言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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作ってみよう!物語のアイテム

いでよ、鍋奉行!

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 材料リストを眺めながら、私はしばし沈黙した。すると、シュウさんが遠慮がちに声をかけてきた。

「……一つ、いいか」
「はい」
「……このリストは、あくまであの、ファンタジー小説において必要だった材料リストだ。つまりは、この世界においては、必要じゃないかもしれない」

 シュウさんの言葉で、私はぽんと手を打つ。

「そうでした。アイテムの着想自体は、あのファンタジー小説からもらってきたものとはいえ、作るのに必要な材料まで似せる必要はないですよね」

 そう、あくまであのアイテムを作り出すのは私、厳密にいえば、私の特別スキルだ。だったら、材料をそろえなくって、今ある材料でなんとかなるかもしれない。

「こういう時はですね、鍋奉行を呼ぶのです」
「……鍋奉行を……呼ぶ……?」

 私がとんちんかんなことを言うので、シュウさんが顔をしかめる。

「まぁ、見ててください」

 私はそう言って、大鍋に向き直る。そして、大鍋に特別スキルを使用する。

『大鍋(改)……長い年月をかけて、大鍋に魂が宿った。その魂の名は、大鍋奉行。大鍋奉行は、作りたいアイテムとその効能を伝えると必要な材料を教えてくれる』

 これもまた、とあるファンタジーモノから着想を得た形。そして、付喪神の概念も追加。

 それと同時に大鍋から、もくもくと煙がたちはじめる。そして、煙が落ち着くと、そこには、小さなかわいい女の子。

『あたい、大鍋奉行。調合なら、あたいにお任せあれー』
「大鍋奉行さん、こういうアイテムを作りたいんだけど……」

 私が早速話しかけると、女の子はとても嬉しそうな顔をした。

「あ、主! あるじだぁあー」
「わわ、あるじ呼び!」

 あるじって呼ばれてみたかった感はある。初めてだけど、なんだか心地いい。

『あたいに魂を吹き込んでくれてありがとー。ずーっとね、部屋の奥で埃かぶってて、チョーヒマだったのぉー』

 道具の気持ちには私には分からない。だけど使われるために生まれたものが、使われなくなったら。もしその道具に魂があるのなら、寂しいって思うのかなとは思う。

『それでそれでー? 何を作りたいのかなー』

 私を見上げる大鍋奉行さんに、私はアイテムの効果を説明する。大鍋奉行さんは、私の話をふむふむと聞いていた。聞き終わると、大鍋奉行さんは、ちょこちょこと歩き回る。

『うーん、その効果のアイテムを作るならー。何が必要だろう……』
「あ、よかったらお店の中にある商品で作ることができそうか、見てみてください」

 後でカンナさんには事情を説明して商品代は支払えばいい。なんとしてでも、アイダさんが来るまでにアイテムを完成させなきゃいけない。それが最優先事項だもの!
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