、『木の盾(呪)』は、もし他の人が装備を盗まれてもこちらで回収することが可能。『布でできた服(呪)』は、装備を持って帰った人を追跡することができる機能がついている。

 私は安心してアイテム欄を閉じると、目の前の装備を見る。詐欺師さんらしき人が置いて行った『一式装備:瞬装備。武器:瞬剣』。これだけ見ると、持って帰られた装備より、こっちの方が性能がいい。

 とりあえず、1人身の女性に声をかけて手あたり次第に装備を盗むとしたら、コストパフォーマンスが悪すぎる気がするんだよね。だって現に、今回の私との取引はむしろ彼にとってはマイナスの取引になりかねないから。

 だとしたらこの装備、何か裏があるんじゃ……。私は、武器防具をじっくり眺める。うん、見たところ普通の装備だ。

 私が首を捻っていると、ヒナコさんが首をかしげた。

「あの、サランさん。わたしの目がおかしいんでしょうか。この装備、少しだけ、少しずつ、薄くなっているような気がするんですが……」

 ヒナコさんの言葉を聞いて私は、あわてて装備に視線を戻す。言われてみれば……。色とかさっき、詐欺師さんらしき人からもらった時よりは薄くなっているような……? でも、そんなこと、あるのかな。

 私が目をこする。ヒナタさんもヒナコさんの後ろから装備を見る。

「でも、そんなこと、あるかよ? 装備が薄くなるなんてこと」
「さぁ……」

 私がそう返事をする間にも、だんだん装備の色が薄くなってしまっていく。あわわ、本当に勝手に消えていく。私、何もしてないよ。

 それからさらに、装備の色が失われ、最終的に装備は完全に姿を消した。もらってからだいたい、30分ほどかな。

 その間、何もしてなかったわけじゃない。詐欺師さんらしき人に連絡をとろうとしたりもした。でも、連絡先とか聞いてなかったから、当たり前だけど無理だった。

 しかも、装備が透明になっただけなのかと思ったけど、違った。完全にそこから装備の存在自体が「消えた」。装備を置いていた場所を触ってみても、装備を触っているんじゃなくて、テーブルを触っている。質感も、テーブルそのもの。

 詐欺師さんらしき人にもらった装備は、こうして完全に私たちの前から消えてしまった。
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