言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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チラシと目玉商品づくり

この仕事を続ける理由

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「新しい職場を見つける……。つまりは、転職するってことですか」

 私の問いに、大藤さんはしっかりと頷いた。

「その通り。ただ、あくまで最終決定をするのは紗蘭ちゃんだけどね。この会社に残り続けたい理由があるとして、その理由が上司が嫌いって事実より大きいのなら、続ければいいし」

 そう言われてみて、私は気づく。この会社で働きたい続けたい理由は、もうないということに。

 思えばこの会社に入ったのは、「(採用試験に)受かったから」だ。それ以外にない。就職活動を始めたばかりの頃は、希望にあふれていた。

 どんな仕事に就き、どういったことをしたいのか。でもそれに「夢」があったかどうかは分からない。

 小学生や中学生の時に持っていた「将来の夢」。その「将来の夢」だった「歌手」や「作家」は、そもそも候補から消えていた。理由は簡単だ。

「現実的ではないから」。

 歌手になろうとしたなら、路上ライブをしたり、動画投稿サイトに歌を上げてみたりして、地道に知名度を上げていくしかない。さらに、知名度を上げたからといって、確実に「歌手」になれる保証はないし、仮になれたとしても、そのまま残り続けられる保証もない。作家も同じような理由だ。

 結局のところ、「安定した職業につく」というのが前提にあるせいで、本当になりたかったものはそもそも除外されていたんだ。

 それに、「仕事をしながら、歌手なり作家になるための努力をする」という選択肢もなかった。今となっては、不思議なことだけど、一つのことにしか集中しちゃだめだと思っていたのかもしれない。

 そんな中、「自分が少なくともやりたいと思える職種」に最初は応募していた私。就職情報サイトに登録して、好みの職種を絞って、その職種の会社の説明会や試験ばかりに挑んでいた。しかし、時が経って、お祈りメールしか届かない状況から、いつの間にか、目的は変わっていた。

「自分が少なくともやりたいと思える職種」から、

「自分が車で通える範囲にある仕事場」

に変わっていたんだ。もうその頃にはがむしゃらに応募していて、どんな会社なのかを見るのすら、時間をあまりかけずにいた。

 ただひたすらに試験を受けて、お祈りメールを開くことすらせずに受信ボックスに貯めるだけの日々が続いていた。そんな中、やっとこさ掴んだのが、この会社の「内定」だったんだ。

 だから、この会社でだめならどこの会社でも通用しないと思っていた。そんなわけで私は大藤さんの言葉が信じられなかった。

「私を必要としてくれるような会社、ありますかね」

 私が呟くように言うと、大藤さんは静かな声で言った。

「絶対という保証は、できないよ。でも、やってみないと本当にそうなのかどうかも、分からない」

 確かに、実際にそれは活動をしてみないと分からないことだ。誰にも保証することなんて、できない。でも、現状がもし変わるのだとしたらそれにかけてみたい。

「……どうなるかは分かりませんが、探してみる価値はあるかもしれせんね」

 私の言葉に、大藤さんは大きく頷いた。

「うん。私もできるだけ協力する。絶対見つけよう、紗蘭ちゃんにぴったりの仕事」
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