302 / 304
再び、ログイン。
ヒナコさんの働くお店へ
しおりを挟む
「……なんだかいつもと様子が違う気が……」
ヒナコさんの働く店へ向かおうと歩き出そうとした時。違和感を感じた。街の中がなんだか、いつもより閑散としていた気がしたから。今までなら、たくさんの冒険者が歩いていた街中。それが、道行く人がまだらになっている。
後ろからやってきたカンナさんが大きなため息をつく。
「人通りが少なくなっただろ? 急に冒険者の数が減ったって、街でもウワサになっているんだ」
「ああ、こんなところにも弊害が……」
私の予想通りなら、『特別スキル』を持たない人たちが強制ログアウトになり、ログインもできない状態だ。今この世界に残っているのは、あの日のあの時間、ログインしていた『特別スキル』を持った人たちと、『特別スキル』を持っていてなおかつ、条件をクリアしてこれからもゲームをプレイしたいと思っている人たちだけだ。そりゃあ、今まで街を歩いていた冒険者の数よりも大幅に冒険者の数が減るのも頷ける。
「とある事情で、たくさんの冒険者さんがこの世界に戻ってこられないトラブルに見舞われているんです。当分の間、冒険者さんは少ないと思いますがなんとかしますのでっ」
「頼むよ。あ、あとまた傷薬の補充も頼むよ。やっぱり値段が安いからよく売れるんだよね。これ、売上代だ」
カンナさんが、皮袋に入れた金貨を差し出す。私が作成した、『初心者が作った傷薬』。大体この商品の売り上げは、カンナさんと半分こにしているけれど。
「今回は、結構お店の品物を使ってしまったので、そのまま全額カンナさんにお渡しします」
今回、アイテム作成に色々とお店の品物使っちゃったからね。むしろ、これだけでは足らないくらいだと思うけど……。
「おお、そうかい? じゃあ、ありがたく頂いておくよ」
カンナさんがうれしそうに言う。
「また、この件が片付いたら『初心者が作った傷薬』作りますね。行ってきます」
シュウカさんと共にヒナコさんが働いていたお店へと向かう。
少し歩くと、見慣れた看板が見えてくる。何度か通ったカフェ。他のお店よりも色とりどりで、きらきらしているお菓子があふれている、素敵なカフェメニュー。
それが描かれている看板の前に1人、少女が立っている。
「ヒナコさん!」
思わず近くまで走っていく。少女がこちらを振り返った。
「サランさん! ああ、よかった! 知ってる人がいたっ! よかった!!」
少女……――、ヒナコさんが大輪の花のように笑顔になる。
「急にお客さんは減ってしまうし! 条件をクリアしないとログイン権限を失うっていう運営からのメールが来るわでっ! もうわたし、どうすればと思っていたんですっ!」
駆け寄ってきたヒナコさんは泣き笑いの表情になっていた。
「ヒナタさんが心配して私にメールをよこしたんです。ヒナコさんが取り残されているから、助けてほしいと。私たちも、ヒナコさんの力を貸してほしくて来ました。協力をお願いします」
ヒナコさんの働く店へ向かおうと歩き出そうとした時。違和感を感じた。街の中がなんだか、いつもより閑散としていた気がしたから。今までなら、たくさんの冒険者が歩いていた街中。それが、道行く人がまだらになっている。
後ろからやってきたカンナさんが大きなため息をつく。
「人通りが少なくなっただろ? 急に冒険者の数が減ったって、街でもウワサになっているんだ」
「ああ、こんなところにも弊害が……」
私の予想通りなら、『特別スキル』を持たない人たちが強制ログアウトになり、ログインもできない状態だ。今この世界に残っているのは、あの日のあの時間、ログインしていた『特別スキル』を持った人たちと、『特別スキル』を持っていてなおかつ、条件をクリアしてこれからもゲームをプレイしたいと思っている人たちだけだ。そりゃあ、今まで街を歩いていた冒険者の数よりも大幅に冒険者の数が減るのも頷ける。
「とある事情で、たくさんの冒険者さんがこの世界に戻ってこられないトラブルに見舞われているんです。当分の間、冒険者さんは少ないと思いますがなんとかしますのでっ」
「頼むよ。あ、あとまた傷薬の補充も頼むよ。やっぱり値段が安いからよく売れるんだよね。これ、売上代だ」
カンナさんが、皮袋に入れた金貨を差し出す。私が作成した、『初心者が作った傷薬』。大体この商品の売り上げは、カンナさんと半分こにしているけれど。
「今回は、結構お店の品物を使ってしまったので、そのまま全額カンナさんにお渡しします」
今回、アイテム作成に色々とお店の品物使っちゃったからね。むしろ、これだけでは足らないくらいだと思うけど……。
「おお、そうかい? じゃあ、ありがたく頂いておくよ」
カンナさんがうれしそうに言う。
「また、この件が片付いたら『初心者が作った傷薬』作りますね。行ってきます」
シュウカさんと共にヒナコさんが働いていたお店へと向かう。
少し歩くと、見慣れた看板が見えてくる。何度か通ったカフェ。他のお店よりも色とりどりで、きらきらしているお菓子があふれている、素敵なカフェメニュー。
それが描かれている看板の前に1人、少女が立っている。
「ヒナコさん!」
思わず近くまで走っていく。少女がこちらを振り返った。
「サランさん! ああ、よかった! 知ってる人がいたっ! よかった!!」
少女……――、ヒナコさんが大輪の花のように笑顔になる。
「急にお客さんは減ってしまうし! 条件をクリアしないとログイン権限を失うっていう運営からのメールが来るわでっ! もうわたし、どうすればと思っていたんですっ!」
駆け寄ってきたヒナコさんは泣き笑いの表情になっていた。
「ヒナタさんが心配して私にメールをよこしたんです。ヒナコさんが取り残されているから、助けてほしいと。私たちも、ヒナコさんの力を貸してほしくて来ました。協力をお願いします」
10
あなたにおすすめの小説
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー
びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。
理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。
今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。
ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』
計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る!
この物語はフィクションです。
※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる