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クエスト受注所
作戦開始するかどうかを確認する
しおりを挟む私は、クエスト受注所の受付カウンターに戻ってきていた。でもさっきまでとは、服装だけは変わっている。今の私は受付嬢さんの服装をして、受付嬢さんになりきっている状態だ。
でも、それはあくまで今回だけ。この作戦を成功させるためのものだ。シュウさんとカズアキさんはここにはいない。先に帰ってもらった。
私は、少しずつ受付カウンターの奥の方にある面談ルームに近づいていた。面談ルームはいくつかあって、それぞれ重要な話を個別にしたい場合のみ使用するらしい。
たとえば、クエストを依頼したい依頼主が他の人には聞かれたく内容のクエストを依頼してきた場合とか。そういった場合は、クエスト依頼主の名前を伏せて受注可能リストに追加されるらしいんだけど、話が周りに筒抜けの状態だと、もし建物内で依頼主が知り合いと出会ってしまった場合、困るからだ。
3つある面談ルームのうち、現在使用されているのは1つのみだ。3つの面談ルームはそれぞれ、通す客が異なる。いわゆる『格付け』だ。
今までに定期的に、何度も高難易度のクエストを依頼してくれる依頼主や、受注したクエストを毎回しっかりと達成してきた冒険者と話をするための部屋。いわゆる「中堅」の冒険者や、簡単なクエストをたくさん依頼してくれる依頼者さんを通す部屋。そして初めての冒険者さんやクエスト依頼者さんを通す部屋。
今使われているのは、1番いい部屋だ。私は、お盆にお茶を2つのせて、その部屋へと近づく。
お茶くみといえば。私、現実でもお茶くみしてるんだけど。やっぱりお茶を出してもらったら、少しでいいから口をつけてほしいなぁと常々思う。まったく手がつけられていないコップを見ると、結構凹む。ただ、これは個人の感想だけど。
さて、ギルドマスターさんはお茶に口をつけてくれるだろうか。まぁ、飲んでくれるにしろ、飲んでくれないにしろ、特に作戦には影響はないんだけど。
私は締め切られた扉をノックして、中へ入る。中には先ほどまでクエストカウンターに乗っかって眠っていたクエストマスターさんと、もう一人の人物がいた。この人がきっと、ギルドマスターさんだ。私は、そう確信する。
ギルドマスターさんは、サングラスをしていて表情が読めない。しかし、ツンツンとワックスでかためられた金髪が空調の風でヒラヒラしている。
私は、そんなギルドマスターさんの前にお茶の入った湯のみを置く。その際、ちらっと彼の腕を見た。左の腕。そこに金色の腕時計が光っていた。間違いない、きっとあれが、物的証拠になるはずの腕時計だ。高価なものだろうから、やっぱり自分で持ち歩いていたか。どこかに保管していて、盗まれるの嫌だもんね。
じゃあ、今日この場で作戦を実行することが決まった。あとは、ギルドマスターさんが拠点に戻ってしまうまでにカタをつけるだけだ!
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